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人は突然いなくなるし後悔は消えない①
大好きな人にトゲトゲした気持ちを向けたことがある人。
いつかやればいいかと思って、まだしていない人。
人は突然いなくなるし、後悔は一生消えないよ。
私は25歳にして、取り返しのつかない後悔をすでに3つ抱えている。
今回はそのうちの1つを思い出そうかと。
大学時代、毎日行動を共にしていたMちゃんがこの世を去ってもう2年半が経つ。
同じ学科だったMちゃんとSちゃん、そして私は気づくと3人組で行動するようになっていた。
もともとは私とSちゃんが仲良かったところに、Mちゃんが加わってきた(とわたしは感じていた)ので、最初はちょっと苦手だった。
背が高くてバレー部のMちゃん。女の子と仲良くなるのが得意で、自虐ネタが多い。自己肯定感低め。ちょっぴりめんどくさい性格をしていて、不機嫌になるとすぐわかる。
背が低くて元吹奏楽部の私。彼氏が途切れないし、いつも色恋沙汰がまとわりつく。女子と群れるのが苦手でツンケンしている私。
女性のみなさんなら、なんとなく合わなさそうと感じるのではないだろうか。
そう、若干合わなかった。不機嫌になったMちゃんの機嫌をとるのはめんどくさい。Sちゃんはすべてを受け止めるお母さん的ポジなので、Mちゃんの扱いがうまかった。
Mちゃん的には、私は可愛くて隙がないから苦手、性格悪そうという第一印象だったらしい。
なんとなく居心地の悪さを感じていたが、3人でお泊まりをした時に、私の毛が濃いというコンプレックスの話をしたり、私の寝相がおかしすぎると写真を撮られたりしているうちに、仲良くなっていた。
Mちゃんは私の弱点を知ることで、心を開いてくれたようだ。
授業中に寝たり休んだり、テスト前日に講義資料がないと騒ぐ私を、姉のように世話してくれた。
Mちゃんは真面目で心優しくて、お節介なのだ。
MちゃんとSちゃんはすこぶる仲良くて、同性愛を疑われるくらいに毎日寄り添っていた。
3人組だから疎外感をおぼえて、ひとり勝手に拗ねていた。
気づくと2人で遊びに行っていたりする。でも2人に悪気はないのだ。
悪気なく仲間はずれにされて、大学4年間傷つき続けたし、心の中でどこか2人に嫌な気持ちを募らせていた。
だからMちゃんが適応障害になって休学したり、1年遅れで実習や国試勉強を頑張っているとき「Sちゃんが支えてくれるでしょ」と私はほとんど連絡をしなかった。
彼女がこの世を去る1か月前に、ようやく延び延びになっていた食事の約束を果たした。
彼女がこの世を去る3日前に、Sちゃんから「Mちゃんと連絡が取れない、おかしいから様子を見に行って」と頼まれて、家に行った。
Sちゃんは隣県にいて、私はMちゃんの家から徒歩10分だったのだ。
Mちゃんの家に行き、インターホンを押したけど反応がない。胸騒ぎがしてドアノブに手をかけると、鍵が開いていた。
部屋の電気はついていて、机の上には薬の殻が散乱していた。幸い命に関わる量ではなかった。
ベッドには包丁を抱えたまま眠るMちゃんがいた。
未遂で良かったと思いながらSちゃんと連絡をとり、Mちゃんのお母さんがそのあと病院に連れて行ってくれた。
その2日後、もう一度自殺を図り、Mちゃんが亡くなったと聞いた。
未だに彼女がいなくなったことを実感できないでいる。
彼女が最初に自殺を図った時、スマホの画面に歯列矯正のページが表示されていたのを思い出す。
今から死のうとする人が、歯列矯正だなんて未来のことを調べるんだなと、ふと思ったことを思い出す。
人は本当に簡単に命を経つんだと思った。未来のことを考えながら、死を選ぶんだと。
なぜもう一度私は彼女の様子を見に行かなかったんだろうと未だに何度も思う。
私がいちばん近くにいたのに。
なぜ家の中の刃物を、私が持って帰らなかったんだろうと後悔する。せめて包丁がその場になければ防げたかもしれないのに、と。
でももっと後悔していることがある。
彼女に優しい言葉をかけてあげなかったことだ。
彼女が亡くなって1年ほど経ったとき、ふと彼女からもらった手紙のことを思い出した。
なおはいつも私がしてほしいことを先回りして、やってくれるよね。気遣いができるところ尊敬してます。
私が大変なときに、あれこれ聞かずにいてくれたことに感謝してます。話せるようになるまで待ってくれてありがとう。
そう書かれていた。
私は彼女が思うほど、素敵な人間じゃなかったと思う。自分の行動を振り返っても、優しくできたことなんて思い出せなかった。
先回りしてなにかしてあげたことなんか、心当たりがなかった。
もし私が彼女に誠心誠意向き合って、支えてあげていたら、こんなにも「彼女の中の理想の私」に苦しむことはなかったと思う。
私が覚えていない些細なことに救われたと言ってくれた彼女の優しさに感謝しながら、私は一生自分の愚かさを悔いるだろう。
大切な人に暗い気持ちを向けることは、自分の心にトゲを突き刺しているのと同義なのだ。
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