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The Who: Solo works: Roger Daltrey & Keith Moon & covers

Roger Daltrey - Daltrey (1973)

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 ザ・フーのボーカリストのロジャー・ダルトリーはザ・フー全盛期の1973年から割とコンスタントにソロアルバムをリリースしている。当時現役のバンドのメンバーがそんなにソロ活動を活発にすることもあまり見られなかったので珍しいケースだろう。ザ・フーの場合は全員がそんな感じでソロアルバムを出してて、しかもバンドとしては最高峰のレベルの作品をリリースしまくっているという恐ろしい集団だった。もっとも、バンドのザ・フー=ピート・タウンジェンドという図式はあったが、その分他のメンバーはもう少し普通レベルでのソロ活動を楽しんでいたようだ。楽しんでたかどうか分からないが、少なくともロジャー・ダルトリーに関しては自身のキャリア形成を意識していた節は見られる。

 1973年にリリースされた最初のソロアルバム「Daltrey」はジャケットを見ての通り、映画「Tommy」とかなり被るイメージを打ち出している。これはもうアルバム「Tommy」の頃からイメージが付いてしまったロジャー・ダルトリーの性でもあって、特にイメージを替えるんではなくてそのまま売っていこうとしたからだ。その分音はある意味実験的で、ある意味無難とも言える作風に仕上がっている気がする。普段ピートの楽曲でロジャー・ダルトリーが歌っているのはマッチョでパワフルな歌声で、これこそザ・フーと言わんばかりの歌だが、その声を持ってして外部ソングライター達の作品を自身の意向をほとんど打ち出すことなく歌っただけではないかとも思える。実質は作詞作曲編曲=デヴィッド・コートニー+レオ・セイヤーのユニッットで、ロジャーは歌っただけ。故に演奏陣もその人脈で固められているのでそれこそラス・バラードは単にギタリストとして参加してて、その類まれなる作曲能力は発揮されていないところが残念。そしてアージェント人脈からドラムにボブ・ヘンリットが参加している。すなわちここで後のザ・キンクスとザ・フーが合体…、意味はないけど感慨深い。それにロジャー側からバイオリン奏者としてEast of Edenのデイヴ・アーバス、すなわちザ・フーの「Baba O'riley」で聴けるバイオリンを弾いた人。そんな面々が参加しているが、やっぱりロジャーは歌っただけなハズだ。ロジャー・ダルトリーは音楽的にこだわりがない人だと思ってて、歌えば何でも自分流になるし、小難しいのは合わないのを知ってるし、ピート以外のソングライターの楽曲を歌ってみる興味もあったと推測できる。

 さて、その「Daltrey」というアルバムは可もなく不可もない。ロジャーが歌ったから素晴らしい作品になった訳でもなく、楽曲の良さが引き出されたものでもない。普通にロックや音楽、歌があって、何か殊更今の時代まで聴くべき作品でもない。ただ、思ったのはロジャーは普通のロックを歌うくらいじゃ物足りない人だ、と言うくらい。やはりピートの作品が合う。当の本人はこのソロ活動をきっかけにコンスタントにソロアルバムを出していき、それぞれは作品としては悪くないしまずまずの英国ロックが聴けるけど、期待値高すぎたからちょいと満足できない感じ。

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