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  • 小説 バイザーフォース【前編】

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小説 バイザーフォース【前編】 目次

目次 プロローグ・「RAVEN」の叛乱 第一章・二週間後、さらに八ヶ月後の朝 第二章・白銀の巨人(1) 第二章・白銀の巨人(2) 第二章・白銀の巨人(3) 第二章・白銀の巨人(4)

    • 第二章・白銀の巨人(3)

      ★  二重になった塀の周辺に、保安部隊別班は橋頭堡を確保した。  付近の道路の下からは防御用の各種装備がせり出してきて展開している。  その中には五〇口径の機銃や二〇ミリバルカン砲もあれば、「バイザー」たちの進路障害になるように設定されたコンクリートの障壁、さらにセラミックと鋼鉄を合わせた複合装甲の壁も含まれる。  半円を描くように障壁と壁は展開されている。高さは二〇メートル。  これまでのデータから推測すれば、さすがに「バイザー」たちもひと息に飛び越えるには難しい高さだ

      • 第二章・白銀の巨人(2)

        ★ 「これは……また」  省吾はその場所を高校生のころ、新しいベッドタウンになると、テレビ番組で何度か紹介されているのを見たことがある。  ところが、今目の前に広がるのはベッドタウン以前になにもなく、駅前コンビニが「夜九時閉店」の看板を堂々と出している「辺境」そのものだった。 「エライ所に飛ばされたなぁ」  思わず呟く。  何しろ、造成工事のまっただ中……ではなく、途中で放棄されたらしい建物の基礎部分が空き地化したものが、延々と広がる風景である。 バス停に行きながらスマホを

        • 第二章・白銀の巨人(4)

          ★  真っ昼間、障壁をぶち破り塀を乗り越え「バイザー」の集団が殺到してきた。  防御壁も銃器による攻撃も、全く無駄のない動きで避け、蹂躙していく。  セラミックの防御盾と、アーマースーツでなければ、一瞬で全滅していただろう。 「焦るな! 怖れるな! 狙い続けろ!」  猟子も叫びながら武器を振るう。 (予想では、接触後、我々が壊滅するまで三分、だったな)  まだ一分しか経過していないが、部下は全体の一割を失おうとしている。  敵の射撃システムが驚く程早くこちらの動きに対応して

        小説 バイザーフォース【前編】 目次

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        • 小説 バイザーフォース【前編】
          7本

        記事

          第二章・白銀の巨人(1)

          ★ 「RAVEN」を利用したスマートシティ計画と、それに連なる全ての工事は、その叛乱により、あまりにも悲劇的な幕切れとなった。  日本において、それはスマートシティ計画のために大量に、そして網の目のように張り巡らされた地下通路が工事途中で放棄される、という形で現れた。  「RAVEN」自身が建てた計画により、この地下通路を無人車両と流通用ドローンが走り、あるいは飛んでいくという計画だったのである。  小さなものは早々に埋め立てられたが、大きなものは簡単にはいかず、警備員を常

          第二章・白銀の巨人(1)

          第一章・二週間後、さらに八ヶ月後の朝

          ★  地下道にライトが設置され、その人型兵器を照らし出した。  白銀の装甲はライトを照り返し、暗い、中止された地下鉄工事の現場を照らし出す。  工事現場には、数十名の男女が蠢いていた。  人の吐く息が白い。  全員の顔に緊張があった。  その殆どが「フジサキ重工(株)」の縫い取りのある上着を着用している。  ヘルメットを着用しているのはともかく、中にあからさまに体型が違い、その上着がお仕着せだと判る男たちが、二十ミリ機関銃を構えている、というのが異様だった。 「まるで、白銀

          第一章・二週間後、さらに八ヶ月後の朝

          プロローグ・「RAVEN」の叛乱

          「「RAVEN」は世界を幸せにする。私は完成を見届けられないが、その未来が来ると信じている」  H・ユウトの日記より ★  津島省吾がまだ陸上自衛隊の中にいたころ、世界は長い長い混迷と緊張から緩和への転換期をようやく迎え、その次に広がるであろう「新たな未来」をようやく夢想する余裕をもつようになっていた。  西暦二〇四〇年代初頭。  そのころ、まだ「バイザー」の呼称はなく、彼等は「ロボット」あるいは「人型無人機」、日本では「ヒトガタ」と呼ばれていた。  二月の寒い夜に、その

          プロローグ・「RAVEN」の叛乱