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応募者と自社の相性を見極める具体的な採用面接の方法

1.はじめに


 電気工事を主たる事業とする小規模事業者が、新規事業として管工事業を手掛けるために、経営革新計画を策定することとしました。同社は、当計画の策定にあたり、商工会経由で派遣された専門家と面談をした結果、新規事業を立ち上げるために、人材を充足させる必要性を認識しました。

 よって、そのために以下の4つのステップを具体化し、計画書に盛り込みました。

ステップ1:既存人材の定着率向上
ステップ2:募集
ステップ3:採用面接
ステップ4:早期退職の防止

 「ステップ1:既存人材の定着率向上」については、ハーズバーグの動機づけ=衛生理論というモチベーション理論に基づき、既存従業員の職務満足度を高める取組みを盛り込みました。これは、既存従業員の流出を防止しないと、新規従業員を採用しても人材不足が解消されないためです。詳しくは以下のリンクをご覧ください。

 「ステップ2:募集」については、募集媒体に「誰と働くのか(Who)」、「何の仕事をするのか(What)」、「どこで仕事をするのか(Where)」、「なぜ募集をするのか(Why)」、「いつ働けるのか(When)」、「どのように育成するのか(How)」、「いくらで働くのか(How Much)」を訴求することとし、応募者の増加を図りました。詳しくは以下のリンクをご覧ください。

 今回の記事では「ステップ3:採用面接」をテーマに、同社が経営革新計画に記載した採用面接の手法をご紹介します。

2.相性の悪さが早期退職を引き起こす

「相性が悪いと長続きはしないものだっきゃね」

 株式会社リクルートエージェントが、第二新卒(大学卒業後、一度就職したものの、その後2年以内に離職し、再び就職活動を行う若者)6,000人を対象に実施した200問のアンケート調査から、「相性の5軸」を発見しました。

 これは、以下の5項目について、企業と応募者の重視する点が一致していると、離職率が低いというものです。

  1. 感情を重視するか/理屈を重視するか:難しい課題に直面した時、感情で判断するか、論理的に分析して判断するか。

  2. 行動を重視するか/思考を重視するか:仕事に取り組む際、すぐに動き出すか、じっくり検討してから行動に移すか。

  3. 協調を重視するか/競争を重視するか:周りと協力して目標を達成するか、自分が一番になることを目指すか。

  4. 革新を重視するか/伝統を重視するか:新しいことに挑戦するか、昔からの慣れたやり方を好むか。

  5. スピードを重視するか/緻密さを重視するか:効果や効率を重視して早く終わらせるか、高品質を重視して細部まで丁寧に確認するか。

 自社が上記相性の5軸のどちらを重視するかを明確にするとともに、面接においてこれら5軸の見極めを意識することで、応募者と企業の価値観の一致度を判断しやすくなります。

 そこで採用面接の際には、これらの項目に関連する質問を投げかけることで、見極めが期待できます。以下で質問例を挙げてみます。

3.面接で相性を見極めるための質問例

「面接で相性を見極めるっ」

(1)感情/理屈を見極める質問例

 「親友が100万円の借金を申し込んできました。あなたは80万円の貯金しかありませんが、クレジットカードで20万円を追加調達できます。100万円を貸しますか?」

 解答が「クレジットカードを使って貸す」なら感情重視、「貸さない」なら理屈重視と判断できます。

(2)競争/協調を見極める質問例

 「学生時代の部活動で印象に残っていることは何ですか?」

 解答が競争に関する内容なら競争重視、チームワークに関する内容なら協調重視と判断できます。部活経験がない場合は「人に負けたくないと思った経験について話してください」でも判断できます。

(3)行動/思考を見極める質問例

 「新しいプロジェクトが始まるとき、まず何をしますか?」

 解答が「すぐに行動に移す」なら行動重視、「計画を立ててから動く」なら思考重視と判断できます。

(4)革新/伝統を見極める質問例

 「当社の看板をリニューアルすることになりました。あなたが好きなようにリニューアルしていいとしたら、どのような看板にしますか?」

 解答が「全く新しい内容の看板」なら革新重視、「これまでの内容を踏襲した看板」なら伝統重視と判断できます。

(5)スピード/緻密さを見極める質問例

 「あなたはカレーライスを作っています。もうすぐ家族団らんの時間が始まりますが、カレーライスの完成を急ぎますか?それとも家族に待ってもらって納得のいくカレーライスを作りますか?」

 解答が「急いで間に合わせる」ならスピード重視、「待ってもらう」なら緻密さ重視と判断できます。

4.まとめ

 今回の記事では、電気工事業を主たる事業とする小規模事業者が新規事業として管工事業に進出するために、経営革新計画に盛り込んだ「ステップ3:採用面接」の内容について紹介しました。

 採用面接では、株式会社リクルートエージェントの調査で明らかになった「相性の5軸」を見極めることとしました。これにより、企業と応募者の価値観の一致度を判断し、定着率を向上させることが期待されます。

 具体的には、感情と理屈、行動と思考、協調と競争、革新と伝統、スピードと緻密さの5軸に基づいた質問を用いることで、応募者の特性を把握しやすくなります。このような面接手法を取り入れることで、企業と応募者の間に価値観の一致を見出し、長期的な雇用関係を築くことが可能です。

 次回の記事では、最後のステップである「ステップ4:早期退職の防止」について詳しく解説し、引き続き、新規事業成功に向けた取り組みを紹介していきます。

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