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自分の城を守り抜くという固い決意

5年ほど前、私はエリアを跨いだ異動で新しい地に足を踏み入れていました。

商品は変わらずともお客様はガラッと変わる。期待と不安を胸に、1件ずつお客様にお電話をし、ご挨拶とビジネスを前に進めるためのお話伺いでお時間をいただけるよう電話でアポイントを取っていました。

ある会社に電話をしたところ、「それでは営業開始前の9時に時間を空けます」ということでお時間をいただきました。正直「少し早いな」という弱気な気持ちもありましたが、新しいお客様とお会いしてどんなお話が出来るのか楽しみにしていました。

お伺いすると、駐車場では初老の方がホウキとチリトリを持って丁寧に清掃しているところでした。

(この会社ではシニア層をアルバイトで雇って清掃をお願いしているのかな?)と思いながら声をかけ、お時間をいただいている旨とどこに駐車していいのかを確認させていただきました。


駐車してしばらくお客様先の応接間で待たせていただいていると、程なくして先ほど掃除されていた方が入ってきました。
(あれ、もしかして)と思う間もなく彼はこう言われました。

「はじめまして。代表の○○です。」

漫画でしか見たことがなかった経験

漫画などでよく「掃除をしているのは実は社長だった!」みたいな話を見たことがありましたが、私自身が実際に直面するのはこれが初めてでした。

挨拶もそこそこに好奇心でいっぱいになってしまった私は社長に質問責めをしてしまいました。

その中で最初にした質問が、「なぜ社長ほどの方がわざわざ率先して会社の清掃を行うのか?部下に任せたり外注するほうが多いのではないか?」

その回答は今でも印象に残っています。

「ここは俺にとっての城だから、自分の城を守るためにキレイにするのは当たり前なことなんだよ。」

働いている社員は現場に行ってキチンと仕事をするとかそういったものは当然あるかと思いますが、それ以上の社長の覚悟に似たものをその時に感じたことを今でもよく覚えています。

それだけでは見れないけど、その覚悟が経営に大きく影響するのかも

すごく痺れました。
自分はずっと勤め人のため自分の城を守るという経験は持てていませんでしたが、本当に自分の会社というものに誇りを持っている人はこれだけ素晴らしいものなのかと。

非効率であり、非科学的なものかもしれません。

掃除をしたからと言って売り上げが大きく変わるわけでもないかもしれませんし(お客様が訪問してくるタイプのオフィスでしたら可能性はありますが)、掃除をしていないであろうオフィスも営業をしていく中でたくさん見てきました。

していても会社のスタッフが行う。
会社のスタッフと一緒に社長も行う。

ここまでは経験していましたが、社長がここまで責任をもって対応するということは経験したことがありませんでした。

ただ、そこまで愛着を持って会社を守る・社長が言うところの「自分の城を守る」という経験を毎日通しているおかげで、本気で苦しい時や心が折れそうな時を乗り越えてきたのではないか。私は勝手ながら想像を巡らせました。

とりあえず私は会社のゴミ拾いくらいは始めてみた

私の会社は規模が大きいので掃除に関しては清掃会社の方がすべて行ってくれます。

なので勝手に掃除用具を出して便所掃除したら激しく困惑されました。

というわけで私は率先して会社の掃除はできませんが、それなりに机が汚れていたり、それなりにゴミとかその辺に落ちていたり、それなりに治安が悪い状態の会社で毎日過ごしていますのでとりあえず自分に出来る限りの思いつく限りのことはしてみることにしています。

果たしてそれが自分の会社への帰属意識になっているか…と尋ねられたら正直そこまで自分の意識が高まったかはわからないというのが正直なところです。やはり会社勤めではトップのあの人のような気持ちを持つことはできないのか…と悲しい気持ちになることも正直なところです。

一方で、他のお店やお客様先に出向いた時には気になるようになりました。お伺いする会社であればもちろんのこと、道を歩いていて誰のお店かもわからないところでも、目の前の人がタバコや飲み終わりのスタバのカップを捨てたりすると心が痛むものです。てかいい大人が他人の前でそんなことが出来る奴もどうかと思いますが…

そんなお店にはリスペクトを込めて出来る限りゴミは拾うようになりました。

私がお会いしたあの社長が大切にしていたように、私が毎日を過ごす地域にあるお店にリスペクトを持ってどうか素敵なお店が続くことを祈るばかりです。

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