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津波警報が出たらどうすればいい?注意報や避難指示との違いは? —— 次なる災害に備えて

(文責:はむすた)

今月15日は未明に突然の津波警報発表に驚いた方、暗く寒い中で避難をした方、そして今朝起きてから事態の変化にびっくりした方もいたかと思います。

結果として人的被害はなく、また各地で報告された漁船や養殖いかだの被害も過去の他の津波ほどではなかったものの、もしまた警報が出たらどうすればいいのかを、防災士の視点からまとめます。

※この記事は、はむすた個人の別ブログに掲載した記事のリライト版です。一部の文章ははむすたの過去の著書と重複しています。またタイトル画像は気象庁HPから引用しています。

1.津波警報とは?

予想される津波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合に気象庁から出される情報です。
もし事前に予測できなかった場合でも、実際にそのレベルの津波が観測された場合には発表します。

津波警報が出るような津波がやってくると、標高の低いところでは浸水被害が発生し、もし人がその場にいれば津波による流れに巻き込まれてしまいます
つまり、少なくとも、予想される津波の高さよりも海抜標高が低い場所に人がいると危険だということです。
そして、勢いの強い津波は斜面を遡上することもあり、たとえ予想される津波の高さよりも高い場所にいたとしても、海から近い場所からは出来る限り離れる必要があります。
また、避難したあとも「ここなら安全」と思わずに、可能な限りより高い場所を目指すことが肝要です。


2.津波警報が出たらどうすればいい?

上記のように津波警報は「人が巻き込まれる危険がある」という情報ですから、津波警報が発表されたら沿岸部や川沿いからすぐに離れる必要があります。
逃げる先は、できる限り高いところ
近くに避難ビルや、丘の上などにある小中学校や公民館といった避難所があればそこへ行くとことになります。
もしそういった施設がなければ、坂を昇って山や丘を上がっていき、とにかく考えつく限り安全な場所へ避難してください。

学校などの建物ではなく丘の上や広場が「避難場所」として指定されている(画像:気象庁HPより)

また、たとえ津波が収まったように見えても、津波は何度も何度も来て後から最大波が来たり、最初が引き波で大したことないように感じても次が押し波だったりと、普通の感覚には当てはまらないことが起きるおそれがあります。
そのため津波警報が解除されるまでは避難を続けるしかありません


3.津波警報と津波注意報の違い

警報が出るか注意報が出るかの違いは単純に予想される津波の高さです。
1メートル以下が津波注意報1メートル超3メートル未満が津波警報、そして3メートルを超えたら大津波警報になります。

津波注意報・津波警報・大津波警報の基準(画像:気象庁HPより)

大津波警報は、大雨特別警報と同じくらいの危険度として位置づけられているので、これまでに台風や梅雨前線による大雨で特別警報が出た場合を思い出すと、事態の重大さが想像しやすいと思います。

特別警報のイメージ(画像:気象庁HPより)

一方で、津波注意報が出る場合というのは、海の中では人が速い流れに巻き込まれてしまったり、養殖いかだが流失し小型船舶が転覆してしまったりするような津波が来る場合です。

そのため、気象庁では「津波注意報が出たら、海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れてください」と呼び掛けています。
つまり基本的に津波注意報では、海の中にいる人や、海岸でレジャーや仕事をしている人以外は、避難の必要はありません。

ただし、市町村ごとの基準によって、津波注意報の段階でも避難指示を出すと決めているところもあります。
その場合はできるだけお住いの市町村の指示に従い、もし自宅がすでに高台にあるなど安全な場所である場合はそこを動かない、ということが必要になります。


4.「避難=避難所に行く」ではない!

「避難」とは、災害から身を守るために行動をすることです。

そう聞くと「やっぱり避難所に行くことだ」と思う人もいるかもしれませんが、内閣府が示すガイドラインでは次の3つの行動を「避難」としています。

・指定された避難所や避難場所(前述)へ行くこと
・近所のより安全な場所へ行くこと
・自分のいる建物の中でより安全な場所へ移動すること

2つ目の「近所のより安全な場所」には、親戚や知人の家、ホテルなどが含まれます。

3つ目は主に大雨の場合に有効な手段で「水平避難」と呼ばれ、たとえば川や崖から離れた部屋が「より安全な場所」となります。
(ただし、自分のいる建物自体が川や崖にかなり近い場合はどの部屋でも危険なため、水平避難が有効な人は限られます。)

なお、どういった場所がより「安全」なのかは、災害の種類によって異なります
津波や大雨の際、自分が川や崖から離れた頑丈な建物の高層階にいるのであれば、「動かない」というのが「避難」になります。
また、暴風だけで大雨を伴わない場合であれば、場所によらず頑丈な建物から出ないで、窓から離れた場所で過ごすのが「避難」です。
(いずれの場合も、もちろん水や食料などは予め備蓄しておいてください。)

このような「避難」の選択肢は、災害の危険が迫るにつれて減っていきます。
早め早めに行動することが自分自身の未来を左右するのです。


5.津波以外でもあり得る長期避難 ― 生き延びるために必要なこと

今回の津波警報は半日ほど継続し、夜を含む長い時間、避難せざるを得ませんでした
しかし避難の時間が長くなることは決して珍しいことではありません。
台風や梅雨といった毎年あるような現象によって、もっと長い間避難することになる可能性は、日本に住む誰にだってあるのです。

野外で難を逃れる場合、今回のように冬なら防寒具やカイロ、もし夏なら飲み水などが必要になりますし、たとえ避難所に入れたとしても常備薬は必須
そのほかにも不安で長い時間をやり過ごすために、何か見ていると落ち着くものや、トランプなど老若男女が暇を潰せるものがあるのが理想です。
そういったものを津波警報や避難指示が出てから用意していては避難が遅れてしまうため、日頃からいざというとき何を持って行くか決めておいて持ち出しやすいところに置いておく必要があります。


おわりにかえて…、

現在、日本の気象庁には地震による津波を予測するための計算モデルがあり、これまで欧米各国が驚き称賛するほどの精度で津波情報を発表してきました。
そのシステムを持ってしても、今回の異常な潮位変動は予測できませんでした
そのくらい、私たちは今、未曽有の事態を目の当たりにしています。
それでも、慌てるのではなく、そして、誰かを責めるのでもなく、できることをできるだけしていく必要があるのです。

まだまだわからないことだらけですが、それでも今後また津波警報が出た場合に逃げる必要があるかどうか瞬時に判断できるよう、自分の家や職場、そして家族の通勤通学経路がどのくらいの高さにあるか調べておきましょう。
そして、ぜひ家族や知り合いの人とこういった話題を共有しておきましょう。
日頃のちょっとした行動の違いが、いざというときにあなたの命を守ってくれるのです。

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