見出し画像

Radical Trad & Folk

Al Andaluz Project - Deus Et Diabolus (2007)

画像1

 Al Andaluz ProjectはL’ham de FocのボーカルのMara Arandaが参加しているプロジェクト。L’ham de FocもMaraのソロ作も好きだから当然このAl Andaluz Projectも気に入る事は判ってて、2007年の作品「Deus Et Diabolus」を聴いた。そこには摩訶不思議な世界が広がってて、自分が表現できる単語では言い表せない音の世界で、正に万華鏡の中にポツンと一人紛れ込んでしまった異世界感。先のL’ham de FocのMara AradanaとドイツのEstampieのボーカル、シグリッド・ハンセンと更にモロッコ人の女性シンガーが古楽器で奏でる民族音楽のぶつけ合い。スペインにドイツにモロッコと、そもそも基本的な音がどこにあるか分からないけど、3人のコーラスも相まって美しい音のアンサンブル。民族音楽の伝統的なスタイルも聴くほどにその美しさと不可思議さに惹き込まれる。

 南スペインが昔アンダルスと呼ばれ、後にAl Andaluzになった時代の音楽再現プロジェクトだから発起人はMara Arandaか。地中海サウンドや古楽器バンドもあるけど、ロック的にはPage & Plantのロック部分がない感じ。でも、ドライブして昂揚する魅惑的な音です。大して知らない女性3人の歌もそれぞれの個性は明らかで、モロッコは聞き慣れてないから分かりやすい。それぞれの言語も雰囲気出るけど、何語までは分からない。

 こんな島国の単なるロック好きでも知っているから現地周囲では相当有名で、実力も一級品の折り紙付きプロジェクトだから、これ以上を探しても見当たらないだろう美しい世界。

Al Andaluz Project - Salam (2013)

画像2

 Mara ArandaとEstampieのフロントレディによるAl Andaluz Project名が3枚のアルバムと1枚のライブアルバムを出している。2013年にリリースされた「Salam」はL'ham de Focよりもっと綺羅びやかさが漂い、Mara Arandaソロアルバムよりもう少し色彩の多い音色が多い感じでやや明るめなので、ドイツの血による影響とするならばEstampieが気になる。

 Al Andeluz Projectは取っ付き易いし、歌も二人だから単調にはならずにそれぞれのカラーが明白に出てくる。Mara Arandaは聴き知っているので旋律や歌声が分かるが、Estampieの女性ボーカルSigrid Hausenを知らないから興味深い。似ていながら異なる旋律やセンスと民族性を実感する面白さも音楽の深さの摩訶不思議なサウンド。

Aman Aman - Musica I Cants Sefardis D'Orient I Occident (2006)

画像3

 スペインのL’ham de Focの4作目と捉えている風潮の方が大きい別プロジェクトのAman Amanのアルバム「Musica I Cants Sefardis D'Orient I Occident」は、2006年にリリースされているが、Mara Aradanaはこの頃は多方面に動いており、プロジェクトにバンドの作品、その後のソロ作と精力的な活動が目立つ。どれも嬉しい仕事ばかりで味わえるが、今回のAman Amanも中世セファルディの伝統音楽を現代的な音にして蘇らせている。セファルディを探求しないと本格的には楽しめないが、難しい事を考えずにこういう音とメロディを単純に楽しもう。

 聴いた事のない地中海的メロディか、楽器の音色も多種多様でキラキラしてるから刺激的な自然の楽器と音と旋律で、ガツンとしたロックではない幅広い世界だが、まずは目先の作品を聴き倒して勉強したい。

————————————————

 2006年にリリースされたAman Aman名義のL'ham de Focの作品と言える「Musica I Cants Sefardis...」。邦訳すれば「古今東西セファルディの歌と旋律」、つまりはその系統のプロジェクトだが、L'ham de Focと音楽性の違いはまだ未熟だから把握出来ていない。それでも超絶的で、普通に刺激的な音に興味があれば十分に楽しめる。ポップスしか聴かない人はダメだろうけど、刺激を求めている人にはオススメ。

 マーラ・アランダの妖絶な歌声と古楽器の絡みがエロチックで艶かしく、生々しい民族音楽で、この世界観に身を任せてしまえば音楽と絡める。ドラムやベースやエレキギターは存在しておらず、楽器の音を聴いても楽器の名前が分からないほど。スペイントラッドを超越した圧倒的な音楽集団のアルバムで楽しめる。

Amarok - Quentadharken (2004)

画像4

 スペインのカタルーニャ地方からのAmarokの2004年作「Quentadharken」。同じスペインで民族的な音楽を意識しつつも異なる音楽の枝葉は想像よりも深い。

 Amarokはプログレ的な曲の展開で、一般的なバンドの音に加えて民族楽器古楽器が入って、旋律は民族的ケルト的だけど、妙に現代的で暗さは薄い。環境音楽に近いけど、女性の歌声だから現実に引き戻され、シンフォニックな流れや展開もあって、ミクスチュアな音楽世界が繰り広げられている。聴きやすく面白い反面、大人しい感じとポップス的に聞こえる辺りがコアな世界にはなりにくい。

Estampie - Ondas (2000)

画像5

 民族的・土着的な音楽も気になり、最近のポップス寄りでトラッドやアコースティックな作品を聴いたけど、ピンと来ない。やたら現代的なアレンジも要因で、本質的な魅力に欠けている。ところがEstanpieは聴き応えあってハマっていける。

 アルバム「Ondas」は2000年の作品だが、初期は古楽的要素が強く中期以降は発展した独自性のドイツのグループ。Estampieは中世的な古楽サウンドからスタートしてるから、ドイツらしさは出てきてないけど、このクォリティで刺激的。ゆったりと聴けて荘厳で落ち着いてて気品溢れるサウンドに天上の歌声が独特なメロディで歌い上げていくから惹かれる。強いて言えばSteeleye Spanの重さに通じるから幾つかの作品を聴いている。

 2000年の作品でも古くもなく、こんな音を紡ぎ出しているバンドが継続的にアルバムをリリース出来ているから凄い。

Estampie - Spirit of the North (2013)

画像6

 ドイツの古楽器民族バンドでキャリアも長く名高いEstampieの最新作「Spirit of the North」を聴いた。ここの所聞いている民族系のAl Andaluz Projectの片割れボーカルがEstampieの歌姫様で、それまでEstampieは知らなかったけど、ドイツの不思議さも手伝って聴いていた。

 最新アルバム「Spirit of the North」は2013年のリリースで、古楽器民族系だけど、かなりポップス系統のアレンジを導入して聴きやすく仕上げている。そもそも古楽器だけのバンドの印象もなく、プログレ的に大らかで繊細で美しい歌声に印象的な古楽器が鳴り響く感じ。Al Andaluz Projectは民族音楽に近かったが、Estampieはドイツの民族系な音でもないからユニーク。バンド自体は1985年頃から活動しているのでもう大御所だけど、今でもこんなに素晴らしい音を出すから魅力的。

The Farlanders - Moments (2000)

画像7

 ファーランダーズの2000年リリース「Moments」はロシアの民謡ジャズトラッド女性歌モノアルバム。タイトル「Moments」はロシアのライブハウスの名称のライブアルバム。聴いても完璧なアンサンブルとテクニックで録音されているからライブ盤とは思えないが、確かに合間に歓声が入っているが、エコーも完璧で凄い。

 基本アンビエント系の雰囲気で美しい女性の歌声が広がる音で旋律はロシア民謡ベース。男性が歌う時もあるけどこの人が高名な方らしく、貴重なセッションで記録されている。何曲かはバンド単位の演奏にだけど、その時のエレクトリックフレットレスベースのブイブイさが凄く、ジャズ的と言われるが、落ち着いた民謡メロディーを中心に雰囲気で場を創り上げる音楽。エコーやコーラス感が強いので透明感も高まり、透き通る川の底を見つめながら流れるそよ風に身を任せる雰囲気もある。

 聴いた事のない楽器の音色もあり、拍子もちょっと違う民族系の音は面白いから、たまに聴くと新鮮で感性が磨かれる。曲名も「7/8」や「Blues」とあって「Blues」の解釈も斬新。何気に変拍子も普通にあるから、プログレファン向け。最後は凄い盛り上がりを見せてくれるのでアンビエント系関係なしにミュージシャンの楽しみ的にハイテンションで、凄く面白くスカッとするライブ盤。

Flairck - Variaties op een dame (1978)

画像8

 オランダのFlairckの1978年のデビューアルバム「Variaties op een dame 」。ヴァイオリン中心のトラッドバンドで、インストモノですが、聞き慣れない旋律や音の出し方で不思議な感覚で聴いていたが、70年代にその起源があるバンド。古楽とトラッドとヴァイオリンのミクスチュアな音の追求で、姿勢はロックと同じだが、音はロックではないだけ。

 フルートとバイオリンがメロディを奏でつつギターでアグレッシブに仕掛けて躍動感溢れる曲になって、旋律の美しさを更に飛翔させているから音楽は深いと思わせる。

Flairck - Alive (1990)

画像9

 オランダのフレアークは女性二人と男性三人による室内楽奏的音楽ながら、世界のマニアの関心度は非常に高く、その音楽も多様化した素晴らしく美しい。

 「Alive」は激しくも素晴らしいプログレッシヴロックを期待していたが、出てきた音はアコースティックとフィドルやフルートを奏でる素晴らしく美しい音楽で、決してロックではないが、ノリも凄くて最高に熱い演奏で燃えてくる。

 ベスト盤みたいなジャケットが気になるけど、1990年リリースのライブアルバム。超絶テクニカル集団且つ演劇派で、DVDのFLAIRCK & CORPUS 「CIRCUS HIERONYMUS BOSCH」を見ると演劇に合わせたライブパフォーマンスもやっているので、演奏のみならずパフォーマー面も持ち合わせている。来日公演では曲の持つドラマ性に併せてキスをしながらフルート吹いていた不思議な集団。

Judee Sill - Judee Sill (1971)

画像10

 アメリカの奇特なシンガー、Judee Sillの1971年のデヴュー作品「Judee Sill」。人脈や才能の割にほとんど知られておらず、21世紀に発掘されてきた人だが、その才能はジョニ・ミッチェルやキャロル・キング、ローラ・ニーロと比較され、それ以上の才能とも言われる女性。

 ジャケットで見られる容姿に惹かれたが、SSWではなく、ボーカリゼーションなアルバムで、もっと上品に電子オルガンで歌ってる印象。先に上げた女性陣達が感情を歌で表現する手段とは違う世界で、洗練されたイメージだから不思議な感覚に陥る。70年代には理解されなかった理由も理解する。更に1979年にヤクで天命を全うしたロックな方。

The Killdares - Up Against the Lights (2011)

画像11

 アメリカのダラスのバンド、The Killdaresはアイリッシュケルトバンドで、ダラスに居着いていたアイルランド人の子孫が集まって伝承音楽をやっているようだ。2010年にリリースした代表的な作品「Up Against the Lights」のライブアルバム、DVDのセットモノで、冒頭から雰囲気バリバリで、Thin Lizzyの「ブラック・ローズ」好きなロックファンも聞きやすい感触。歌が男性だからテンション下がるけど、それも田舎臭くて良いか。所々でZeppelinのリフが出てきて、ロック好きだとニヤリとするシーンも多い。

 The Corrs以来こういう風味は出てこないと思ったけど、フロントでバイオリン=フィドルを奏でる紅一点のロベルタ嬢がバンドに華を添えている。ギタリストがクローズアップされた形態だからオリジナリティも強力で面白く、キャリアも長く地道に続けている。期待の「Whiskey In The Jar」は立て続けに見ると違和感なく、そこまでクローズアップされる曲でもないけど、バンドを知るには良かった。

L'Ham De Foc - Canco De Dona I Home (2004)

画像12

 L'Ham De Focの2004年の作品「Canco De Dona I Home」。以前にMara Arandaの「Deria」で衝撃を受けて気になっていたスペインの民族ラジカルトラッドバンド、L'Ham De Foc。ロックだけ聴いていたら出てこない世界観で凄く刺激を受けた。

 生楽器だけの作品で自然体で、歌はMara Arandaのエキゾチックな歌唱で突き抜けて来るから、L'Ham De Focの強烈なインパクト。美貌も去る事ながら歌声の引っ掛かり具合、音世界の不思議さが気を惹く素晴らしいアルバム。

L'Ham de Foc - Cor De Porc (2006)

画像13

 スペインのトラッドバンドL'Ham de Focはどのアルバムを聴いても新鮮で刺激的な世界でその筋で最も有名なバンドだが、ロック畑からは英国トラッドよりも奥深くて未知の世界。女性ボーカルのArandaの歌声に感激して、音世界に引き込まれ、更にリラックスした世界と心地良く浮遊した世界に溺れる素晴らしいバンド。

 2006年にリリースされた三枚目の作品「Cor De Porc」はリラックスできる音楽の力を実感する。ハーディガーディの使い方やその他民族的楽器の音も心地良い世界で、広がる世界が綺麗。ゆったりと何度も聴いていたい音楽。相当音の研究している音の気がするのでトラッドだけでなく、溢れ出てくるエネルギーと躍動感、高揚感が見事なバンド。

Luar Na Lubre - Espiral (2002)

画像14

 スペインのガルシア地方のバンド、Luar Na Lubreの2002年の作品「Espiral」。スペインでも北西の方の影響で、ケルトの血が濃い地方らしい。ケルトと地中海が重なり合うサウンドほどのミクスチュアでもなく、純粋にケルトとスパニッシュの明るい空気が重なってるから、英国やアイルランドのケルトと異なり、垢抜けた感じで暗さや重さは抜けてる。ただ、音楽の旋律や音色は確かにケルティックで、暗い音に慣れている自分には不思議な感覚。しかも明るい地方のケルト音楽は聴いた事なかった。

 多種多様の楽器の音色に女性ボーカル、縦笛にフィドルとケルトで美しい曲が立て続けに流れて、地中海音楽に比べれば随分と現代的な環境音楽風に聞こえる。でも、フィドルと縦笛の音色は優しくて鋭いから許せてしまうし、心地良く聴いていられる。

Mara Aranda & Solatge - Deria (2009)

画像15

 2009年にリリースされたスペインのトラディショナルバンド、L'Ham de Focの看板女性歌姫、Mara Arandaの「Deria」。

 これまで全く聴いた事のない異次元な世界で民族的な音で音楽の世界は広いとつくづく実感するが、音楽の良さと素晴らしさ、彼女の感情や音世界による情景の表現が伝わってくるので素晴らしいアルバム。

 ロックではなく本来の音楽の在り方で、気張った所がなく表現している作品で傑出しているから隙がない。世界観を表したアルバムジャケットの色遣いも素晴らしく、ブックレットも見事で全てに気合いが入った完璧に感動を味わえる作品。

Mara Aranda - Lo Testament (2014)

画像16

 スペインの女性、元L'ham de Focのフロント、Mara Arandaの新作「Lo Testament」。伝承音楽を独自解釈で、しかもソロ名義でもL'ham de Foc的な解釈で仕上げてきたアルバム。地中海風バレンシア地方のアンダルシア系の音の感覚で聴いてるけど、心地良くて元来の音楽の自然さに惹き込まれていく。歌声やバンドの上手さは当たり前で、聞き慣れない楽器とメロディ、そしてアレンジとサウンドによる魅惑が大きくて、ロックと異なる世界だけど響くいて気持ち良い。ここ数年はAl Andalus Projectに参加してアルバム数枚とライブ盤が目立つ活動。

Margo Guryan - Take a Picture (1968)

画像17

 現実から離れた世界を夢見させてくれるアルバムジャケットのアートワーク。アメリカの女性、Margo Guryanの1968年リリースのデビューアルバム「Take a Picture」。

 60年代アメリカソフトロック/サイケの世界では結構なネームヴァリューらしいが、アルバムジャケットの憂いが良く、何気ないショットだけど気になった。サウンドは大抵の人は好む、息抜き風味のポップス。普段聴かないからとても新鮮でリラックスする絶妙な音。

Margo Price - Midwest Farmer's Daugh (2016)

画像18

 イリノイ州のシンガー、Margo Priceのデビューアルバム「Midwest Farmer's Daugh」。もちろん197…ではなく2016年作品です。それくらい古めかしく不思議なサウンド。単純にカントリーシンガーと言えない世界観で、もう33歳で子供も旦那もいるから深みがあり、声が特徴的で聴きやすい生々しいバンドサウンド。

 ジャック・ホワイトのレーベルからリリースされているから、この古い雰囲気と新しいセンスの融合劇にも納得。ドラムの音も生々しく、可愛らしい声のパティ・スミスが歌っているような歌声。3曲目の「Tennessee Song」はZep4の枚目のボンゾのドラム音で、オルガンの音も古臭いし、ギターも超チープで憎めない音。更にこのアルバムジャケットだから、普通は霧のフォークサウンドを想像するが見事にハマった。それでも悪い気がしない良質な音なので良かったが、多様なサウンドがミックスされて時代を超えた仕上げの最先端アルバム。

The Seventh Dawn - Sunrise (1976)

画像19

 1976年リリースのアメリカのThe Seventh Dawnの「Sunrise」。それでフォーク調と言われてもピンと来ない。アメリカのフォークバンドはカントリータッチが入るし、ケルトや英国トラッドフォークも元を正せばアメリカのカントリーに辿り着く。

 Vashti Bunyanの再来と言われるが、素朴なタッチは似た雰囲気があるか。3曲目の「Latecoming」は唐突にピアノとメロトロンを中心とした疾走感溢れるロックで妙にプログレリスナーに好まれる様相。この路線でアルバム作った方が受けた気もするが、素朴なフォークの後にピアノロックが入るからインパクトが強いだけか。その後は元に戻り、憂いのある素朴なピアノで歌われる。さすがに200枚しかプレスされなかった稀少盤だけあって録音が相当ショボいが、「Sunrise」は英国のその系統のバンドのヒケを取らないくらい質素で素朴な名盤。

Solas - The Hour Before Dawn (2000)

画像20

 2000年リリースの「The Hour Before Dawn」は、アメリカ在住のアイルランド系アメリカ人が集まって組んだケルティックバンド、ソラスの作品なので一応アメリカのバンドの作品になるが不思議とケルティックな音。

 本作「The Hour Before Dawn」からボーカリストが変わっているが、基本的にオープニングからゆったりしたケルティックサウンドでフィドルも良い感じに鳴っている。美しい女性の歌声が響き渡り、コーラスワークもしっとりと聴かせる歌が多い。その中でケルティックな旋律だけで構成されるジグが入るから楽しくなり、気分が高揚してきて嬉しくなってくる。

 ギターから始まり男性ボーカルで通す曲もあるけど、パートだけ聴くとアメリカのカントリー的雰囲気も面白い。他の音がアレンジが入るとケルティックと思うけど、ギターとコーラスだけだとカントリーチックで不思議。こういう融合が音楽を世界に渡らせて、より豊かなモノにしている。

Tanzbar - Tanzbar (1978)

画像21

 古楽は古くから伝統的に使われている楽器を用いた音楽で、奏でられる音は地域に密着している=民族音楽で使われる楽器となる。近しい地域ではそれぞれが楽器を持ち寄って交流していたから、ミックスされた音楽もあるし、更にロックも用烏合させた人もいる。音は割と英国の70年代を漁るだけで聴ける。

 ドイツのTanzbarが1978年にリリースしたアルバム「Tanzbar」は古楽満載の作品で、英国のその系統よりもオリジナリティには欠けるけど、その分伝統的な音が聴ける。心地良く雰囲気を味わえて、本人たちは明らかにその世界の方々だから偽物でもない。

 Tanzbarは男性コーラスと女性ボーカルのコーラスワークも聞き所で、基本的にノリが良い曲が多く、聴きやすいから楽しめる。楽器が古いからか音の古さも気にならないし、マイナーながらも味わえる地味なアルバム。

Valravn - Koder på snor (2009)

画像22

 Valravnの「Koder Pa Snor」のジャケットのセンスの素晴らしさが気になり、そこにデンマークのラジカルトラッドバンドと形容詞が付いてて気になった。ジャケットから察するに決して明るくなく毒があるような印象で、呪術系のイメージも湧いた。

 ようやく手に入れて「Koder Pa Snor」を聴くと、期待通りにエキセントリックな音で新たな世界に突入。民族楽器で熱気を奏でるパワフルな女性ボーカルによるヒステリックな世界構築。ここまでポジティブに民族楽器を使ってロック出来るとは全く驚く。楽器も耳慣れていない音ばかりでジャケットを裏切らないインパクト絶大の世界観が凄い。

黒百合姉妹 - 最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶 (1990)

画像23

 合成写真アーティスト、ホリー・ワーバトンのアルバムジャケットはいくつかのバンドで見れる。アルバムジャケットを見て共通性に懐かしさを覚えたので、黒百合姉妹の1990年リリースのデビュー作品「最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶」から。この時点でホリー・ワーバトンの作品の採用はかなり早い。しかも売れるか分からない日本のバンドのデビューアルバムに用いるとはギャンブル。もっともホリー・ワーバトンもこの時点では巨匠ではなかったけど、中身の音も結構なクォリティで作られているから納得したかもしれない。

 JuriとLisaの女性二人が中心のユニットで、今でも活動しているが、28年も前の作品です。超ピュアで透き通った水の中を覗き込んでいる感触で聴ける音楽でロックではなく、メロウキャンドルの拡張版の世界観。ベースが活躍しているから骨格が支えられているけど、日本語の歌詞で世界を出して世界に出ても受け入れられたと思う。ただ、時代が早すぎた。決してポップではないけど、キャッチーさを持たせてもこの世界観に影響はない。一気に聴ける夢のような時間を味わえて、浮遊したままアルバムが終わってしまう。アルバムジャケットの幻想感と音楽が実にマッチしてて異世界にいる自分を味わえる素晴らしい作品。

Juri et Lisa - All Things Are Quite Silent (1994)

画像24

 Juri et Lisaの1994年の作品「All Things Are Quite Silent」。この女性達は日本のグループだが音から聴いたらとてもそうは思えないレベル。湿っぽくて古楽でヨーロッパな雰囲気で面白い不思議感で、クリスタルボイスではない馴染み深い歌声。アルバムジャケットはAll About Eveのジャケ写で知られているホリー・ワーバトン作品。音もメロウキャンドルの影響下にある英国出身と思ってたら、日本発で驚き。全部英語なので、日本で出来る人がいる事に驚いた。フレーズやアレンジ、どの曲の断片を切り取っても全く英国の音。

 1993年頃から世に出ていたが、全く知らなかった。今でもライブがあり、バンドの実名は黒百合姉妹だから本作は別名のプロジェクト的作品のようだ。音は英国や辺境の地で出てくるニュアンスだけど、日本の味があるからか聴きやすい。どれだけ研究してもここまで出来ない世界が出来てるから凄い。古楽はあるけどミックスがロックで、愛らしく歌われて演奏されてる。一つ一つの音が生だから人間の想いが出て絡み合っててまったりと聴ける音。

#音楽レビュー #洋楽 #radicaltrad #フォーク #MaraAranda #LHamDeFoc #Rock #ロック

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪