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RSDの商品は入らないけど良いレコード入ってますよという話

こんにちは。Rodentia Collectiveです。
例によって今年もRSD(レコード・ストア・デイ)の商品は入りませんが、良いレコードは入荷してきているので紹介します。よかったらレコードを買ってください!

オーストラリアのインディー・ポップ・アーティストHatchieの2022年発売2ndフル・アルバム『Giving The World Away』。前作と同じくSecretly Canadianからのリリース。

「Quicksand」のサビの部分の強力なフック(一度聴くとかなり頭に残って脳内再生される)が全てを表しているとも言えるのだが、"信頼、野心、愛、自己実現といったテーマを、弱さを強さとして受け入れることで見出した自身の物語"と語られているように、かなり自分自身の内面と向き合い、また深く掘り下げていった歌詞となっている。そういったある種のダークかつシリアスな部分と、ネオンカラーが眩しいダンス・ポップミュージックとの絶妙なコントラストに痺れる。

また、天使の羽が生え、どこまででも飛んで行けるようなサウンドを表現したシューゲイズポップな立ち位置の「This Enchanted」のイントロは、小室哲哉っぽいキーボードのフレーズから始まり、ビデオに関してはどこか90年代のTRF的なミュージックビデオを思い出した。あの時代の空気感が味わえるので分かる人には分かると思うので是非チェックして欲しい。

Coke Clear Bottle盤。スポーティーなラベル部分、そしてジャケットもキラッキラで美しい。裏ジャケもスタイリッシュなので是非買ってみて欲しい。盤のラベル付近の、通常は音を入れない部分にも実はサウンドが入っているという面白い仕掛けつき(仕掛けかどうかは定かではありません)

アメリカのSSW、Kate Bollingerの2022年春の新作EP『Look at it in the Light』。Ghostly Internationalに移籍後、初のリリース作。Ghostlyの昔のイメージって、テクノやエレクトロニカなTychoやTelefon Tel Avivだったけど、ここ数年はSSWやインディーロック系のアーティストもリリースしていて面白いなと思う。つい最近だとHana Vuとか。Hana Vuは元々はFat Possum傘下のLuminelleに居たし。一癖あるようなアーティストが多くっていいねぇと思いながらチェックしています。

『A word becomes a sound』(2020)のレビューの際に、"毎日飲める、まるでお気に入りのコーヒーのようだ"と表現したが、そういったムードはそのまま楽しめる。フォーキー、ジャジー、そしてよりユニークでコミカルな全6曲となっている。

60年代〜70年代のビートルズのデモに影響されて作られたというのも頷ける「Who Am I But Someone」のセピアな質感、ドットカラーのスカーフ、原色カラーの服やチェリーパイ、この全てが本当に60'sの雰囲気があって、まるで自分がタイムスリップしてしまったのではないかと思うほどだ。2022年に作られたサウンドなはずなのに!時代を超えていくセンスを感じる。

また、軽快なサウンドでありMVは昔のサスペンス・ドラマ風な「Yards / Gardens」も良い。このビデオが公開された時に、新譜は絶対に良い作品になるだろうなあと確信していた。ユーモア溢れるMVは、彼女の大切な友人たちと"楽しんで"制作されたビデオだ。時代に流されず、しかし愛すべき時代を愛しつつ今を生きるアーティストである。アートワークのロゴのビートルズっぽさと、サイケデリックさ(ラバーソウルっぽい)も忘れちゃいけないポイント。

カラー盤はかなりショートして予約分で終了、ブラック盤でのご用意となります。ラベルのクラシックさと相まって、黒盤も味があっていいんですよ。

イギリスのSSW、Fenne Lilyの2020年発売アルバム『Breach』。Dead Oceansからのリリース。10代で作曲し自分というよりは周辺の人間関係(恋愛や友人関係)を描いた『On hold』(2018)に対し、こちらは20代で作曲し、自分の内面、そして自身を掘り下げたまさしく第2章とも言える作品。

Nick DrakeやNico、そしてFeistからも多大な影響を受けたというメロディセンスやヴォーカルスタイルは羨ましいほどに卓越している。しかも、過去にはインディー系を取り扱うレコ屋で働いていたというらしい。そんな彼女にとってDead Oceansと契約しアルバムを出すことというのは喜びと同じくらいにプレッシャー等もあっただろう。だが、自身に満ち溢れ大きく息を吸って吐くように歌うその様は、思わず聴いているこちらも大きく深呼吸をしたくなるほど。

前作『On hold』では全体的にアッパーな曲調は見られなかったが、"異常に考えすぎてしまう自分のスイッチを切り替える為に大麻を吸い始めた"という裏のエピソードがある「Alapathy」のキャッチーさは多くの人の心を掴むだろう。そしてその後に続く「Berlin」への流れが特に逸品である。というか、裏エピソードを知ってからレコードを聴くとまた面白くって、イントロ曲の「To Be a Woman Pt. 1」は、頭の中でもやもやと囁かれるようなトラックから、そのまま2曲目「Alapathy」に繋がっていくので、ハイになっている時に書いたと言われればそうかもしれない!と頷いてしまうような感じだ。

このレコードを聴いていると、控えめな中にも静かに燃えている火を見つめているような気分になる。Brian Deckと、Steve Albiniをプロデューサーに迎えた、名作となり得る1枚。孤独と孤立について、彼女なりの答えがこの作品。自分に言い聞かせるように、世界にそれを示すように。

それでは、また!
今回ご紹介したレコードは、下記からもチェックできます。

Giving The World Away / Hatchie(LP:Coke Bottle Clear )
の商品ページはこちら
Look at it in the Light / Kate Bollinger (LP:Black)の商品ページはこちら
Breach / Fenne Lily (LP)の商品ページはこちら


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