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68年〜71年のスティービー・ワンダーが最高に良い(その3)

前回、前々回に引き続き、68年〜71年のスティービー・ワンダーが最高!ということでその続きを書きたいと思います。

今回ご紹介するのは1970年リリースの『Signed Sealed & Delivered』。今までの作品でも曲単位でのプロデュース、作曲に関わることはあったものの、このアルバムからスティービーはモータウンレコーズからプロデュース件を勝ち取り、完全セルフプロデュースをはじめます。

そしてもうひとつの出来事は、その後初めの奥さんとなるシリータ・ライトとの出逢い。当時、モータウンのバックボーカルなどのセッションをこなしつつ、シンガーソングライターとしての道を探っていたシリータは、スティービーと出逢い、1970年、スピナーズの「It’s A Shame」(1970)を共作。その年にスティービーと結婚し、その後、共作活動はしばらく続くことになり、このアルバムのタイトル曲もシリータと共作した作品です。

そういうこともあり、今までのご紹介したアルバムとは少し毛色が違ってきており、今まで以上にスティービーのオリジナリティが現れてきている作品と言えます。

とは言ってもまだモータウンサウンドを基調としており、ファンクブラザースの躍動感溢れる演奏も健在です。それでは内容にいきたいと思います。

Signed Sealed & Delivered(1970)

まずは冒頭の「Never Had A Dream Come True」。非常に美しいメロディーライン、広がりのあるアレンジに引き込まれますが、曲調的にはそれまでのモータウンサウンドにある華やかで明るい感じはなく、どこかセンチメンタルな要素さえ感じられる1曲。

普通1曲目には持ってこないであろうタイプのこの曲を敢えて選んだのはどんな意図があってか、色々と想像が膨らみます。

2曲目はビートルズのカバー「We Can Work It Out」。当時スティービー・ワンダーはポール・マッカートニーに憧れていて、彼のようなソングライターを目指していたようです。その想いは1982年に2人がデュエットして大ヒットする「Ebony and Ivory」へと繋がるわけですが、この当時から既にラブコールは送られていたようです。

印象的なクラビネットのイントロ、その後曲全編をクラビネットが支配する斬新なアレンジ、スティービー流のファンクナンバーに仕上がっています。これにはポールもきっと驚いはず。その後の「Superstision」などのファンク路線へと繋がるナイスカバー。

そして、シリータと共作した「Signed Sealed & Delivered」。バックビートにタンバリンのアクセント、コールアンドレスポンスのコーラスなど、典型的なモータウンサウンドでありながら、新しい時代の空気が感じられるこの時期ならではの名曲です。この曲を『心の詩』以降のシンセサウンドになってから発表していたとしたらまた全然違うものになっていたのだろうなあと、こちらも想像が膨らみます。

「Don’t Wonder Why」はスティービーが作曲では絡んでいない曲ですが、このアルバムの隠れた名曲です。どこまでも切ないスティービーの歌、バックコーラス、ストリングスが幻想的な雰囲気を醸し出しています。

この曲、レアグルーヴシーンでも非常に人気の高いアリス・クラークの名盤『Alice Clark』でもカバーされているので、こちらもぜひ。こちらもアリスの瑞々しいボーカルが堪りません。

「Joy」もオーソドックスなモータウンサウンドを残しつつも、クラビやエレクトリックシタールを取り入れるなど新しい試みも取り入れており、やはり今までとは一味違ったサウンド。エイミー・ワインハウスなんかが歌ったらとても合いそうな曲。(エイミーがこの当時のサウンドを取り入れているので当たり前ではありますが)

今回は1970年のアルバム『Signed Sealed & Delivered』を取り上げてみました。スティービーにとってターニングポイントの1つとなる重要な作品ですので、ぜひ聴いてみてください。

いよいよ次回は本シリーズ最終回のアルバムとなります。

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