フードコートの眠り

 意味を失った言葉の群は蟻の行進に等しくなった。君は向き合うことをやめて顔を上げる。壁にある時計を見ると時間は少しも進んでいない。自身が夢中の状態にあるならば、時間は速く過ぎ去るはずだ。まだ何も始まっていない。コーヒーはまだ十分に残っているのに、口をつけると驚くほどそれは冷たい。カップの中の時間とノートの中の時間がずれ始めていた。君はもう一度視線を落とし、無意味を運ぶ蟻の行進を解体して一連の流れを導き出そうとする。黒は解かれてぼんやりと漂う雲に形を変え始める。集まってみたり、広がってみたり、落ち着かない雲だ。切れ目から現れたペンの先から滴り落ちる音が聞こえた。もう一度あきらめて君は顔を上げる。時計は時間を刻むことを放棄しているようだ。時計ではない。あれは壁に描かれた絵に過ぎないと君は思う。麺処を飾るどんぶり。針を思わせる箸が、訪れる人を待っている。

割れそうな
他者の賑わい
シャワーあび
フードコートで
眠る若者



#創作 #思索 #錯覚 #コーヒー

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