見出し画像

インボイス制度とフリーランスの行方と失われてしまうかも知れない何かについて

先に断っておきますが、この記事の内容は、専門家ではない「元フリーランス」である僕の偏った主観がいろいろ混ざってますので、制度の解釈とかちょっとズレてるかもしれません。疑わしいと思う人は、ちゃんと専門家に確認してくださいね。あと、指摘いただいたら調べて素直に直します!

はじめに

先日 (2019年9月下旬)、Twitterにざーっと書いたスレッドに対して意外なほど反響があったことと、一部、僕が誤解を招く表現をしていたこともあって、改めてnoteでインボイス制度に対する僕の見解をまとめてみたいと思います。

さて、ざっくりですが、最初に僕の視座と立場を明らかにするために、少しだけ僕の話を書きます。僕は2007年に独立してワンオペフリーランス(そんな言葉はないんだけど)を約4年やって、その後、スタッフを雇ってもう1年やってから法人化してる人です。ざっと独立13年目で会社が8期目かな。あ、職業はコピーライターです。

「お前、インボイス制度のど真ん中の当事者じゃないじゃんか」とお思いのあなた!そんなこたあないんですよ。なぜかと言えば、僕もフリーランスの方にお仕事をお願いしたりしますんでね。支払う側に関係大ありなんです。でもまあ、これを読んでくださる人の中には、バリバリのフリーランスもいれば、これから独立するか考え中なんて人もいるでしょうから、まずは基本中の基本からやっていきたいと思います。


まずは消費税の基本をさらっとおさらい

会社勤めの方は経理関係の仕事したりしてないとあんまり知る機会がないかも知れませんが、これまで年商1000万円以下の個人事業者は請求上では消費税を請求できて、かつ、納税する必要はないというささやかな特典がありました。このような事業者を「免税事業者」と呼びます。

例えば年商700万円で経費200万円だったら+8%で756万円請求できて、8%分は利益にできます。こう書くとズルいっぽい感じありますが、これが今までのルールでしたし、これが多くの人の創業期や小商いを支えてきたという側面はあったと思います。僕も独立後の数年間は本当に助かってましたよ。今思えばいい時代でしたねえ(遠い目)。

あ、でもまてよ。たしか、「お前は納税しないんだから消費税分は請求するな」とかいうクライアントもいたよな……そういう相手がもしいたら、ちゃんと請求できることを伝えた方が良いと思います。


そして本題のインボイス制度をざっくり切ります

さて、「免税事業者」についてざっくりとはご理解いただけたと思うので、本題のインボイス制度について説明していきましょうか。

当然ながらご存じの方も多いと思いますが、インボイス制度というのは、2023年からスタートする新しい制度。先ほどの「免税事業者」が享受できていたささやかな特典=消費税免税が実質消滅する仕組みです。

この「実質消滅」というニュアンスが厄介で、簡単に言うと「免税事業者」を止めて納税事業者にならないと、それまで普通にやれてた企業との取引がほぼ無理になります。(因みに個人向けに物を売ったりする小売りは別ルールがあるので、詳しくは専門家に聞いてね★)

はい!ようやくこのあたりから「インボイス制度って、なんか声に関する決めごとなの?」とか思っていた人も、ちょっと怖くなってきたでしょ?

超ざっくり説明すると、2023年10月からは「あっしは消費税を納税してまっせ」という証である番号をもらって「適格請求書発行事業者」としてその番号を記載した請求書を発行しなければなりません。

もしも、その番号がない=「適格請求書ではない請求書」を受領して、消費税を納めていない免税事業者へそのまんまお金を払うと、取引先の企業が罰則を受けるというルールが爆誕します。例えば去年独立して年商500万円くらい。これからバリバリがんばるで!みたいなフリーランスの人が急に取引先を失うってことになりかねないわけです。


インボイス制度がはじまるとどんなことになるのか?
発注企業側の目線で考えてみたらちょっと憂鬱になった

ここまでの話を理解したとき、まず最初にイメージしたのは、「自分がフリーランスの人へ発注するとき、どんなことをするのか?」でした。

経理処理上、取引をはじめる際に「あなたは免税事業者ですか?課税事業者ですか?」という確認が必要になるわけです。でも、これって、ある種、「あなたは年商1000万以上ですか?以下ですか?」と聞くのと近しい行為ですよね。しかも相手は答えざるを得ない。

はやくも「なんかなあ……」となりました。もちろん年商1000万円以下でも課税事業者を選択する道はあるわけですが、これって、同時にいろいろな問題をはらんでくるわけですよ。正直、元フリーランスの僕は想像するだけで脂汗が出て、憂鬱な気持ちになってきました。

僕が消費税を納税する課税事業者になったのは法人化後です。そのときすでに経理は専門の顧問がいたのでなんとかなってました。でも、年商1000万円以下で、「さあ、これからがんばるぞ!」な頃って、確定申告で税理士さんにお金を出すのもキツかったりするわけじゃないですか。にもかかわらずインボイス制度の導入で、経理処理の労力と難易度はかなり上がっちゃうと思うんですよね。(まあ、僕が経理仕事が大の苦手だからそう思うだけかも知れませんけど)

つまり、年商1000万円以下のフリーランスは、そのまま免税事業者として取引先を減らすか、年商1000万円以下でもその中から消費税10%を納税して、かつ、税務処理もがんばるか、プロに依頼する費用を捻出しなきゃならないわけです。

「じゃあどうすりゃいいんだよ!」ってことになりますが、これはもう、年商1000万円以上を稼いで免税事業者ゾーンから脱却するのが一番手っ取り早いということになり、「フリーランスのみんな!強く生きて………!」と願わざるを得ないわけですが、ここで、僕にはちょっと気持ち悪い違和感みたいなものが残りました。


インボイス制度は小商いを殺す仕組みなんじゃないか説

違和感というか、うーん、これは危機感に近いものですかね。つまり、「インボイスは小商いを殺すシステム」なんじゃね?ってことなんですよ。

経験上、ひとりフリーランスで年商1000万円って、時間と実力さえあればそんなに難しくはないラインです。とはいえ誰もが到達できる領域じゃないし、それなりにハードな道だとも思います。

年商1000万円=月商80〜90万円です。月20日で割れば日商4〜4.5万円です。別に超ハードルが高いとは言いませんが、それなりのスキルが求められる数字であることは間違いないでしょう。

つまり、「インボイスで死にたくなければ1000万円以上稼いで消費税を納めろ&税務を外注に出せるだけのお金も稼げ!」って話になるんですけど、フリーランスになる目的が年商1000万円稼ぐことじゃない人だっているわけですよ。副業から細々とスタートしたい人だっている。拡大よりも自分の生活やペースを大事にしたい人だっている。そんな「小商い」の継続が困難になる。困難と言い切らないまでも、インボイス制度によってハードルは上がると思うんですよね。

それは面白くないし、多様性もなくなる。さらに言えば、いずれは大商いを目指す人のスタートも困難になると。これによって失われる機会って、決して小さくないと思うんですよね。なんかなあ。しんどい世界だなあ。僕みたいな社会から放り出された人間でも、努力次第でどうにか生きていける世界があったのに、かなり狭まるよなあ……うーん。


インボイス制度導入の先に勝手に描く未来予想図Ⅰ

で、ここからは僕の勝手な予測ですが「小規模フリーランスによる合弁法人」が増えるんじゃないか………と思っています。年商400万円クラスでマイペースにやり続けたい人たちが3人集まって年商1200万円の会社をつくって小商いを続けるようなスタイルです。

ただ、このスタイルにはいつくかの課題が残されます。まず、利益の分配です。法人化すると、社会保険に加入する必要があり、そうなると毎月の売上げをじゃらじゃらそのまま分配するのはけっこう面倒なことになります。

また、誰かひとりは必ずその会社の役員になる必要があるため、給与ではなく役員報酬を受け取ることになるんですよね。で、この役員報酬ってのは1回決めると1年間変更不可。しかも会社が儲からずその役員に支払えなかったとしても所得税はかかるという鬼ルールがついてます。

かつ、複数のフリーランスが集まって、ひとつの口座にお金を集約するってけっこう大変で、しかも利益も読みにくい。だから、「合弁フリーランス法人」で小商いを続けるにしも、システムと経営上の課題がけっこうあります。

こうしたフリーランス向けの会計エージェントも出てくるような気はするんですけど、そもそもエージェント会社は収入も支出もバラバラのフリーランスを従業員化して、各自の売上げを「給与」として支払わないと行けないはずで(ちがってたらごめんなさい)、そうなったら社保とかいろいろな面で相当煩雑な仕事が増えちゃうわけですよ。うーん。ぶっちゃけ、商売としてのうま味があると思えないなあと。

独立後も独立前の会社に机を置いたまま、会計上の援助を受けるというスタイルもありそうですが、こうなってくると独立する意味とかよくわからなくなるし、フリーランスの最大の価値であるはずの「フリー」な動きとマインドはかなりスポイルされかねない。辞めた会社の働き方改革の礎(=残業対策要員)にされてしまうなんてことも容易に想像できますよね。

つまり、その先の決定的な予想は全然できていないんですけど、とにかく、2023年って、けっこうすぐなんで、早めに予習と準備をした方がいいと思いますよ。まじで。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?