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U.S. 90s- Punk & Grunge

Bad Religion - Against the Grain (1990)

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 アメリカのパンクレーベルで名高いエピタフレーベルは、元々バッド・レリジョンのメンバーが作ったレーベルで、本人達は移籍しながらもレーベルは運営されている珍しいパターン。しかもランシド筆頭に売れているバンドもあるので珍しい。オフスプリングやNOFXも出身レーベル。

 昔々に見たレコードのジャケットのあのバンド。パンクなのにまだ残って生き残ってたと失礼な事を思ったくらい古いバンド。デビューは1981年頃で、リアルパンクが出てきて、アメリカからハードコアが出てきた頃に名前を見たが今では超大御所の位置を確立。

 どうやら今のパンクやメロコアバンドに相当影響を与えたらしく、サーファーとパンクが結びついたアメリカンパンク初期の歪んだギターが鳴りまくって音がフラットで速くて叫ぶだけだが「Against the Grain」を聴いた。

 疾走感あるハードコアパンクで、メロディやコーラスがキャッチーだから初期ハードコアパンクと異なっててメロコアに影響を与えた側面。聴きやすい要素が入るから面白くて、西海岸のサーファーにもウケる。そして元来のパンクの流れを知ってるファンも大丈夫な範囲だから残って売れた大御所の位置付け。

Dinosaur Jr. - Green Mind (1991)

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 90年代初頭のグランジの波はリアルタイムで流れたけど、自分には影響なく脇をすり抜けて行った。ところがロックシーンには大いなる影響を与えて、それまでのロック感を完全に否定、撃破して退廃的な90年代を迎えた。一方でインターネットが普及した時代。

 Dinosaur Jr.の1991年作「Green Mind」は4枚目のアルバムで、ほぼ主役のJ.マスキスがすべてを手がけているアルバム。当時から興味がなかったのでアルバムを聴いた事もなかったし、グランジ一派と思い込んでた。ところが今の時代にコレ聴くとグランジでもなく、多様なサウンドが詰め込まれたバリエーション豊かなアルバムになる。冒頭の疾走感溢れるロックソングからアコースティックで疾走していく曲もメロディアスに奏でられるサウンドもありと、ロックの奥深いトコロまでやっている感溢れる作品で、時代に乗って出てきたけどクラシックロックの影響が分かる作品。

 時代に迎合したのではなく、先取りしたグランジの最初とも思える。アルバムリリースどころかデビューも80年代で、ちょいと粗雑過ぎるけど普通に勢いあるスタンダードにロックの概念に則った作品。

Dum Dum Girls - Only in Dreams (2011)

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 「ラモーンズ meets ロネッツ」とキャッチーコピーが付けられたDum Dum Girlsのセカンドアルバム「Only in Dreams」はインディーズだが、アマゾンで普通に買えるのでメジャーもインディーも大して変わらない。

 ジャケットは随分とシュールな印象だが、正に「Ramones meets The Ronetts」のサウンドで、ラモーンズは有名ながらもロネッツは60年代に活躍したフィル・スペクタープロデュースの女性歌手グループで「Be My Baby」が有名。可愛らしい歌声に人気が集まっていたが、その両者が出会ったサウンドとは興味深い。ラモーンズはポップやサーフィンロックなのでイメージの割に明るく軽やかなサウンド。それを可愛らしい女の子が歌うので更に進化したローファイなサーフロック。

Dum Dum Girls - Too True (2014)

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 Dum Dum Girlsの新作「Too True」。前作「Only in Dreams」が気に入ったが、相変わらずのキュートさと軽やかな爽やかさが心地良くローファイサウンドながらも良質な作品。既存のサウンドの融合と延長線の進化系、ラモーンズ meets ロネッツは相変わらず心地良くBGMには最適。しかもアルバム10曲30分の割り切り感も丁度良いリラックス時間感覚。

Good Charlotte - The Chronicles of Life and Death (2004)

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 グッド・シャーロットの名盤「クロニクル・オヴ・ライフ・アンド・デス」。パンクでも激しいロックでもなく、普通にロックな曲が並んでいるアルバム。ハイレベルな楽曲やスタンスが明確に表れている。見た目は刺青だらけで、相当ヤバそうだがヒラリー・ダフやニコール・リッチーなどのセレブと付き合いもあり、何故か上流階層に食い込んでいる不思議。そういう権力に逆らう事もパンクと思うが古いようだ。クラッシュで育った人間としてはイデオロギー違う。パンクは音だけでなく、生き方もあると思う。

 アルバム「クロニクル・オヴ・ライフ・アンド・デス」は、聴きやすくメロディが綺麗に作られていて上手い。激しさやパンクらしさはエッセンス程度で、今時のロックアルバム的によく出来ててキャッチーでウケる要素満載。

Green Day - Dookie (1994)

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 90年代のパンク世代には1994年に節目があって、この年にグリーンデイやオフスプリングなどが台頭してメロコアブームが巻き起こる。日本ではもうちょっと先にブルーハーツやイカ天があったように日本の方がシーンの先取りが早かった。そういう点では独自の進化しているからビジュアル系も含めて侮れない。

 グリーンデイのメジャーデビュー盤にしてパンクアルバムの名盤「ドゥーキー」。近年リリースされた「アメリカン・イディオット」が最高傑作と言われているが、もはやパンクバンドではないので後回し。

 「ドゥーキー」がパンクと言われても分からない。近年グリーンデイはパンクから逸脱してロックバンドになったとあるが、そもそも最初から音はロックで手法はパンク。「ドゥーキー」は多彩な曲で面白く名盤も分かる。ヒット曲「Basket Case」がグリーンデイの代名詞だが曲はアルバム内で浮いてる。

Green Day - 21st Century Breakdown (2009)

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 今やアメリカを代表するバンドになったグリーンデイ。元々パンクも昔の話、バンドの音楽センスが世に認められて、新たな世界を構築した。前作「アメリカン・イディオット」でモンスターバンド化したから、期待された新作「21世紀のブレイクダウン」。

 世界中で話題沸騰の「21世紀のブレイクダウン」は面白い。ここまでポップでキャッチーで爽やかなロックが詰め込まれたアルバムなら売れないハズはなく完璧に出来上がったアルバム。

 70年代ロック好きな人なら最初から古き良きロックのオマージュに気づく。メロディはグリーンデイのオリジナルだけど、バックのアレンジやサウンドにオマージュを振り掛けながら、グリーンデイの音に纏め上げているから、誰が聴いても良い作品だから好きになるロックのツボを押さえている。似たような曲が多いが凄い世界。それを独自のコンセプトストーリーによる歌詞で繋いで纏めて、ロック好きには気になる要素を詰め込んでいる。

 モチーフはスウィートやスリー・ドッグ・ナイト、ビートルズ、クイーンやザ・フーなど、彼等が子供の頃にラジオから流れていたロックが出てきている。ここまでロックを達観してプレイできるプレイヤーも少ないから「21世紀のブレイクダウン」は楽しめる。

Green Day - Awesome As Fuck: Live (2011)

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 グリーン・デイの集大成ライブアルバムで話題の「Awesome As Fuck: Live」。日本公演も収録されているので好意的に迎え入れられている。パンクファッションだけどメイクもしてオシャレで可愛らしげな面があり、ポップさが強い。楽曲はメロディのしっかりしたポップ調のパンクな楽曲に往年のロックオマージュが入る面白さ。

 「Awesome As Fuck: Live」はベスト選曲と言える曲が並んでいて、近年の歴史が詰め込まれている。アルバム「21st Century Breakdown」のツアーだから「21st Century Breakdown」の曲が多く、ナマナマしく勢いがあってノリが凄いライブバンド。観客の扱いも上手く自分たちも乗ってる傑作ライブ盤。アチコチの会場で行われたライブを組み合わせているけど、違和感なく常に全力投球している引き締まった演奏で良い。

Green Day - Revolution Radio (2016)

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 Green Dayの新作「Revolution Radio」。このバンドも20年選手のベテランパンクバンドで、昔ながらのパンクではなくメロディーもキャッチーなロックバンド。ポリシーやスタイルがパンク的でユニークな路線を歩んでいる商業主義を手玉に取ったバンド。聴くと最新作が大抵一番良い作品に仕上がってて、メロディーもアレンジも曲の作り方もオーソドックスながら古い作品群よりも良さが増している。前作から流れて磨いた質感で良い作品作る。

 「Revolution Radio」も昔みたいにビートで押しまくる曲はなく、ひたすら快活なロックバンドの感触だけど、そこで尖った所があるから面白い。今作は3人で集まって自分達でプロデュースして勝手に作ったらしく、商業主義を知り尽くした後に自分達の初心に戻った作品。だから音は自分達の生身だけど経験値上がってるから上手く作れてる。名盤ではないが、根底のロック部分が分かるアルバム。

Nirvana - Nevermind (1991)

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 1991年リリースの90年代を支えた一枚「Nevermind」。厳密に言えば「Nevermind」の一曲目「Smell Like Teen Spirit」の事を指している。「Smell Like Teen Spirit」以外の曲はそれほどメジャーでないし、インパクトも薄い。アルバムも取っ散らかった印象で名盤でもないが、Nievana伝説は生きていて、殺伐とした悲壮感が漂うアルバム。ギターテク関係なく、破滅的なパワーと聴きやすいメロディセンスを生かした作品。そして退廃的な時代に突入する予感を味わせるが、「Nevermind」がなければもっと世界はハッピーだったのかもしれない。それくらいにインパクトの強い一曲とカート・コバーンの存在と消失。

 個人的にはハマらなかったしカッコ良いとも思わなかった。汚い格好で人前に出てきて好きにやられても面白くないし、カネ払ってるヤツに対して見せるもの見せろと常識的考え方があったと思う。それをぶち壊しているのがロックだが。「Nevermind」は暗いアルバムで時代に与えたインパクトは絶大だった。もうこういう退廃的な雰囲気を世界は必要としていないが、アメリカのシアトルから出てきたとは不思議だ。

Nirvana - In Utero (1993)

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 ロック史に於いて、シーンの流れを劇的に変えるインパクトを放つバンドやアルバムはいくつかあるが、ほとんどが短命に終わる。ロックの悲劇的スターも神格化されて伝説になるが、アイコンの果たす役割は大きくてロック好きな連中の会話のネタにもなる。

 Nirvanaの3枚目のアルバム「In Utero」は1993年にリリースされているが、前作の「Nevermind」ほどのインパクトはなかった。それでも成功者と追いかけ回られ、精神に破綻をきたした天才が故の悲劇は起きるが、このアルバムを聴いている限りでは、しばらくしたら落ち着いたとも思う。時代が過ぎ去ってから聴くこのアルバムの出来映えと存在意義が中途半端で、前作ほどのインパクトはなく、グランジの方向性でもなく普通にロックしているから。

 安っぽいギターを歪ませて静と動の対比による破壊力、ギターソロもなくパワーと退廃的なスタンスでファンを魅了したが、結果的にギターソロも入り、曲構成も展開して、楽器演奏のテクニックには頼れないから結果的に普通のロックの方向性になり、パンクと同じ衰退を一瞬で辿った。それでも市場に残したインパクトは絶大だった。

Nirvana - Unplugged In New York (1994)

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 1980年代はポップスの全盛期、裏街道ではLAメタルが台頭してギタリストがヴァン・ヘイレンの真似をして速弾きに命を懸ける時代だったが、アンダーグラウンドではソニック・ユースに代表されるガレージノイズ的サウンド=パンクの血を引くバンドもアメリカでは出現していた。

 1991年にメジャーデビューしたニルヴァーナ。グランジサウンドの雄と呼ばれたシアトル出身のバンドで、アルバムリリース後のシングル「Smells Like Teen Spilit」が全米チャートを駆け巡った。アルバム「Nevermind」も1,000万枚突破で、フォロワーやモノマネバンドは山のように出てくるほど。このアルバムに詰め込まれたサウンドは最小限の3人で奏でていた。この大ヒットを機に速弾きギタリストはシーンから消え去り、ケバいメイクのお化粧メタルバンドも一掃し、ヘヴィメタルも吹っ飛ばした恐るべしパワー。若者はグランジかラップのどちらかを聴く風潮になる程の社会現象で、76年のセックス・ピストルズ登場と同じ衝撃だろう。

Nirvana - From the Muddy Banks of the Wishkah (1996)

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 1996年にリリースされたライブアルバム「From the Muddy Banks of the Wishkah」を聴くまでは実際のNirvanaのライブも音も映像も知らなかったから、かなりびっくりして、初めてNirvanaが伝説になってる理由も判った。とんでもないライブバンドで、久々にぶっ飛んだ。曲もほとんど知らないに等しいけど、それでもロックのエネルギーとパワーを全部持ってて驚くほどアグレッシブなライブ。

 イントロから叫び声で始まると凄いグルーブ。トリオ編成だからノッたら凄いし、カート・コベインのギターも安っぽい音だけどクリーンと歪んだ音を使い分けて曲の緩急出して、ソロ弾いても薄くならないライブを知り尽くしたバンド。とにかくロックの塊が凄くて、声が出てないのにシャウトしてるから、単に魂の叫びを吐き出せれば良かった人と痛感する。

 凄いライブアルバム。リリース20年後に知る驚きがあって嬉しいが、何度も聴き込むようなアルバムではないか。少なくともロックが伝わるライブ盤でジム・モリソン的に感じる面もある納得の一枚。

NOFX - Punk in Drublic (1994)

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 パンクにレゲエ・スカを取り込んだザ・クラッシュは凄い革命者で、パンクと融合がなければ今のスカパンクも登場しなかったかもしれない。

 90年代を代表するアメリカのパンクバンド、NOFX。ハードコアパンクの音色を残したままメロディアスでキャッチーな歌を載せて叫ぶUSパンクの進化系。英国ハードコアの影響は大きいが、NOFXもスカを基本とした曲をプレイしているからザ・クラッシュの偉業も分かる。

 NOFXが1994年にリリースした「Punk in Drublic」は90年代パンクロックの名盤で、ガレージバンドに影響を受けていたロックファンにもう一発衝撃を与えるインパクトを持っているハードコア。歌はメロディックでコーラスもキャッチーだがウケた。名盤の所以は「Don't Call Me White」に象徴される。逆差別主義も面白いが、それにも増してキャッチーなサビとリフレインが素晴らしい。

 サウンドとメロディが取っ付きやすく、はっきり意思表明しているから分かりやすい。ひとつだけ気になるのはファッションセンス。90年代以降のバンドはただカネがないだけのファッションが多くて、スタンスが見られないから残念で。ピストルズもクラッシュもダムドも実は凄くオシャレ。

 「Punk in Drublic」は心地良く邪魔にはならない音で、勢いに乗っている名盤で。若い頃に聴いたら衝撃的だと思うレベル。このバンドももう既に20年選手だがロックに年齢は関係ないと分かる。

NOFX - Coaster (2009)

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 この新作の価格は驚いた。アメリカでは10ドル以下で発売され、日本でも1000円で売られている。それこそ元祖パンクの姿勢で、カネのないファンにできるだけ安価でスピリッツを提供するスタンスはクラッシュが築いた。今はダウンロードに対抗しているけど、それでもインパクトある値段。

 音はいつものNOFX節のポップでキャッチーで速くてハードな曲からメロウな作品まで詰め込まれて、この時代に12曲30分の収録も珍しい。特別な変化もなく、いつもの作品だけど面白い世界。テクニックを求めてはいけないけど、子供っぽい楽しさとメロディセンスの高さは凄いし、ベースラインの面白さもツボ。歌声が特徴的でメロコアを決定づけている。

 裏ジャケットは過去のCDをコースターにしているけど、今の時代は所詮CDはこんな扱いだろとのおちょくり。実際それに近いくらい価値は下がっているから、姿勢はパンクだ。

The Offspring - Smash (1994)

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 オフスプリングの出世作「スマッシュ」は三枚目の作品で、インディーズで売りまくったと実績を持つ。シャープでソリッドでバンドの本質を見事に出し切っているヒット曲がいくつかある。

 基本的には潰れたディストーションギターで軽快に流れてくる。ヒット曲と「ホワット・ハプンド・トゥ・ユー?」は単純なスカ曲で異質だが、売れた以上バンドの代名詞にもなっている。本質はハードコアに近いメロディを持ったバンドだが、少々軽過ぎる印象。

Pearl Jam - Ten (1991)

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 1991年に後にグランジロックと呼ばれる連中のアルバムが続々とリリースされ、日本でもNirvanaが大ヒットしてロックシーンを変えた。一方Pearl Jamも同じ旋風を巻き起こしたが日本には伝わり切らなかった。改めて聴いてもそこまでのインパクトと思えないが、再結成ドアーズのボーカル、The Whoやロジャー・ウォーターズと共演と大御所たちと本家のセッションでボーカルを任されているから実力はある。それでもPearl Jamはよく知らない。

 ファーストアルバム「Ten」はインパクトはNirvanaに引けを取るが、この時代にこういうスタイルのロックは革新的で、アングラまで含めてちょっと毛色が変わってる。ただ、退廃的なムードと陰鬱なハードロックの合体のルーツが見える。脳天気なアメリカ人にも陰鬱な奴は多いと表立って言えて、日本で言えばオタの支持を得た感覚。全体的には好みではないけど、新たな息吹は分かる。

Pearl Jam - Vitalogy (1994)

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 Pearl Jamの三枚目の名盤、1994年リリースの「Vitalogy」。カート・コバーンの自殺劇がかなりの影響を及ぼしているらしいがチープでガレージな音。1994年のアルバムと再確認するくらいにはアングラな音質。雰囲気は暗くてインパクトはある。曲はグランジでもなくハードロック的パンク的で意外に深いアルバムで、影のあるエネルギーを感じる。あまり良好ではないバンドの雰囲気が音に出ているから、ロック的な重さより精神的な重さが強い。90年代のアメリカは病んでいたと思うサウンド。これがPearl Jamを初めて聴いた感触。

 いくつかの曲でジム・モリソン的なカリスマ性を感じるが、The Whoの絡みは不明。「Tremor Christ」が主張性も高くてカッコ良く聴こえてきた。

Rancid - ...And Out Come the Wolves (1995)

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 パンクも英国では反抗の証から始まっているけど、最近は流行らないのでバンドはほとんど出てこない。英国の場合は形を変えて進化した状態でシーンに登場する。しかしアメリカはアジテーションに影響を受けて音楽的手法と表現手段としてパンクが存在している。単純に叫ぶレベルから逸脱して、聴ける音楽レベルに再構築しているから、進化させたパンクの方法論が出来上がっている。メロコアの世界はメロディーはキャッチーにビートもそこそこに、ファッションはそれらしく、インパクトもそれなりで、本人達のパンク好きは分かるけど、売れる可能性をもたらすバンドがシーンに出てくる。

 簡単に言えばラモーンズのインパクトとキャッチーさにクラッシュのシリアスさとスカを持ち込んだバンドがランシド。長いモヒカンに鋲付き革ジャンだから見た目のインパクトは強いが、出てくる音は凄くキャッチーでポップなパンク的サウンド。これぞアメリカ的解釈。

 三枚目のアルバム「・・・アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス」は素晴らしい程に聴きやすく覚えやすく適度なビートが心地良く、コーラスも分かりやすいので大合唱。ランシドはベーシストが技巧者で良いラインを弾いて目立つ。あの格好でこの音には驚いた。「Olympia Wa」や「Ruby Soho」は素晴らしいし、「The 11th Hour」のメロディセンスも見事で、パンクロックの名盤扱いも納得。ハードコア的なアルバム「ランシド V」にもチャレンジしよう。

Rancid - Let the Dominoes Fall (2009)

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 今ではNOFXと双璧を成すメロコアの雄、且つ70年代オールド英国パンクの雰囲気を受け継いだランシドも6年ぶりの新作で期待が高まる。

 「Let the Dominoes Fall」は初めてメンバー全員がジャケットに写ってて、古き良きパンクスピリットが出ている。中味はこれまでのランシド同様にメロコア傑作で些かメロディがワンパターン化しているけど、それこそがバンドのメロディセンス。

 アルバムの曲が間髪入れずに流れてきて、ランシドの特徴でもあるイントロが短く、すぐ歌が入るから切れ目を気にせず聴ける。いつものスカパンクもあるから飽きないし、「Disconnected」のキャッチーなメロディの後に「I Ain't Worried」のラップとスカとパンクを混ぜた曲が投げかけられ、更に「Damnation」へランシドの持つスピーディなメロコアに戻る展開も。しかしベースラインの巧さは相変わらず渋いところでキメてくれて、「Civillian Ways」はメロコアを忘れるくらいアメリカな香りのする深みのある曲。

Rancid - …Honor is all we Know (2014)

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 Rancidの新作「…Honor is all we Know」。大して知らないけど、いつも気持ち良い音でハズレがない安定のパンククォリティ。「…Honor is all we Know」も幅広い要素が散りばめられてて、お得意のパンク一辺倒でもなくスカもあってニヤリとする。このバンドのボーカルの歌声も抜け切らないイモ臭さだけど、ジョー・ストラマーを彷彿させてくれるから、幅広いエッセンスを汲んだ音を出すと嬉しくなる。ジョー・ストラマーがやってたパンクの進化系もこうして生きてると分かる。

 一方のRancidは独自のストレートで分かりやすいシンプルさで明快に伝えてくれるベテランバンド。相変わらずのテンションの高さは見事で、アホらしくもなくシリアスすぎず、ヘタでもテクニカルでもなくバランスが取れてカッコ良い。

Sonic Youth - Evol (1986)

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 新しい刺激に出会った時は惹き付けられるか拒絶するか。多くは拒絶を選ぶが、それでも改革は進み結果的には時代と共に進化していく。故に新しいものに抵抗の少ない若者を中心に時代が変化していくが、あまりにも衝撃が強いと若者でも拒絶を選ぶし、その意味では変化に慣れてきた年輩の方が変化を受け止められる。Sonic Youthの出会いはインパクトがあり、理解を超えたイズムを理解したくなったほどに革新的だった。

 1986年リリースのSonic Youth4枚目のアルバム「Evol」はまだ自主制作時代のアルバムで、メジャー路線の確立したサウンドではなく、もっとインディーの素人の雰囲気が漂っている。それでも音世界は明らかに唯一無二のアンダーグラウンドで、後のシューゲイザーと呼ばれるノイジーな世界もあれば淡々としたノイズサウンドも聴かれる。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの現代版、進化版とは言い得て妙。NYパンクの行き着く先、ノイズサウンドの始まり、パンクか芸術か、様々なムードを出して音をアルバムに入れて後のSonic Youthサウンドの原型を作り上げたアルバム。若さ故の熱さや想い入れが詰め込まれているからアルバムの出来よりもボルテージの高さが凄い。

 Sonic Youthがメジャーになった時に知って、後追いで聴いたが、ここまで鋭利で繊細ながら不器用に熱さを物語っているスタンスに痺れた。リアルタイムでこのアルバムに触れた人は音楽的なセンスが鋭いと思うし、それこそロックだ。この異様なテンションの高さは他では味わえない、ましてやアメリカではほぼ聴かれない貴重な姿だし、さほど騒がれないアルバムだが、正しく芸術家の作った名盤。

Sonic Youth - Daydream Nation (1988)

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 ニューヨークパンクの雄、Sonic Youthは既にベテランから引退の時期に差し掛かっているが、メジャーデビュー前のアルバム「Daydream Nation」は1988年リリースでほぼメジャー時と同じ路線のアルバム。ほぼリアルタイムで聴いてて、斬新で最新のニューヨークパンク、ノイズで、表現出来ないパンクバンドだった。

 凄くオシャレでノイジーで聴きやすく入りやすいバンドで、王道ロックではなく、新しく生まれたパンクサウンド。普通にインディーズ時代のCDも買えたからそれだけメジャーだった。かなりクセになるアルバムでカッコ良く、初っ端からクールに響き、アルバム全体通して同じテンションで続く疾走感が心地良いノイジーさでオシャレ。。

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 Sonic Youthの「Goo」はオシャレな音と同時に凄いロック感のニューヨーク・パンクノイズ・ガレージサウンドだが、当時は聴いた事ない音世界だったから素直にカッコ良いと思った。それから遡る事2年前のアルバム「デイドリーム・ネイション」は「Goo」とは違ってインディー感バリバリのアルバムで、音楽センスは全盛期のSonic Youthらしい音でバンドの個性が際立っている。ロックの破壊力ある音の洪水に身を任せる感覚で本人が意味を込めてやるからこれだけのパワーが発散されている。

 「デイドリーム・ネイション」はメジャー直前の、メジャー契約を掴み取ったアルバムで、ニューヨークのアート的感性とノイズやコジャレ感とアンダーグラウンドなパンク感覚。表のシーンが綺羅びやかだった時代に地下ではこんなサウンドが渦巻いててカッコ良いしセンス良いし衝撃的。

Sonic Youth - Goo! (1990)

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 遅れてきたパンク=オルタナティヴロックと定義された1990年代。REMやニルヴァーナのハードでグランジなスタイルから同一視されてきたが、ニューヨーク出身のソニック・ユースは、1970年代のニューヨークパンク=テレビジョンやパティ・スミス、ラモーンズをリアルタイムでライブを見ていた連中が結成している。70年代からバンドを始めるがインディーズのアルバムリリースレベルに留まってメジャーには躍り出る事なくニューヨークのアートシーンからドサ回りをして地道にファンを拡大していた。しかし90年代に入って煌びやかなロックに終止符が打たれ、退廃的なサウンドが全面に出てきた辺りでソニック・ユースに白羽の矢が立った。十数年もライブハウスを回ってインディーズながらも実験的なアルバムを数枚リリースしていた実績から、ゲフィンとメジャー契約した。

 「Goo」は最初からクールなノイズと実験的サウンドだけど完成度高いから聴きやすく、ノイズまみれでもなくバランスが取れてる。ギターもベースもメジャーな音ではなく、ナマナマしい音で、初っ端の「Dirty Boots」がカッコ良い。ベースの女性、キムが歌っているがヒステリックで世の中ナメてる歌い方で面白い。「Goo!」はデラックスエディションもリリースされているみたいで時代が一回りすると色々と面白い。ジャケも良くて音も新鮮で、さすがニューヨークの音。

Sonic Youth - Dirty (1992)

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 Sonic Youthの1992年リリース作メジャー第二弾アルバム「Dirty」は今聴いても実にクールだ。こういう形のロックは当時でも最先端で、今聴いても古さを感じなく斬新な刺激。当時から聴いてたけど、前作「Goo」の方が好みだったから「Dirty」は地味な印象を持ってた。メロディも音もはっきりしすぎていた感じ。ところが時代を経て聞き直すと超絶クールなパンクに気づき、グランジ寄りな悲壮感やノイジーながらも一瞬キラリと光る美しさはソニック・ユースのスタイル。

 ベースボーカルのキム・ゴードンの歌はセンスを感じて、音楽のスタイルに加えて高みに到達している。ノイズなのにポップ、アバンギャルドなのにポップ、疾走感あるのにクール、ライブだったら耳を塞ぐ音なのに普通に流しておきたくなるセンス。どれも不思議なバランスで成り立っているパンクでオシャレ。久々に聴いてこの良さに取り憑かれてきた。

Sum 41 - Does This Look Infected? (2003)

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 Sum 41はフレッシュなカナダのトロント出身のバンド。三枚目の「Does This Look Infected?」はSum 41の真髄で面白い。メロディはしっかりしてパンクエッセンスも入ってて軽快で心地良い独特の雰囲気。ちギターリフに主軸を置いてたり、スラッシュメタルに近い曲もあって、深いところを掘り下げている。その分旋律が綺麗すぎて生粋のパンクファンには好かれない要素もある。パンクバンドと定義するには斬新すぎるが、表現方法はパンクでパンチがあって良い。ボーカルのテンションが高いからつい惹き込まれる。

 この辺になると音の表現方法でパンクを使ってて、そもそものパンクのアイデンティティはあまり拘っていない。やりやすい形で表現してメジャーで出して売れる手段でファン層を掴めている。

Zebrahead - MFZB (2003)

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 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン要素もあるが、もっとおバカなバンドのゼブラヘッドの三枚目の作品「MFZB」は2003年リリースされた最強のアルバム。

 初っ端が凄くストレートでカッコ良くて驚いていたら、二曲目以降はおバカ要素が入ってきて、更にラップが入るから、メロコアではない。パンク的エッセンスが形を変えて出てきていると割り切ると面白いバンド。リズムのハネっぷりが心地良く、ギターも心地良く歪んでいる。よく出来てる音作りが分かるので売れてもおかしくないロックの進化形。

 「MFZB」は確かに捨て曲なし。一本調子でもないが、もうちょっと騒げる曲があっても良い気がするけどライブも大変と思う。パンクとラップとメロコアを融合させた器用なバンドで骨っぽい。

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