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入社2週間後の面談が早期退職の防止に効果的な理由

1.はじめに:新規事業の立上げと人材充足の取組み


 電気工事を主たる事業とする小規模事業者が、新規事業として管工事を手掛けることに決め、経営革新計画を策定することとしました。同社は、当計画の策定にあたり、商工会経由で派遣された専門家と面談をした結果、新規事業を立上げるためには、人材を充足させる必要性を認識しました。

 そこで、人材を充足させるために、以下の4つのステップを具体化し、計画書に盛り込みました。

ステップ1:既存人材の定着率向上
ステップ2:募集
ステップ3:採用面接
ステップ4:早期退職の防止

 ステップ1からステップ3までの内容は、以下のリンクで解説していますので、今回は「ステップ4:早期退職の防止」に焦点を当て、同社が経営革新計画にどのような早期退職防止策を盛り込んだのかをご紹介します。

2.買い物における認知的不協和

 同社は早期退職防止策として、入社してから2週間後に経営者が面談をすることとし、経営革新計画に盛り込みました。

 これは「認知的不協和」を踏まえたものです。「認知的不協和」は自身の中に、矛盾する2つの認知を抱えることによって生じる、居心地の悪さや不快感を表す心理用語であり、アメリカの心理学者であるレオン・フェスティンガー氏によって提唱されました。

 「認知的不協和」は、自己の思考や行動と矛盾する情報にさらされたとき、その矛盾を解消するための行動をとるという考え方に基づいています。

 例えば、お店では自分に似合うと思い、買ってきた洋服を自宅で見てみたら、どうも失敗した気がする場合、「良い買い物をしたはず」という思いと「今回の買い物は失敗だったのではないか」という矛盾する思いを抱え、不快感を覚えるということです。

「失敗したべが?」

 この不快感を解消するために、今回洋服を買ってきたことは「良い買い物であった」と信じ「失敗だったのではないか」という思いを払拭しようとします。そこで、ネットでその商品の良い口コミを探したり、その商品の紹介サイトを見たりします。

 ただし、口コミを探し、紹介サイトを見て、やっぱり失敗だったと結論づける場合もあります。この場合は返品をしたり、その商品を使わなくなったりするでしょう。

 このことは、入社してきた人材にも当てはまります。

3.入社後の認知的不協和

 応募・面接を経て入社し、実際に働いてみた結果「良い会社に入社することができた」という思いと「今回の入社は失敗だったかもしれない」という思いを抱えることがあります。

 この場合、認知的不協和を解消しようと会社の良い点を見ようとしますが、それが見えないと「今回の入社は失敗だった」と結論づけ、退職に繋がってしまいます。

 そこで、入社後の節目節目で社長や職場リーダーと面談をすることによって、本人の思い違いやコミュニケーションの齟齬によって発生した「入社は失敗だったかもしれない」という思いを払拭することが退職防止に繫がります。

「その退職、ちょっと待った」

4.効果的な面談のポイント

 同社は、面談時の留意点として、以下の内容を経営革新計画に盛り込みました。

(1)傾聴する

 頭の中を空っぽにして相手の話に集中します。社長や職場リーダーが新規スタッフと面談をすると、スタッフの未熟さが目につき、ついついアドバイスをしたくなるものですが、まずは、相手の話をしっかり聴きます。

 心理学者のマタラッツォによる実験では、面接官が志願者の話を頷きながら聞くと、志願者の話す量が平均して1.5倍以上も増加したことがわかっています。

 つまり、頷きや相槌により、相手の信頼度が向上し、コミュニケーションが円滑に進むと言えるでしょう。

(2)承認する

 新規スタッフは、自分の仕事に自信を持てていないことがほとんどです。そこで、具体的な成果や長所を伝えることで、自己肯定感を高め、仕事への誇りや満足感を与えることができます。

 ここでのポイントは、「頑張っていますね」と単に褒めるのではなく、「大きい声で接客ができていますね」、「わからないことはすぐに質問していましたね」など事実を認めること、つまり「上司の解釈に基づく賞賛」ではなく、「部下の行動という事実に基づく承認」をすることです。

(3)適切なタイミングで実施する

 入社2週間後に面談をすることにした同社ですが、その後も、面談の機会を設けることとしました。頻度やタイミングは、本人の状況や職場の環境に合わせて調整します。 多忙を理由にこの面談をしないと、スタッフは「最初は良かったけれど、その後は放っておかれている」といった失望感を抱き、退職してしまうリスクが高まってしまいます。

「より効果的な面談をしたいもの」

5.まとめ

 このように、定期的な面談を通じてスタッフの意見や要望を把握し、適切なサポートを提供することで、働きやすい職場環境を維持することが可能です。これらの取り組みが、早期退職を防止し、最終的には会社全体の成長と発展に繋がるでしょう。

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