200124迷想日誌

副業・兼業の時間通算方法は答えが出ず――厚労省|迷想日誌

厚生労働省は、通常国会に労働基準法改正案を提出する予定ですが、その内容は賃金等請求権の消滅時効延長問題です。
厚労省ウォッチャーとしては、ここで物足りなさを感じざるを得ません。
というのは、これまで長期間にわたって厚労省内で検討してきた副業・兼業の労働時間管理はどうなっているのかということです。

厚労省によると、副業・兼業の労働時間管理問題には難しい要素があり、昨年末までには結論が出なかったということで、さらに今年も検討が続くとしています。
何が難しいかといえば、事業場間で労働時間の通算をする前提ですと、企業側も労働者側も厳密な手続きが求められてくるからです。

当然企業側は、他社での労働時間を正確に把握できませんから、労働者の自己申告に頼らざるを得ません。その自己申告にしても、正確かどうかは保障されないでしょう。
労働者が企業に自己申告する気がない場合はどう考えたら良いでしょう。副業するにしても内密に行う権利もあります。

こう考えると、通算労働時間を正確に把握するには、労使双方に義務と罰則を掛けて、正しい労働時間数の申告と通算をしなければならなくなります。
しかし、これは受け入れられません。なぜかといえば、政府は副業・兼業の拡大促進を目的として検討を開始したもので、新たに義務や罰則を掛けて厳密な手続きを強いるような制度にすると、逆に縮小の方向に向かってしまいます。
あるいは、脱法的な行為が拡大しかねません。実際は雇用なのに業務委託などの形式を採れば、労働時間の通算は不要になります。

副業・兼業を拡大促進するなら、厳密な手続きや義務化を避けたいところですが、それでは労働時間把握がザルになってしまいます。
そもそもの労基法上の労働時間通算規定を廃止して、労働時間把握を個別企業内に限定し、開き直る方法もあります。
厚労省も頭の痛いところです。最終的にどのような通算制度となるか、注目していきましょう。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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