殺戮のウンカ
ウンカ大量発生~過去10年で最多~
昨年は梅雨前線が長らく日本列島上空に漂っていたことから、ウンカ被害による坪枯れが全国各地で起こりました。
そして今年も異例の速さで梅雨入りを迎えたことから、各自治体は早期の防除を呼び掛けています。
では、そもそもウンカとはどんなものなのでしょうか。
ウンカは分類上「カメムシ目」となっており、この分類にはほかにタガメやアブラムシ、セミなど有名な昆虫も属しています。
国内では越冬できず、春先になると中国大陸から飛来してくるそうですが、わずか5mmほどのこの昆虫が日本の稲を標的にしてはるばる日本海を渡ってくるかと思うと、その執念深さに背筋が凍る思いです。
そしてこれはあまり知られていないことかもしれませんが、ウンカは蚊と肩を並べるほど、数多くの人間を殺してきました。
日本国内で数百万人の命を奪った享保の大飢饉も、人類史上最大の人災である毛沢東時代の中国の大飢饉(推定死者7600万人)も、まさしくウンカにやられたことが直接的な原因とされています。
防除の技術が発達した今でこそ、明日の食糧を確保することに何ら心配をせずに過ごすことができていますが、もし技術が育たぬまま昨年レベルのウンカ発生を迎えていたら、私たちはなす術なくただ神頼みをして飢え死ぬ運命を待つだけだったかもしれません。
つまりコメの安定的な生産、ひいては食い扶持を守ることを考えるうえで、ウンカとどう対峙するかということが一大テーマであるといえます。
そんな悪名高いウンカも実は、そのすべてが押しなべて悪者ではないということが、近年の研究で明らかになりました。
坪枯れを起こすほど稲を吸い尽くすのはトビイロウンカと呼ばれる種が主犯であり、夏ウンカの異名を持つセジロウンカは寧ろ、田んぼの肥やしになるとさえ言われています。
そしてセジロウンカが多いとトビイロウンカが少なくなることまでわかり、このことが今後の防除を考えるうえで非常に大きなポイントになるのではないかと考えています。
とはいえ、都合よくトビイロウンカだけをターゲットとした防除の手法は今のところ存在しません。
ただ、これまで定説とされていたような防除の方法を踏襲するだけでは、トビイロウンカ以外の虫(場合によっては天敵)を死滅し、そのことでトビイロウンカがノーマークとなって暴れまくる皮肉な結末を迎えかねないことも指摘されています。
私たちは少なくとも虫が学習する以上のスピードで技術を学び、活用していかなくてはならないのではないでしょうか。
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