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「寂しい」について何なのか、自分なりに真剣に考えてみた

「最近寂しいんだよね」

ある日友人がふと言った。私と同じく今年の4月に久米島に移住して来ている子で、明るい性格で友人も多い(私から見たら)けども寂しいらしい。「え、どうしたどうした?」と気になって聞いてみると、つまりは心をオープンにできる友人がほしいということだった。ふと思い立った時に一緒に遊べる、そんなお友達がほしいというのだ。なるほどなぁ、確かにそういう友達がいないのは寂しいのかもしれない。すると不思議そうな顔で聞かれた。

友「ろっくちゃんは寂しくないの?」
私「え、寂しくないかな……。ってか寂しいって……なんだ……?」
友「え?」

寂しいっていう感情がよくわからない。何を感じたら寂しいっていうのか。このときの私には少し難しかった。

それから1か月ほどたった日の三連休。
部屋にこもってひとりでアマプラを見てたとき。

『あ!いま私!寂しいかもしれない!』

本当に、急に、自分が孤独で、周りに何もないような感覚に陥った。置いてきぼりをくらってぽつんとしているような感覚。これを寂しいっていうんだろうけども、自信がない。つい最近、寂しくないか聞かれてハッキリ答えられなかった私が今の感情を「寂しい」だなんて言えるのか。感情なんてものは人によって受け取り方が違うんだから何を寂しいと思うかも十人十色だ。だけども気になった。寂しいって何なんだ。

このまま分からないままだと、友人や子どもが寂しそうにしているときどうやってその気持ちを理解して寄り添えばいいかも分からない。

ならば知識を入れよう。いろんな視点から「寂しい」について調べて自分なりの寂しさとは何か、その寂しさとどう向き合うべきかを考えていこう。

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【寂しいと淋しいと、さびしいとさみしい】

寂しいとは何か。
とりあえず分からない言葉は広辞苑に聞くのが手っ取り早い。

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「寂しい」と「淋しい」は特に大きな違いがないけども「寂しい」のほうが常用漢字であること、情景・心情どちらにも使えることから使用範囲が幅広い。「淋しい」はどちらかというと心情的な表現に使われる。(さんずいで涙を表している)

どちらの漢字も「さみしい・さびしい」と2通りの読み方がある。実は「さみしい」は近年使われるようになった言葉で、「さぶし」という古語が発展してできた「さびしい」が元の形らしい。だから、どちらももの悲しさを表す言葉だけど公的な場面では「さびしい」を使ったほうが良いとのこと。

ここまで調べて分かった。私があの時感じたのは「寂しい」だ。

【寂しいと脳も体も傷つく】

でも、どうして人は寂しくなるのだろう。「愛着理論」の先駆者である発達心理学のジョン・ボウルビーはこう書いている。

群れから孤立すること、とりわけ、幼いころに自分の保護者から引き離されることは、途方もない危険をはらんでいる。したがって、どの動物も孤立を避け、仲間との近接を維持する本能的修正を持っていたとしても、驚くことがあろうか。

つまりは五感が身体的な危険から守るセンサーの役割をするように、孤独感も社会的な痛みを避けるために進化したということだ。ひとりでいることで起こる危険から身を守り、子孫を繁栄させてきた。

孤独感が社会的な痛みであることは、決して比喩ではとどまらない。

fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使うと、拒絶を経験した時と身体的な痛みを感じた時に見られる反応は酷似している。孤立の感情と身体的な痛みはハードウェアを共有して人間を苦しめている。

心理学者のガイ・ウィンチ氏もTEDにて孤独感が身体に与える影響の大きさを訴えている。

孤独感は心に深い傷を負わせます。人の知覚を歪め、考えを混乱させます。人から大事にされていないんだと実際よりも強く信じ込んでしまいます。人と関わるのがとても怖くなります。拒絶されたり、傷つけられたりしかねないからです。これ以上耐えられないほどの痛みを、心は既に抱えているんです。

孤独感に関する研究はたくさんあり、どれも恐ろしい結果です。孤独感は人を悲しませるだけでなく、死に至らしめさえするのです。冗談ではないですよ。慢性的な孤独感は早期死亡の可能性を14%高めます。孤独感は高血圧や高コレステロールを引き起こします。孤独感は免疫系の機能を抑制さえします。あらゆる病気に脆弱になるのです。
実際それらを総合して 科学者達はこう結論しています。慢性的な孤独感が長期的健康と寿命に及ぼすリスクは喫煙によるものと同程度であると。タバコの箱には警告文があります。「あなたを死に至らしめる可能性」。
でも孤独感の場合はそうではありませんね。だからこそ心の健康をもっと大事に考えることが重要なんです。

さらに2016年、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは「孤独の感情」と脳の後部にある背側縫線核(DRN)という部位が関係していると発表した。

論文によると集団飼育しているマウスと孤立した状態に置かれたマウスを比較したところ、孤立した状態におかれたマウスのほうがDRNニューロンが社会的接触に対して敏感になったという。さらに隔離した状態から集団に戻したところ、マウスの神経活動は急増し、ほかのマウスと比べて格段に社交的になった。

さらに面白いことに、社会的地位が高いマウスは社会的変化に対して敏感に反応することが分かった。つまり偉いやつは孤独にならないかビクビクしているというわけだ。(そんな人間臭いマウスがいるのか。)

寂しさは心だけの問題じゃない。脳や身体にも影響を与える。「病は気から」なんて、孤独を感じている人に気安く言える言葉じゃない。

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【寂しさとの向き合い方】

寂しさとは、孤独に対する恐怖であり、心身を痛めつけるものだ。それと同時に仕方ないことでもある。生きている以上寂しさは付きまとってくる。
だからこそ、しっかりと向き合うことが大事だ。

先述したガイ・ウィンチ氏が続けてこう語っていた。

たとえ2分間でも気を紛らわすと良いんです。

するとその瞬間は反すうの衝動から解放されます。ですから不安や動揺、ネガティブな思考におそわれた時はいつも僕は衝動が去るまで 他の事に集中するようにしていました。1週間もしないうちに物の見方が変わりましたもっとポジティブになり希望をもてるようになりました。

孤独な時、何か行動を起こすことによって、失敗に対する反応を変えることによって、自尊心を保護することによって、ネガティブな思考と対決することによって。あなたは心の傷を 癒せるだけでなく、感情の抵抗力を身につけ成長できるのです。百年前、人々に衛生意識が芽生えて平均余命は 50%以上向上しました。ほんの数十年の間にですよ。生活の質の大幅な向上には 感情の「衛生」が必要だと、僕は確信しています 。

少し前にTwitterでオードリー若林の名言が流行ったのを思い出した。

結局は何かに没頭していないと不安や動揺に襲われる負の連鎖から抜け出せないのだ。たった2分でその連鎖から抜け出せるのであればお安いものだろう。仕事柄、子どもたちとかかわることが多いが彼らはネガティブになるとなかなか動き出せなくなる。目の前の不安でいっぱいになって、飲まれて、気から病を引き起こすこともある。そんな子たちに対する助言としてもこの話は使えるかもしれない。

「たった2分でいい。没頭してごらん」
なんて短い言葉だけど。

少なくとも私は救われたから。

参考
「孤独の科学」ジョン・T・カシオポ/ウィリアム・パトリック
http://news.mit.edu/2016/neurons-loneliness-brain-0211
https://wired.jp/2016/02/18/pinpointing-loneliness-neural-level/
https://togetter.com/li/1411097

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