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フリーランス時代に直面した「知られていないこと」の恐怖と、「知られる」の数値化について

1st Question:あなたは誰ですか?


こんなこと自分で言うのもなんですが、僕の講座(だいたいライティング系)はけっこう集客力があるらしくて、オープンイベントでも、官公庁の研修でも、たいがい満席近くなります。ここ数年、自分でも不思議なくらいの盛況ぶりが続いているわけですが、実際、本気で自分でも不思議だと思っていたので、開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったわけですよ。

「ええ、本日も一杯のお運びでありがとうございます。ところで、この中で、僕のファンだと言う方、書籍の読者だと言う方はどれくらいいますか?」

まあ、「ファン」というのは冗談だとしても、書籍の読者くらいはいるだろうと踏んでいました。だって、そこ、ほとんど知り合いがいない名古屋のイベント会場でしたから。ところが、手を挙げてくれたのは岐阜から顔出しに来てくれていた仕事仲間のデザイナー氏だけでした。ニヤニヤしてました。

とまあ、僕はね、その時点で(実は去年の夏なのですげえ最近)自分はそれなりに売れたと勘違いしている節があったわけですよ。でもまあ、気づきました。というか、もともと気づいていたんですよね。

そもそも、その手のイベントの集客告知文、実はほとんど僕が書いてるんですけど、登壇する前の「コピーライターである僕」は、決してうぬぼれることなく、ちゃんと仕事しているんです。

タイトルやヘッドラインに「森田哲生」なんてキーワード書きません(親からもらった名前をキーワードって……)。だって、「そのキーワードは一般性がないから読者に伝わらないぞ」って僕のゴーストがささやくんですよ。よって、ライティングするとき僕は僕の名前をキーワードリストから外していると。

特にIT系や役所系のセミナーでは「コピーライターが教える」「ウェブライティング」「見出しのつくり方」みたいなフレーズで反応が得られることを経験上知っているので、そっち系で攻めて行くケースが多いわけです。そして毎回、大盛況。はい、分離していた「講師の僕」と「告知職人の僕」がようやく再会したわけです。泣きながら抱き合ってますねえ。痛々しいですねえ。

独立してから12年。会社はもうすぐ7期目。単著有り。講演・講義は年間約20本(今年度)。それでも、僕のことなんて誰も知らないんです。僕は、そのことをうっかり忘れていた。そして思い出すのです。フリーランス時代に、毎日のように僕を責めさいなんでいたあの問いかけを。

「……で、あなたは誰ですか?」


2nd Question:あなたについて知っている人は
世の中に何人いますか?


今を去ること12年前、勢いで会社から逃げ出してなし崩しにフリーランスになった僕は、無職から毛を抜いたくらいの存在でした。とにかくやることがない。だから当然、お金もない。お世辞にも頭がいい方ではない僕でも割と早い段階で気づきましたよね。「これ、なんか突破口見つけないと死ぬヤツだ」って。仕方がないので、とりあえず脳内会議を開いてバカなりにロジカルに考えました。

仕事がない

頼んでくれる人がいない

そもそも僕がフリーランスで
コピー書いてることなんて誰も知らない

じゃあ、永遠に発注はこない

知られないとヤバくね?

超シンプルですが、まあ、その通りです。誰も僕のことなんて知りはしませんし、知ろうともしてません。でも、これって、フリーランスかどうかとか、あんまり関係なくて、「なんかおもしろい仕事こないかなあ」って、口を開けていた会社員時代の自分にだってすっぽり当てはまります。もっと冷酷なことを言えば、制作会社のイチ社員のことなんて、誰もわざわざ興味なんて持ってくれません。でも、なんだか漠然とチャンスを待っていたんですよね。

若かったとは言え、本当に愚かだと思いますよ。だってこれ、広告とかプロモーションの基本中の基本というか、もっと手前の話しじゃないですか。ラーメン屋をつくったけど看板は一切出さず、店の中も見えない状態にして「ああ、客こねえなあ……」って言ってるようなもんです。つまるところ、プルでもプッシュでもない。「ぷしゅー」みたいなヤツでしょ。そんな状況の馬鹿者なんて誰も見つけてくれないじゃないですか。

そんなこんなで食い詰めかけた僕は、400枚刷った名刺を持ってとりあえず家の外へ出かけることにしました。家にいても状況が変わらないと気づいたからです。このことについては褒めてあげたいですね。

で、隙あらば名刺を配りまくることにしました。まあ、誰しもが好意的なわけではないですが、そもそも職業人口が少ないコピーライターという肩書きは、それなりに興味を引くこともあって「どんなお仕事しているんですか?」なんて聞いてくださる方もちらほらいた。こちとら命に近いモノもかかっている状態ですし、幸いにも人としゃべることが好きだったので、とりあえず、一生懸命自己紹介をしました。しかも、その都度、相手のニーズやポジションを考えて、リアルタイムに編集しながらの自己紹介です。やればやるほど、言葉を重ねることになり、自分の中でも自分がやるべき仕事や、ニーズのある仕事が見えてきて、整理がつきつきめました。今思えば、重要なマーケティング期間でもあったように思います。

そして独立後約1年で400枚の名刺を配りきりました。つまり、全部ではないでしょうけど、200〜300回くらいは自己紹介をしたことになります。達成感とともに、ちょっと気が遠くなりました。これだけやって300人か……と。

300人に知られる労力。そして300人に知られることで得られる仕事の量……ぶっちゃけ、全然割に合うモノだとは思えませんでした。まあ、当時の僕は認知度が累積していくことで機会と利益を生むっていう超重要な仕組みを知らないだけなんですけどね。そして、次の問いかけとぶち当たるわけですよ。

「あなたについて知っている人は世の中に何人いますか?」


Answer:頭の中で“コインの音”が鳴る瞬間をつくる


一番の問題点は、僕の中が意識的に「名刺を配る相手」を選ぶようになっていたということでした。もっと詳しく書くなら、「仕事をくれそうな人にだけ効率よく知られればOK!」みたいな感じのスタンスになっていたんですよね。

その問題点に気づかされたのは、AR三兄弟の長男にして、“通りすがりの天才”川田十夢さんとの出会いです。ご存じの方も多いと思いますが、十夢さんがはじめてAR三兄弟名義でイベントを行ったときから、縁あって行動を共にすることが多かったんですよね。(そのあたりについてはこちらの過去記事に詳しく書いているので、興味があれば)

下北沢のライブハウスからはじまり、大きなイベント会場、雑誌、大学、テレビ、映画館……どんどんとでかい舞台へと進んでいく十夢さんを横目に見て気づきました。あ、この人、「仕事をくれそうな人にだけ効率よく知られればOK!」みたいな感覚では動いてないわ……と。

そもそも、僕ごときが「仕事をくれそうな人にだけ効率よく知られればOK!」なんて考えて動いたところで、そもそも「くれそう」の精度がそんなに高いわけないんですよ。この時点から僕の課題と意識はガラッと変わりました。

仕事をくれそうな人にだけ効率よく知られればOK!

世の中でひとりでも多く、
自分の「顔」と「名前」と
「屋号」と「できること」を知っている人を増やせ!

という指標ができた。だから、露出できる場所と機会があれば、バカみたいに顔を出した。そしてとにかく自分の顔と名前と屋号とできることについて知ってもらえるようにプレゼンしまくった。それが企業の経営者でも、デザイナーさんでも、学生さんでも関係なく、自分を知ってくれた人が増えたら成功。増えた瞬間、スーパーマリオの“コインの音”がチャリーンと頭の中に響いてポイントが貯まっていく……という自己暗示をかけるようになりました。


コインが鳴る方へ進むと、
仕事と仲間がどんどん広がっていった


それがある種の指標になってからは、いろいろなことに、戦略性を持って挑戦するようになりました。その頃僕は、定期的なイベントを主催していましたが、そこの集客がだいたい1回で40〜50人で年間2〜3回やります。後はけっこうなキャパのセミナーに登壇したりする機会もつくりました。すると、僕の頭の中では、売り上げやギャラの採算性よりも先にこんな数式が浮かび上がるわけです。

<イベント>
40人→うち約半分がリピーター
 →20人×年間3回=60人に知ってもらえる!(チャリーン)

<セミナー>
キャパ100人+ネット配信500人=600人だよ!(チャリーン)

まあ、そんな切実な動機でいろんなことをしているウチに、仕事は増え、仲間も増え、僕のフリーランス生活は徐々に安定していきました。


Last Question:もう一度聞くけど、
あなたのことを知ってる人は何人いますか?


そんなこんなで話は冒頭のセミナーの行に戻ります。僕はこれまでだいたい100回くらいはセミナーや講義やイベントに登壇・出演しています。

講師歴は10年くらいなので年数で割るとたいしたことはないんですが、仮に平均で40名くらいの受講者がいたとします。そうするとざっくり4000人に対してしゃべってきたことになります。しかも自己紹介付きです。まあ、これは10年やってる中での数字なので、僕のことを忘れてしまった人もいるでしょう。認知には鮮度もあるってことですね。

で、3年前に書籍を出しました。これの部数は電子書籍含めて……あ、この数字は伏せていいですか。重版してないくらいのものです(涙)。

あとは実務で月に3件くらいの新規お問い合わせがあるので、年間で36社くらいとの接点が増えていきます。1社平均2人くらいと名刺交換しますので、年間72人との、仕事を主体としたコミュニケーションが生まれます。このペースに入って5年くらいですかね。つまり、360人くらいと、わりと太い接点が持てたと言えなくもないですね。

あとあんまり当てにはなりませんけど、SNSでのフォロアーとかを勘案して超ざっくりと計算して、認知の深さにグラデはあるでしょうけど……うーん。8000人くらい?……が、僕の認知度ってことになります。んん?なるのか?そもそも多いのか?少ないのか?

あ、でも、先日発表になった、八王子市のブランドスローガンのコピーライターを担当したことで、緩やかに57万都市で周知されつつあるので、もうちょっと増える……かな。

いずれにしても、これが「ファンの方いますか?」→「シーン……」という憂き目に遭う、決して有名とは言いがたいおっさんの認知レベルです。(ざっくりとは言えはじめてこの数字と向き合ってみて、逆に自分のことがよくわからなくなってきました。またパンドラの箱を無意味に開けた気がします)

ただ、一方で、このざっくり8000人という数字は、今の仕事の入り方や、声をかけてもらえる頻度や精度を鑑みるに、そんなに違和感がなく、何より12年前の「知られないと死ぬ」という悲壮感や絶望感は残っていません。

ということで、嫌われる気もしますけど、最後に敢えて聞きますよ。
「今、やりたいことがあって、でも、それがなかなか実現しない」とか、「自分には実力があるはずなのに、気づいてもらえない」とか、いろいろな壁にぶち当たっているボーイ&ガールたちに。

「もう一度聞くけど、あなたのことを知ってる人は何人いるの?」と。

知らせないと、知られることはない。
知られてないと、誰も動かない。
知っている人はひとりでも多い方が、実現の可能性は高まる。

これだけはかなり確かなことだと思います。僕もまだまだがんばらないと、この先はないし、すぐ後ろから「お前のことなんて誰も知らないぞお化け」が追いかけてきて、また飲み込まれてしまう……みたいな恐怖を抱えながら生きてます。

目立つことが正義ではないし、誰もが有名人やインフルエンサーを目指すべきだとは思いません。ただ、思うようにやりたいことが実現できていないのなら、僕と同じく「パンドラの箱」を開けて、数字と向き合ってみるってのも手だと思います。

なんだか超長くなってしましたが、今回はこんな感じで。

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ありがたやー
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コピーライター事務所でおなじみかもしれない株式会社Rockakuの社長やってます。

コメント1件

勉強になりました。
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