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追悼 蔡憶凡さん from No Party For Cao Dong

No Party For Cao Dong (草東沒有派對ツァオトンメイヨパイトゥイ)のドラマーの蔡憶凡ツァイ・イーファンさんが、2021年10月30日に亡くなられていたとの事です。享年26歳だったようです。筆者と同い年です。若くして、とても残念です。ご冥福をお祈りいたします。
中華圏では、あだ名が一般的にもよく使われていて、凡凡ファンファンと呼ばれていたそうです。

蔡憶凡ツァイ・イーファンさん

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No Party For Cao Dong (草東沒有派對)

静と激情 台湾インディの至宝

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No Party For Cao Dongとは、台湾のインディロックバンドです。台湾ではかなり人気のあるバンドで、ワールドツアーも2度行うなど世界的にも小規模ながら根強い人気を誇るバンドです。日本でも数回ライブを行っていました。大好きなバンドですが、残念ながらタイミングが悪く筆者は生で観ることは出来ていませんでした。

今回は、いずれこのnoteでも紹介したいと思っていたNo Party For Cao Dongを、蔡憶凡ツァイ・イーファンさんの追悼の意味も込めてご紹介したいと思います。

2012年に結成され、2015年より本格活動開始し、台湾のインディーズシーンで最も期待されるバンドとして注目を集めた。2016年に満を持して1stアルバム『醜奴兒』を発表。瞬く間に大きな話題となり、ツアーのチケットは全会場即日完売。これ以降の台湾公演は先述の通りチケット入手困難な状況が続いている。そして、2017年には中華圏最高峰の音楽賞「金曲獎」第28回にて、異例の6項目にノミネートをし、最終的に<最優秀新人賞、最優秀バンド賞、最優秀年度歌曲賞(大風吹)>の3項目を受賞し、中華圏で一大センセーションを巻き起こした。さらにこの金曲獎受賞直後には、「大風吹」「山海」「爛泥」の3曲が、SpotifyでのワールドランキングTOP50以内に同時にランクインし、世界から注目された。

FESTIVAL LIFE

最初にこのバンドの音楽性を端的に表すならば、サッドコア×グランジ×ダンスパンクでしょうか。
この単語の羅列に気になった方は色々な曲をご紹介するので、聴いていって頂けると幸いです。

筆者がこのバンドの事を知ったのは、2019年の初頭に「還願 DEVOTION」という台湾産インディホラーゲームのPVを見た時に、使用されている音楽に衝撃を受けて調べたのが最初です。

「還願 DEVOTION」公式PV

最初は不気味につま弾かれるギターですが、力強いドラムと共に歪んだ激しいギターがかき鳴らされます。短い時間しか聴けませんが、カッコいいですよね。筆者はこれを聴いて一聴き惚れしたわけです。この曲は「情歌」という曲で、彼らの1stアルバムに収録されています。

1stアルバム「醜奴兒」収録曲「情歌」

最初は、つま弾かれるギターと一緒に三人のボーカルによってささやく様に歌われますが、早々に彼らの特徴である直情的なボーカルで、叫ぶ様に哀愁漂うメロディが歌われます。その後に続くのが、先ほどのPVでも聴いた力強いドラムと荒々しいギターですね。その後また静かなパートに入って、再び激しいパートがやってきます。最後のパートのドラムがとてもカッコいいです。このバンドはこの曲のように、静と動を駆使した曲が多いです。

同作収録「大風吹」

クランチ気味のバッキングギターに合わせて、秀逸なリードギターのフレーズが弾かれます。彼らは、こういったギターのフレーズが巧みです。ドラムはスローながらダンサブルですね。フィルインも素晴らしいです。この曲も前半は曲調も静かで、ボーカルもささやく様に歌いますが、後半はかき鳴らされる楽器と共に叫ぶ様に歌われます。タメ気味の重いドラムも良いです。男女三人によるハーモニーも特徴的ですね。

同作収録「等」

アルバムでは、前曲の「艾瑪」に続けて演奏されるこの曲。彼女の躍動する様なドラムが聴けます。シンプルながら印象的なギターリフと共に、彼女のドラムが疾走感を生んでいます。二人のボーカルによって、吠える様に歌われるメロディも良いです。この曲等(どの曲も)を聴くと、巧みなギターと直情的なボーカルに耳が行きがちなバンドですが、彼女のタイトで力強いドラムが、このバンドに必要不可欠な存在だった事を実感させられますね。

同作収録「爛泥」

こちらも静かなギターから始まりますが、ドラムが入ってくると共にギアが上がります。ドラムが盛り上げて、歪んだギターが突っ込んできます。中華圏独特のメロディでサビが歌われて、間奏はこれまた秀逸なギターですね。ドラムもダンサブルかつカッコいいです。元々Two Door Cinema Clubに影響を受けた、エレクトロ・ロック調のスタイルで活動を始めたようで、現在のオルタナティブなスタイルでもそのダンサブルな要素は受け継がれていますね。

同作収録「醜」

この曲では、その影響も顕著ですね。しかし、ダンサブルながらメロディは静かに熱を持って歌われます。メロディは決して派手では無いですが、どこか高揚感がありますね。イントロや間奏の絡み合う二本のギターが素晴らしいです。この曲でも彼女のタイトなドラムが曲を駆動していますね。

同作収録「艾瑪 ~ 山海」

こちらはライブ映像です。彼女の激しいドラムパフォーマンスを見ることが出来ます。ダイナミックかつ良い意味でスリリングでカッコいい、これぞロックバンドと言いたくなる演奏ですね。

1曲目「艾瑪」は、イントロも尺を長めに取って楽しませてくれます。ダンサブルなドラムに乗せて弾かれるギターのフレーズがカッコいいです。ギターの音作りがとても良いですね。秀逸なギターリフに続く、サビの3人のボーカルによる合唱が魅力的です。

前曲の激しさから一転して、静かに始まる2曲目の「山海」は、彼らの代表曲でもあります。この曲も静と動を織り交ぜた鮮やかな曲です。”他明白 他明白 我給不起|彼は理解している、彼は理解している、私は与えることができない”と叫び、激しいサビへと雪崩れ込んでいきます。ここのフィルを織り交ぜたドラムが素晴らしいです。間奏のギターも、これまたカッコいいですね。そして再び静かなパート(しかし、どこか焦燥感のある)へと移行し、最後の激しいパートでカタルシスを迎えます。

現在リリースされているアルバムは、1stアルバムのみなので1stの曲を半分ほど紹介してしまいました。緩急あってとても良いアルバムなので、是非全編聴いてみてください。

シングル曲「如常」

彼らの最新曲であるこの曲。Oasisを思い起こさせる、イントロのアコースティックギターに続いて、これまた秀逸なギターが鳴らされます。こちらも静かながらも高揚感のあるメロディに続いて、最後は素晴らしいギターソロで締めくくられます。後半のタメ気味のドラムが良いですね。

おそらくこの曲を含んだ最新アルバムが、2020年初頭にリリースされる予定だったのですが、流行り病が影響してかその後無期限に延期されてしまいました。レコーディングも済んでいたのかどうかは定かではありませんが、そのアルバムのリリースはどうなってしまうのでしょうか?

大切なバンドメンバーを突然失ってしまった彼等。未だ公式声明も出されていない様で、今後どうなってしまうのかも分かりませんが、苦境に立たされている彼らを少しでも応援したくてこの記事を書きました。加油!

今後どんな形であれ、彼らはきっと音楽活動を続けて行くでしょう。ここ日本から微力ながらも応援していきたいと思います。

この記事を通して、No Party For Cao Dongの素晴らしい音楽が、蔡憶凡ツァイ・イーファンさんの力強い演奏が、より多くの日本人に伝わると幸いです。そして、日本にも応援しているファンが居る事が、言語の壁を乗り越えて、彼らにも伝わって欲しいです。

1stアルバム収録曲「艾瑪 ~ 等 + 山海」

音質、画質はあまり良くはありませんが、彼女が楽しそうにドラムを叩く姿、激しいドラムパフォーマンスをたっぷりと見ることが出来ます。

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あらためて、蔡憶凡ツァイ・イーファンさんのご冥福をお祈りいたします。

素晴らしい音楽を届けてくださって、本当にありがとうございました。

R.I.P.

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