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#小説
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_02
第2話/2007年4月初旬:同類相哀れむ。
時を同じくして、職を失って倦んだ生活を送っている男がいた。我が麻布邸の元住人であり、フォトグラファーであり、ハタチからのつきあいになる犬養だ。
「てっちゃん、会社辞めたんだって?」
ある日の午後、そんな連絡があって、その日の夜には、ウチの茶の間にいた。
「奥さんの目がさ、冷ややかでね……」
犬養は情けない表情で、コタツにあたっていた。
彼は約2
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_05
第5話/2007年4月中旬:笑われて、笑う。
「すぐに過去の仕事をまとめて、明日、原宿のN事務所に来い」
犬養を怒鳴ってから3日後。あの勢いは、とうに消え失せ、K氏の命令口調に逆らう力はなかった。
しかし、正直、今度ばかりは本当に、かなり、すごく嫌だった。気が重い。いや、もう、あれだ。全身全霊が重い。K氏の言う「原宿のN事務所」とは、K氏が仕事場として間借りしているウェブデザイン事務所のこ
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_12
■第12話/返した借金の話と、返し続けるアレの話。
さて、前回のラジオ出演を記念した特別版から随分と時間が経ってしまったけれど、また、ゆるりとえんぴつをころがしていきたいと思う。
久しぶりと言うことで、ちょっと書きにくい話を書いてみよう。それはズバリ銭の話。もっと言えば「借金」の話だ。
2016年現在、僕が代表を務める株式会社Rockakuは公な負債が1円もない優良企業である。いやま
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_13
■第13話/地を這う営業に翼は要らぬ。か。
時間軸で言えば2008年序盤。独立して半年くらい経った頃だろうか。早くもRockakuは手詰まりになりかけていた。独立と同時に数本のWEBや会社案内の案件を得たものの、こんな無名以下のコピーライターにポンポン仕事がくるわけもなく、かつ、最初に受注した仕事の入金など遙か先の話であるという事実が目の前に立ちはだかっていた。
広告やWEB制作におけ