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Off The Wall以前のマイケル・ジャクソン『Music & Me』

Off The Wall以前のマイケルというと、ジャクソン5?と思われるかもしれませんが、マイケルのソロ作品は4タイトルほどリリースされています。そのどれもが素晴らしい作品。

特に好きなのが今回ご紹介する73年のソロ3作品目『Music&Me』。ギターを抱えてアンニュイな表情を見せるマイケル。サウンドもこのジャケットが物語るようにどこか切ないムードが漂っています。

当然この時期はジャクソン5も精力的に活動していて、マイケルのソロとどんな違いがあるかということになるかと思いますが、かなり違います。

ジャクソン5は所謂バブルガムソウルと呼ばれる、ポップで誰でも口ずさめるメロディー、キャッチーなコーラス、子供から大人までが楽しめるサウンドが軸となっていますが、一方、マイケルのソロにおいてはバブルガムソウル的な作品は皆無。

もちろん、ジャクソン5にも「Never Can Say Good-bye」や「I’ll Be There」に代表されるような大人向けの曲もあるのですが、この時期のソロではほぼこれらのような曲が全体を占めています。

ジャクソン5が陽とするならば、この時期のソロは陰であり、派手さはないものの、じっくりと大人なのソウルを歌うマイケルを聴くことができます。

中身をご紹介したいと思います。

With A Child’s Heart(1973)

まだ声変わりするマイケル。あまりヒットは出なかったアルバムですが捨て曲なしで、本格的なソウルを歌い上げるマイケルが楽しめます。

プロデューサーは複数起用されていて、ジャクソン5でもお馴染みのフレディ・ペレン、ハル・デイヴィス。そしてフォンス・ミゼルの名も見られます。フォンス・ミゼルはジャズ畑の人で、70年代には兄弟のラリー・ミゼルと共にスカイハイ・プロダクションを設立し、ドナルド・バードやボビー・ハンフリーなどのジャズミュージシャンのアルバムをプロデュースし、ソウルのミュージシャンとコラボさせることで良質なジャズファンクアルバムを世に送り出した人です。

そんな布陣の影響もあり、アルバム全体を通し、洗練されたクールな印象。そして、随所にジャズファンク的な要素を感じるところもあります。

1曲目の「With A Child’s Heart」。スティービー・ワンダーも1966年のアルバム『UP Tight』の中でも歌っていますが、このマイケルのバージョンも素晴らしく、若くしてスターとなってしまったマイケルの感情の揺らぎのようなものも感じられます。

そして2曲目の「Up Again」。マイケルの歌がひたすらに切ない…。この時まだマイケル14歳、既にこんな表現が出来るってやはり凄いですね。

エレピとクラビによる印象的なイントロで始まる「All The Things You Are」。全体的に静かな雰囲気のあるこのアルバムの中ではアップテンポな曲でありますが、ひたすらに明るいわけではなく、どこか陰のある印象。そこが良いのですが。サウンド的もジャズファンク的な要素も感じられるクールな仕上がりです。

このアルバムの中で最もポップでキャッチーと言える「Johnny Raven」。

星野源がとてもマイケルが好きという話は聞いたことがありますが、この曲、星野源っぽさをすごく感じるのは私だけでしょうか(笑)当然、この頃のマイケルにも影響受けていても全然不思議ではありませんね^^

いずれにせよ、メロディーといい曲の構成といい、素晴らしい曲ということに違いありません。

リオン・ウェア作曲の「Euphoria」。リオン・ウェアらしい、メロウながらファンキーな要素を持つ曲。天性のリズム感を持つマイケル、こういう曲も抜群にうまいです。

この時期のモータウンはジェームズ・ジェマーソンを始めとしたファンクブラザーズの面々に加え、デヴィット・T・ウォーカーなど外部のスタジオミュージシャンも取り入れていて、この曲などはデヴィット・Tのファンキーなギターも聴くことが出来ます。

最後に「Music&Me」を聴きながらお別れです♪やはりこの頃のマイケルの歌声は暖かくてどこか切ない、そこが1番の魅力のような気がします。

『Off The Wall』以降のマイケルのアルバムや、ジャクソン5の代表作は聴いたことがあるという方は多いと思いますが、70年代初期のソロ作品もとても良いのでぜひ聴いてみてください。ジャクソン5の「Never Can Say Good-bye」あたりが好きな方には特におすすめです。

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