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刀剣詩2023.冬〜初夏まとめ(カップリングあり)

2023年1月〜6月に書いた刀剣乱舞の二次創作詩のうちカップリングを含むものをこちらにまとめました。
いちつる/さみくも
最後の「核」は結構がっつりBLなので(詩で?)ご注意ください。

螺旋/彼らの恋について

博物館に飾られる、
かつて滅んだ生き物の
白い肋骨 思わせる
細く美しい鉄筋の
痛々しく錆びしこと
向こうに薄青の空を透かせて
そのがらんどうに
冷たい風の吹き抜ける

螺旋階段を登る
遺伝子を持たぬ体で
登り続ける
何処へゆくのか?この恋は
登るほどに空へ近づく

錆び付いた
もの悲しい螺旋階段で
口付けをするようだ、
彼らの恋は

必然性から切り離されて
なお惹かれ
君に恋する体のあはれ

いつも切実な
螺旋階段の恋

錆び付いた螺旋階段 遺伝子を持たぬ体の恋い恋うあはれ


結晶/村雲江→五月雨江

あなたの俳句になりたい
そうして結晶にしてもらって
宝石箱に入れるみたいに大事にして
時々取り出したりして
矯めつ眇めつ
したいしされたい

俺は
あなたにとっての芭蕉の席に
あなたを置いて
そうして
とても狡い方法で
アイデンティティを得たい


幻肢痛 ファントムペイン/鶴丸国永→一期一振

大切な人を失って寂しいことと
寂しいことすら感ぜられないさびしさは
どちらのほうが寂しいのだろう

君には
かの人の記憶がないから
おりふし
思い出の中の人に触れ
苦杯をなめた悲しさに
引き絞られるような痛みを感じることはない
しかし君のそれは
臓器が痛むとき
痛む臓器ごと
捨ててしまったようなものだろう
君の場合
無慈悲な炎に奪われたのであったが

痛む器官すら失って
それがあったはずの場所、
欠けて
空いた空洞に吹き込むすきま風
なんという悲しい風鳴りか

丘の上に立つ、
君の髪が風になびいて
君は穏やかな表情
されどその姿が
時々無性に切ないのは
失ったはずの部分が
痛む気がするからではないか

呼びかけると
やはり穏やかな顔で振り向くから
俺は、
君の部屋から見える庭に
健気に青い
勿忘草をそっと植えてやりたくなる

幻肢痛ファントムペイン
病気や事故で切断したはずの四肢が痛む、あるはずのない幻の痛み


核/一期一振×鶴丸国永

くちづけて
骨がぶつかったとき
骨だ、と思った

赤々と流れる高い矜恃
強い意志としての肉を
美しい姿を皮膚としてまとい
飄々と風のような気質で包んだ、
あなたの中にある
死ぬまで人目に触れることのない、
これは唯一、剥き出しの骨だ
唯一剥き出しの
あなたの核

埋葬されても焼かれても
骨が残るって
不思議じゃないですか

土葬された骨は、土の中で
こんなふうに濡れているのかもしれない
私は火葬でしたので、崩れそうに軽かったのですよ

あなたの核に触ってみたくて
小さな口を押し開き
歯列に舌を這わせれば

それは象牙のように悲しい
また切なさ、螺鈿の光沢の香する
波にさらわれる哀れな貝の
その内側のごと艷めくエナメル質、寂しく
割れやすい陶器の質感
傷を持つ真珠の白き怒り
わけもわからず嫁いでいく少女
その胸に握られたる真珠の
途方に暮れる怒り
無垢なる怒り、純白の色
傷の痛みはつららの印象
向こうの景色を映すほど澄んだ魂が
人など殺しそうに牙を剥いて
両手で触れれば
涙ばかりに水のしたたる
歯をなぞる
人目に触れ得ぬ骨を、核を
深く 深く

窒息寸前
蹂躙されたあなたが
耐えかねたように顔を背ける
涙を湛えた目で
私を睨み上げ
変態、という

あなたからお誘いになったくせに


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