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「オアシス初来日ライブ」の思い出(80~90年代ロック放談その1)

この投稿は、80~90年代の洋楽・邦楽を偏愛する筆者の、極私的音楽体験をつらつらと書き綴る内容です。
あまり理屈っぽい内容にはしたくないので、「架空の対談形式」でお届けします。

●対談するひとたち
ロックさん
推定年齢50歳前後。筆者の分身。音楽文化が栄華を極めた80~90年代に青春時代を過ごした。音楽が彼の人格形成や物事の考え方に多大な影響を及ぼしている。
最近、加齢のため記憶が曖昧な事が多い。その割に若いころの記憶についてはときどき妙に鮮明に覚えていたりで、家族や周囲の人を微妙に困らせている。

ロールくん
推定年齢30歳前後。筆者の空想上の音楽友だち。Apple MusicやSpotifyを使いこなし、洋楽・邦楽・年代を問わず、幅広いジャンルの音楽ファン。80~90年代の音楽への興味が強い。最近レコードの収集に熱意を持ち始めた。

それでは対談スタート。

ロールくん
「さて、80~90年代といえば、音楽業界のセールスも全盛期というイメージがありますが、ロックさんはどんな音楽を聴いてました?」

ロックさん
「邦楽も洋楽もどっちも聴いていたなぁ。分け隔てなく。どっちかというと、洋楽が多かったかな。ロッキング・オン(*注1)とか毎月欠かさず読んでいて。ちょっと軽く洗脳されていたかもしれない(笑)」

ロールくん
「結構有名な洋楽雑誌ですよね。時代を感じます。」

ロックさん
「YouTubeなんて、まだ影も形も無いからね。というか90年代中頃まで、そもそもネットがまだ登場していないから(*注2)。
少し前の80年代の話だけど、ミュージックビデオなんてベストヒットUSA(*注3)でしか見る事ができなかったから、実際。
でも基本的にメジャーなミュージシャンだけね。マイケル・ジャクソンとかマドンナとかボンジョビとか。
だから、マイナーなバンドとかアーティストだと、実際にライブに行って、初めて動く姿を見た、なんて事もよくあったなぁ。」

ロールくん
「へー。それはそれで貴重な体験ですよね。」

ロックさん
「オアシスの初来日公演をライブハウスで見た事なんかは、いま思うと凄く貴重な体験だったと思うねぇ。」

ロールくん
「おぉ!オアシスですか。僕も好きですよ。でも聴き始めた時にはすでにバンドが解散していましたけど…」


ロックさん
「会場の渋谷のクラブクアトロって、確か渋谷のHMVの隣くらいのビルにあって(注4)。
その初来日ライブはオアシスがデビュー直後だったかな?(*注5)
でもまだ日本での知名度は全然無くて、客入りもせいぜい300~400人くらいかなぁ?
7割くらいの入りだった印象があるよ。私なんか、壁にもたれてのんびり観ててたもんね。」

ロールくん
「羨ましいなぁ。」

ロックさん
「ライブハウスだから、ステージという程のかっちりした舞台でもなくて。記憶が曖昧だけど、なんか学園祭の時の教室のステージみたいな。数歩先でギャラガー兄弟が演奏しているという。いまから考えると凄いよねぇ。
すでにリアムはあの、手を後ろに組んで不動の姿勢で歌うスタイルで、ノエルはひたすらギターに没頭している感じ。
そういう佇まいのバンドを初めて見たので、新鮮だったけど、ずいぶん不愛想なバンドだなぁと(笑)。観客も、熱狂的というよりは、ちょっとお互い様子見的な、よそよそしい感じで。」

ロールくん
「ギャラガー兄弟といえば、なにかとお騒がせなイメージがありますけど、その時は仲良い感じですか?」

ロックさん
「うん。別に揉めたりしていた様子はなかったかな。
リアムがたまに右手を振ったりして、一応声援に応えたりするんだけど、すっごい無表情のままなんだよね(笑)。
機嫌が良いのか悪いのか、ぜんぜん分からない。
あと憶えているのはギャラガー兄弟以外のメンバーの影の薄さ(笑)。
『影が薄いことを覚えている』っていうのも変な話なんだけど。
でも曲はどれも、ノイジーなんだけど、すごく聞きやすいし親しみやすくて、すでにかなり完成されている印象を受けたなぁ。すぐに好きになったよ。これはもっともっと売れるだろうなぁという予感がした。」

ロールくん
「実際、売れましたよね。」

ロックさん
「その後1~2年くらい後に、2枚目の『モーニング・グローリー』が出て、あっという間に世界的なバンドになっちゃった。
あのアルバムは私の人生でもっともリピートしたCDのベスト5には入るかもしれないなぁ。
個人的にその時期は最初の就職先で行き詰って退職した直後で。
あのアルバムの哀愁が漂っているんだけど、どこか力強い感じが、その時の気分にハマってたんだよねぇ。
あ~、なんかいろいろ思い出して落ち込んできた….」

ロールくん
「いや、ここで半世紀も前の事で落ち込まれても…」


ロックさん
「まぁ、それはともかく、私もモーニング・グローリーで本格的にどっぷりオアシスにはまり込んだよね。それでその後、軽く追っかけみたいになるのよ。」

ロールくん
「えぇ!? ロックさんでもそんな熱くなった事があったんですか?」

ロックさん
「うん。97年くらいだけど、オアシスのライブをどうしてももう一度観たくなって、ロンドンまで生まれて初めての単身一人海外旅行を決行したんだよ。英語も話せないのに。
若かったなぁ…(遠い目)」

ロールくん
「はー。面白そうですね。次回詳しく聞かせてくださいよ。」

(たぶん次回に続く)

*注1…株式会社ロッキング・オンが出版する音楽雑誌。1972年創刊。
*注2…1996~2000年頃にADSLの普及、光回線の登場等により低価格化が進み、一般家庭にますますインターネットが普及した。
*注3…1981年から1989年にテレビ朝日ほかで放送された洋楽番組。最新のヒットチャート、注目の楽曲の紹介をプロモーションビデオを交えて放送し、深夜の時間帯にもかかわらず人気を博した。
*注4…1988年にオープン。所在地は東京都渋谷区宇田川町32−13  4・5F。収容キャパは800人。
*注5…オアシスは1994年9月に東京(13日16日)、大阪(18日)、名古屋(19日)のクラブクアトロで初来日公演を行った。


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