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不十分な賃上げと働き方改革――政局の秋へ|迷想日誌

厚生労働省が令和3年の民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況を公表しました。
賃上げ額は5854円、賃上げ率は1.86%となってしまいました。
アベノミクス以降は、政府による賃上げ要請圧力も手伝って2%台前半で推移していましたが、今年は大きく2%を割りました。

もちろん新型コロナウイルス感染症の影響が浸透していたことが大きいと思いますが、
現政権の賃上げ政策が消極的であることが問題です。
前政権の積極姿勢に比べるとあまりにも未熟です。
賃上げ率1.86%は、ほぼ10年前の民主党政権下のデフレ時代に逆戻りしています。

現政権は、新型コロナウイルス感染症対策に忙殺されているためか、賃上げや働き方改革に関してはほとんどアナウンスがありません。
雇用調整助成金などの対応はうまくいき、失業を抑えていると思いますが、それだけでは不十分です。
今年の賃上げシーズンでは、何らの賃上げ対策も示されませんでした。

さて、先週末の横浜市長選では自公推薦者が完敗し、国民へのアナウンスの仕方が不得手で、アピール力の弱い現政権の危機が訪れ、政局の秋を迎えようとしています。
新型コロナウイルス感染症対策でうまくいかず、経済政策でも不十分となれば、有権者の心は離れていくでしょう。

この危機を脱するには、政策の抜本的見直しが不可欠です。
新型コロナウイルス感染症では、これまで真面目に取り組んでこなかった病床数の飛躍的拡大が重要です。
経済対策では、需要創出に向けた財政出動が必要です。
前年度補正予算のうち30兆円ほどが実際に使われなかったといわれていますが、これは現政権の財政に対する姿勢に欠陥があることを示しています。

政策の内容もアナウンスも不十分なら近く実施される総選挙で相応の代償が支払われることとなるでしょう。
インフレ率2%程度に達するまでは、プライマリーバランスに拘泥せずに財政出動を図り、成長率を高める努力を続けるべきです。
政府として賃上げに積極的にかかわり(最賃大幅引上げは逆効果です)、国民全体の関心事である働き方改革に再度力を入れないと、今後の日本は再びデフレによる下降が始まってしまいます。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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