【日記】隣人の焼き鳥

 今日は髪を切りに行きました。一人で歩いて行きました。「どうしましょう」と問われたので「1センチ」と答えました。それから鋏を動かす音だけが聞こえ、何も問われることはありませんでした。店内は騒々しいロックミュージックが流れていて、力強いビートに合わせて小気味よく鋏が動いているようでした。他にも数人のお客さんがいて、それぞれに頭をさらしている様子でした。隣のお客さんと鋏を持った女の人が会話をする声が耳に入ってきました。こちらは「1センチ」で話は終わったのに、すぐ隣ではいくらでも話すことがあるようでした。その気になれば話はいくらでもあるようでした。これが格差社会でした。


 チョキチョキと消えていく髪の先から少し陽気な話し声が聞こえていました。どうやらそれはぬるい焼き鳥の話のようでした。ぬるい焼き鳥が出てきたので熱くしてくれと注文した話のようでした。ぬるい焼き鳥は嫌だと思いました。二度は行かなかったけれど、ぬるい焼き鳥の店はすぐに閉店したという話でした。そこは町のダーク・スポットでどんな店を出してもまもなく閉店してしまうのだとか……。「こんな感じで」ぬるい焼き鳥の話が終わりしばらくして耳のすぐ近くで女の人の声が聞こえました。「はい!」
 だいたいいつもこんな感じでした。少し涼しくなった頭で新しい日記を書こうと決めました。

#こんな感じ #日記 #焼き鳥 #エッセイ #格差社会

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