好み

母と私は、好みが似ている。私が年を追うごとに、さらによく似てきた。


母の好きなもの

母は、私が生まれた時から末っ子が大きくなるまでずっと、絵本を読み聞かせしてくれていた。
みんな大きくなってからも、小学校のお話サークルで活動している。
家でもたまに、読み聞かせの練習をしたりプログラム表を手書きで作っていて、私はそれを眺めるのが実はなんだか好きだ。

ペープサートとか紙芝居、それの小道具とかも、サークルのみんなで集まって、時々作っているらしい。


カフェやコーヒーも好きで、ちょっと足を伸ばして行きたいお店に誘えば、大体気に入ってくれる。紅茶屋さんでは一緒に迷ってくれるし、コーヒー屋さんでは気に入って豆を買ってたり。

近所のコメダでモーニングに行くこともしばしば。私の、長期休みや全休の楽しみ。

母はお菓子やパンを作るのも好きで、昔は、添加物なしで甘さ控えめ、体に優しいおやつを作っては、月2回で地域のイベントに提供していた。
今でも時々パンを焼いてくれる。ベーコンエピは我が家で大人気、もちろん私も大好きだ。



母は、絵もすごく好きだ。(そろそろ母の話どうでもいいよ知らんわって方。ごめんなさい。私母好きなんです)

美大通信課程のチラシをみたときには、「お母さんこれ行こうかな」と軽口を言っていたほど。

昔絵画で入賞もしていた話は小学生時代、夏休みの旅に耳タコだった。

はるか昔幼い頃、絵画の宿題に手を入れられて、泣いてガチギレしたのも、懐かしい。



昔の私と、現在の好き



対する私。



絵画の宿題や課題は苦手、図工や美術では、授業態度はとっても良いはずなのに、うまくいかず手際がよくない割に妥協ができずに徹夜したものの、成績は3。「周りと比べて、クオリティが低いでしょ?」と、面談で暗に言われたのも、今となってはネタだ。(実際そうだった。面談は、呼び出しではなく美術の先生が担任だった)

そんな小中学生時代を過ごし、高校では迷うことなく音楽を選択した私も、今では絵を描くことにハマり、紙粘土や針金で色々作ったりも、時々。楽しみながら、やっている。

思えば、昔から、何かを作るのが、絵を描くのが嫌い、とか、別にそういうわけではなかったように思う。

もちろん手先は不器用だし、人と同じ手際でうまく器用にこなすというのは、苦手だけれど。

きっと、決められた一コマの中で、自分の気分とは関係ない、カリキュラムで決められたものを、決められた道具とキットを使って作品づくりをする、そしてそれがシビアに成績評価され、鑑賞会では周りの得意な子との差を歴然と感じる。

それが、苦手だったんじゃないかと思う。

(実際、絵は苦手、美術は嫌だのいうわりに、プリントやテストの余白には、決してうまくは無いもののいつも絵を描いていた。)

今となっては、図工や美術の時間は、いろんな道具が使えて、いろんな技術や表現技法を学べるとんでもなく素晴らしい機会だったと思うのだが、苦手意識だらけの当時の私がそれに気付けるわけがない。(ちなみに一番今やってみたかったのは、私たちの学年はなかったけど、銅版画だ。なにそれ楽しそうめちゃくちゃ気になる…。)

バレンタインも、作ってはみていたたけれども、見た目良くなかったし。小中高のバレンタインは、ほとんど母の手作りイベントと化していた気がする。

そんな私だけれど。

今、私はのんびりと己が赴くままに、自分の頭の中や感じた思い出を絵に描いたり作品として表すのが、好きだ。
母の活動も、「楽しそうだなあ〜、いつか何か作ったり参加したいなあ、仕事持ち帰ってきたりしてくれないかなあ」と思う今日この頃。

前述のとおり、カフェやコーヒーや紅茶も、大好き。美味しい紅茶やコーヒーを飲みながら、母と朝ドラの録画をみる時間が幸せ。

絵本も最近好きで、展示をみてハマったショーン・タンの本や、大好きな画家・鬼頭祈さんの絵本をおねだり中だ。もちろん、自分で買うのもいいんだけど、母も多分こういうのが好きだし、推せばハマる気がして、絶賛プロモーション中。

お料理やお菓子づくりも、最近のマイブーム。
料理動画をみて、あれ食べたい、これ作りたいと考えていたら、あっという間に時間が過ぎてしまう。

改めて、感じること。


大学生になってから、好きなことや趣味が、ぐんと増えた。
どんどん好きなこと増えるなあ、いろいろ、やりたいなあ、できたら、副業でもなんでも、ゆくゆくは、自分のペースながら、お仕事ができたらなあ、と思う反面、小さい頃からそれが大好きだった人は、すごいなぁ、やはり違うのかなあと弱気になることもあり。

しかし、自分の好き、を、全てボランティアだけれど、ずっと続けている、あるいは機会ある限り続けていた母の背中をみながら、

「お母さん、パン屋さんとか大好きだったけど、作るのは結婚してからよ。絵本も、あなたが産まれた時から」

という言葉を思い出し、

今からでも全然なんにも遅くない、自分の好きと、やりたいと、気になる、を信じて、大事にして、マイペースに、ちょっとずつでも、続けてゆこう、と思う。





こないだ、唐突に食べたくなって、夜な夜なケーキを焼きはじめた私に、ちょっぴり呆れ気味の母が言った。

「まっ、なんとなく気持ちは分からなくもないけど。私も若い頃は、夜中に突然パン焼いたりしたもんなあ。」


母と私は、やっぱり似ている。