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刀剣短歌2023.冬〜初夏まとめ

2023年1月〜6月に詠んだ刀剣短歌です。
「みそひともじのきっさきで参」で展示した自選に載せなかったものもこちらにまとめました。
Twitterが沈んでしまったらnoteに移行するかもしれません。死ぬなTwitter。


立春

生まれたての子鹿のように春は立つ雪降る中を祈られながら

風船が子どもの手から飛んでゆくように意識を手放して春

花冷えの日のため置いておく毛布のように俺を使ってほしい

惜春に差す木漏れ日を掬えども連れてゆけずに歩みさりけり

逆鱗に触れる

不動行光
行き止まりの街にあなたがあることの不幸を知ってなお、なまくらの

大和守安定
また春が来てまた春が来る永遠 とわにあなたがいない地に永遠に

一期一振
記憶の中ですら会えぬ人がいて 青い勿忘草の花咲く

江雪左文字
花を踏む立つためだけに踏む進むためにまた踏む正史のゆくえ

燭台切光忠
水鏡 揺らぐ姿に静寂が訪れるまで僕を見ないで

村雲江
人込みに君を見つけて走るとき手を振るように尻尾は揺れる

君のまなざしかと思う 陽だまりの光に守られて眠るとき

水に棲む魚に問いかける 喉が渇くことってある?ありますよ

鶴丸国永
千年の銀雪に立つ椿より冴え冴えとして彼の一瞥

散ることで完成したい桜木の矜恃我にもありて塵風

浜ゆけば告解室を思わせる夜 海鳴りが懺悔を強いる

振袖に注ぐ花びら狂おしく廃墟の春にひとり踊れる

ならば砂時計を割ってしまうかとささやいてやる夜 聖五月

風死すや我が振袖を翻すべく駆け上がる季節の来る

大倶利伽羅と鶴丸国永
君の逆鱗に触れたい 穏やかに眠れる龍の御髪を梳きぬ

見えない刀をたずさえて

人のふり神様のふり物のふり自我を仕舞った役者の器(上の句 咲月様)

ないことと見えないことは異なれど君の姿がなくて悲しい  お題「新月」

刀さに罪ですか愛することは罰ですか対物性愛の身に振降る雨(上の句 咲月様)

暁に詠う刀の寿ぎ企画
君はゆく見えない刀をたずさえて傷つき泣ける千の夜のため

うたのてすり企画
目を閉じるだけで帰れる場所があるこの目に明日を見せにゆく旅

葬式にくるはがね企画
骨壷の引き取り手出づこの初夏に無縁仏となるはずの人

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