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「分かりにくさ」がネックの人材開発支援助成金|気ままに労働雑感

厚生労働省がこのほどまとめた「令和5年度能力開発基本調査」で、過去に人材開発支援助成金を利用したことがない事業所が9割を超えることが分かりました。
利用しない理由として、助成率の低さや、金銭的な理由がなく職業訓練を行っていないことを挙げる事業所は少なく、手続きが面倒または制度が分かりにくいことが最大の理由になっています。

同助成金は、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。現在は、人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど6つのコースがあります。

同年10月実施の前述の調査によると、直近の4年度に同助成金を利用した事業所は5.5%、3年度以前に利用した事業所は4.3%で、これまでに利用したことがあるのは1割にも届きませんでした。
利用したことがない理由をみると、「手続きが面倒または制度が分かりにくい」が32.8%で最多になっています。以下、「助成要件に当てはまらない」27.6%、「時間的な余裕がなく、労働者に訓練させていない」24.0%などと続きます。「金銭的な余裕がなく訓練させていない」(6.3%)や「助成率が低い」(5.5%)は少数でした。

厚労省では同助成金を利用しやすくするため、今年4月に制度を見直し、各コースの利用に必要な添付書類の簡素化などを行っています。
たとえば、10時間以上のOFF-JTによる訓練や、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を対象とする「人材育成支援コース」では、定期的なキャリアコンサルティングの実施に関する確認書類の提出を不要としました。

高度デジタル人材の育成のための訓練や、労働者が自発的に受講した訓練などを対象とする「人への投資促進コース」では、従来の「1日単位の休暇取得」に加え「時間単位の休暇取得」についても助成対象にするなどの見直しを行いました。厚労省には、企業が見直し後の要件などを理解できるよう、さらなる周知活動の工夫・強化を期待しています。

労働新聞編集長

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