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第15話 再会の街

-ここまでのあらすじ-
ミャンマーで仕事をするコウジは、一人の台湾人と旅の途中で出会う。
日々連絡を取るコウジの心は徐々に変化をしていく。
そしてコウジは彼女と再会をする。

2014年 11月10日
コウジは少し早めに仕事を終えて、エリーの滞在するホテルに向かった。

ホテル手前で車を降りて足早にホテルロビーに向かうが、外からうっすらエリーの姿が見えた。

エリーもコウジに気づき、外に出て来た。
LINEでは何度もやりとりしていたが、会って話すのは1月以来だった。
コウジもエリーもお互いどこか挨拶にぎこちがなかった。

コウジ:久しぶり、エリー
エリー:コウジ、久しぶりね。 これ、あなたとあなたのお母さんにどうぞ。

エリーは会ってすぐに、手提げの小さな紙袋を渡してくれた。
袋の中には、ハンドクリームやお菓子などがバラバラ入っていた。
これらは、エリーがフライトで行った先で買って来たお菓子や、化粧品だとすぐわかった。

コウジはお礼をし、あらかじめエリーと会話をして決めたマッサージ、観光、食事というプランで行動した。

足のマッサージを終え、その後ヤンゴン屈伸の観光名所 シュエダゴン・パゴダも訪れた。
シュエダゴン・パゴダの境内は裸足で歩かなければいけない。

エリーには事前に
「境内は裸足であるくんだけど、汚い箇所もあるから、もし汚れたくないようなら、ここはいかないよ」と伝えたが、

エリーからは
「私は汚いところダメって性格じゃないから大丈夫よ(笑)」と明るい返事が返って来た。

エリーは初めてみる金の巨大な仏塔に驚きながらも、写真をバシバシ撮っていた。

「エリー、僕が撮るよ」
コウジはエリーからカメラを受け取り何度もシャッターを押した。

エリーがヤンゴンに来る1ヶ月前、
コウジの高校の友人や、会社の同僚がヤンゴンに遊びに来て観光地などをアテンドをしていた為、慌てふためくこともなかった。

観光を終えて、夕食のレストランへ向かった。
いつもジムやバーなどでお世話になっているホテルだが、このタイミングばかりは、コウジは少し緊張気味だった。
コウジからすると、会社の上の人を接待する方がよほど気楽だったのかもしれない。

席に座り一息ついたタイミングで、近くに知り合いの駐在員らが食事をとっているのに気がついた。
彼らもコウジとエリーに気づいて、手と軽く会釈で挨拶をしてきた。
その仕草は、どこか申し訳なさそうだった。

食事の途中でシェフが事前に頼んでいた台湾料理(台湾汁なし麺、葱油餅)を運んできてくれた。
エリーは驚いたように喜んでいた。
「わぁーー! これ、私好きなやつ!」
そういってエリーは、麺料理を笑顔いっぱいで食べてくれた。

その後のバースデーケーキも、喜んでくれたことは容易に想像できたことだろう。

食事を終え、コウジはエリーをホテルまで見送った。
その途中、エリーは1月の出来事についてこう語った。

エリー:コウジは1月のフライトのこと覚えている? 私がコーヒーを・・・
コウジ:もちろん、覚えているよ。

エリー:最初、私はコウジのことが怖かったの。
コウジ:えっ? どうして?

エリー:日本人は、その場では"大丈夫"と言っても、後で会社にクレームをすると聞いたことがあるの。もしあなたが会社にクレームをいれたら私はクビになっていたと思う。
コウジ:僕がそういうことするとでも思ったのか?

エリー:・・・少し(笑)
コウジ:そんなことするわけないし、大丈夫だよ(笑)

エリー:それを聞いて安心した(笑)

エリーをホテルに送り届け、コウジはいつものホテルのバーに入って、余韻を味わっていた。
やっと会えた喜びを噛み締めていた。

「・・・コウジ」
入り口の方を向くと、仕事を終えたツカサが大きめのカバンをもってコウジの斜め向かいに座った。
ツカサはコウジが飲んでいる紅茶を指差し、
「これと同じものをもう一つください」とスタッフにジェスチャーをして注文をした。

コウジ:・・・・・・・
ツカサ:コウジ、どうだった? 楽しい時間を過ごせたか?
ツカサは珍しく爽やかな笑顔で尋ねてきた。

コウジ:ああ、そりゃぁね。
ツカサ:ずっと待ってたもんなぁ〜 お前ってやつは(笑)

コウジ:とりあえず食事を喜んでくれてよかったよ。
ツカサ:まあ、ここはお前にとってホームみたいなもんだからな。 (あたりを見渡しながら)今日はここで正解だったと思うよ。

コウジは頷きながら、余韻を味わっていた。しかし顔は、まだ緊張がとかれていなかったようだ。

ツカサ:それで、明日はどうするんだ? エリーさん、明後日帰っちゃうだろ?
コウジ:そう。明日も夕食を一緒にとってそれで終わりかな。

ツカサは一瞬だけ、話すタイミングを遅らせて言った。
ツカサ:・・・それで終わりか?
コウジ:そう、それで・・・終わり・・・?

ツカサ:・・・そうか。
コウジ:そう、それで終わり。

噛み合わない会話が少し続き、変な間が差し込んだ。

コウジは悩んでいた。
友達という関係から、さらに一歩踏み出すべきか、留まるべきか。

コウジの顔をみながらツカサはタイミングをみて、喋った。

ツカサ:なぁコウジ、お前の気持ちはどうなんだ? エリーさんに対する気持ちだよ。

数秒間を置いて言った。
コウジ:・・・出来るものなら、付き合いたいな。

コウジの口から、友達以上の言葉が初めてでた。

ツカサ:・・・そうか。
コウジ:明日、エリーには伝えてみようと思う。

ツカサの顔が少し和らいだ。
ツカサ:おっ、そうきたか。応援してるぜ。
・・・もう俺は余計なこと言わん。 コウジ、おやすみ!
今日は俺が奢っておく。 明日頑張ってな。

そういってツカサは、バーを出て行った。コウジの分の支払いも済ませて。

それから20分後、コウジもまた、バーを出たのだった。

Photo by trip advisor


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