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あと一歩だった?安倍政権――財政緊縮が致命傷|迷想日誌

安倍政権が終わりに近付いています。
「労働新聞」としてこの8年間弱を総括すれば、極めて高い評価を与えられる充実した政権だったと思います。
雇用・労働分野の改革は、小泉政権においても進みましたが、それと比較にならないほどの進展がありました。

なんといっても、長年にわたって問題視されながらも手が付けられなかった時間外上限規制が罰則付きで設けられたことが、少し大げさに言えば歴史的改定だったといえるでしょう。
また、高度プロフェッショナル制度の創設も大きな改定です。監理監督者以外の一般労働者が、労働時間規制から外れるという仕組みで、長年にわたって検討されていたことを実現させました。
当初は、ホワイトカラー・エグゼンプションと称していましたが、なかなか合意に至りませんでした。

「同一労働同一賃金」は、欧米のような社会横断的なものではなく、ほぼ一企業内で通用するものといえますが、非正規や有期労働者の処遇改善に少しは寄与するでしょう。
そもそも、日本企業のような能力基準中心の人事制度に適合しにくい考え方ですが、「説明義務」に変換して無理やり導入した感があります。しかし、これも安倍政権の大きな決断です。

雇用情勢が急激に改善されたのも高く評価できます。
有効求人倍率は、平成30年に1.6倍を上回り、同じく歴史的改善となりました。失業率は最低で2.2%にまで下落しました。
ここまで雇用情勢が改善された主な要因としては、日銀による異次元の金融緩和があります。
金融緩和によるマネー量の拡大と失業とは相関関係にあるというのが、常識的見方です。

しかし、アメリカや中国のGDPが急拡大したにもかかわらず、日本のGDPはほぼ横ばいが続き、経済的には窮地に陥っていることは失敗であり、残念でなりません。600兆円達成も到底叶わない数字となりました。
この間、人材投資や研究投資が疎かになり、デジタル技術の開発が大幅に遅れてしまいました。
今後は、一足飛びに6G時代を見据えた取組みが必要です。

端的に言えば、プライマリーバランス規制から逃れられず、緊縮財政に走った揚げ句に2度も消費税増税を敢行してしまったことが痛かったといえます。
引き継ぐ菅政権は、この失敗を反面教師にして、経済活性化と拡大に全力を尽くすべきです。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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