ビンゴ&温泉

 ビンゴ大会でトップ10に入ったので景品を受け取ることになった。「名前が書いてあるから」迷わなくていいと同じトップ10の人が親切に教えてくれた。あの女の人、適当に持って行ったみたい。僕は追いかけて教えようとしたが、そこまですることはないと止められた。景品はどれも同じでフルーツと10キロの米なのだ。こんなの徒歩で持ち帰るのは大変だ、雨だったらとても無理だと誰かが文句を言った。もしも雨なら来てもいなかったと僕は思った。
 米を背負って家路についた。バスの3階から友達が指を立ててエールをくれたので、僕も拳を立ててそれに応えた。声などは届かなくても、不思議とその一瞬の気配を感じ取ることができた。

 昔通った小学校に立ち寄って、先生にみかんをあげようか。思いついたら学校の階段を上がっていた。少しでも荷物を軽くしたかったのだ。ピアノの音が聞こえてくる。今は授業の途中なのか。教室のドアは開いていた。先生のえりあしが見えた。みかんを持って近づく前に、先生は振り返ることもなく手を止めた。その瞬間、音楽が止んで子供が泣き始めた。(やっぱり駄目だ)みかんなんかで先生の邪魔はできない。僕はみかんを鞄に詰めて急いで引き返した。階段を駆け下りる途中でピアノの演奏が聞こえ始めた。


「おはようございます」

 軽く挨拶して入ったが誰も応えなかった。とっくに授業は始まっていたのだ。前に進んでいくと席はピラミッド状になっていて、最前列の2つの椅子は空いていた。近づきかけたところで怖くなって引き返す。皆から離れたサイドテーブルに椅子を持ってきて臨時の席を作った。遅れてきた僕にはちょうどいい。先生は不在で自動音声が流れる静かな授業だった。
 休み時間は菌を落とすための入浴タイムになっていた。人気の第一温泉を避けて、僕は第二温泉に行った。そこはまるで不人気で客は僕一人だけだった。持参したみかんを1つはそのまま、1つは温みかんにして食べることにした。近くで鳥の鳴き声が聞こえる。音声ではない。自然な声だった。野鳥だろうか。



#夢 #みかん #温泉 #ぼくの好きな先生


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