最近のもやもや。評価と組織
アカデミアの、特にアーリーキャリアへの評価基準の難しさ。
論文数だけではかるのはいかがなものか。数より論文の質だよ、と言われるがどうやって質をはかるのか曖昧。引用数?実社会へのインパクト?研究界へのインパクト?どれもある程度長期的に見ないとわからないのではないか。長期的に雇用されることが少ないアーリーキャリアには不利。じゃあ短期的なインパクト、つまりメディアに受けそうな内容や今のホットトピックを扱うべきか。単純にポストを得るだけを考えるならそれが一番いいのかもしれない。けどなんだかなー。
移民の俺にとって、曖昧な定義論争を待ってるわけにはいかず、とにかく数値として明らかな論文数至上主義でやってきた。もちろん人を判断するためではなく、自分の拠り所として。日本でパサーとして活躍していたサッカー選手が海外に出て点取屋に変化していく感じ。自分の美学よりも誰の目にも明らかな得点数を追い求める。
ただ最近はこの方向性はちょっと違うかなーとも思ってる。ここら辺で少し腰を据えて、今後の方向性、自分はどう評価されたいのかを考えた方がいいのかも。
「研究所」という組織。
PhDと最初のポスドクは大学に付随する研究所、次のポスドクは大学の学部と大学に付随する研究所で行った。学部に所属したことで研究所という組織の不思議さが少し浮き彫りになった気がする。以下、かなり愚痴っぽいのだけれど、自分の所属しているところだけでなく、他で見聞きしたことも含めた感想なので、特定の機関への批判ではないので、ご注意を。ここのこと?と勘繰らないでね笑
学部の場合、headの意向によって誰が重宝されるとかはあまりないように思う。headは持ち回りだし、雇われてる人は皆大学の決まったルールの下雇われてるためheadの一存で誰かを優遇不遇できるものではない(もちろん例外はあるだろうけど比較的、という話)。けど、研究所の場合、directorには結構強い力が与えられていて(るような気がする)、directorの意向で研究所自体のカラーがガラッと変わることがあり得る。例えば研究所によってはdirectorは自分のグループを創設できるのでdirectorが代われば、研究所全体として推すテーマが変わり、それによって雇う人も変わる。これって結構すごいことだよなーと最近気づいた。ある意味で研究機関の私物化ができてしまうわけなので。就職先が山のようにある一般企業のような場合、こういう創業者や現社長の私物化された企業があってもいいと思う。実際ベンチャー企業なんかは創業者の思想や理念で引っ張るケースがあるし。「皆にいい社会」と謳ってても、結局自分にとって都合のいい、自分が理想とする社会だったりするのはよくある話。
ただ就職先が限られているアカデミアでこれをやられてしまうとちょっと厳しいなーと。まして往々にして、大学より研究所の方が資金がある場合が多く、しかも融通の効くお金があったりするので、アーリーキャリアとしては研究所は研究所で好きにやってくれとほっとく訳にもいかない。どうしてもどこかで研究所に擦り寄るというとおかしいけれど、研究所からのある程度favourを期待したいところもあるわけだ。
「その研究所の理念に合わない人は優遇されなくてもしょうがないじゃないか」
それはごもっともで、まあ正直いい反論の仕方は「うるせえ、、」ぐらしか思いつかないのだけれど。このもやもやはどこからくるのか。
多分、誰しも自分のやってる研究が一番好きだし、大事だと思ってて(思いたい)、それによって自分のプロジェクトメンバーをより優遇したい、という気持ちはわからないでもない。が、やはり「経営」という視点から見て、そして大学・研究所に関わらず所内の政治や意思決定にパワーを持っていないアーリーキャリアに取って、大学の学部の運営方法の方が健全だなと感じる。比較的がんじがらめのシステムではあるが、そのシステムによって比較的皆が平等な扱いを受けられる。と言っても学部には一年しかいないので、今の所、という限定つきではあるが。
ここまで書いていて思ったのだが、ある程度のキャリア段階になったら、独立研究所を持つようになったらいいのにね。自分の名前や分野を冠した研究所にして、規模は一つのグラントで雇える範囲で小さく維持するもよし、拡大していくもよし。そうすれば、雇われるアーリーキャリア側も、自分が「優遇」される、もっと良く言えば真に活躍できる場所を見つけやすくなるのではないか。この方が、さっぱりしていて健全な気がする。先のベンチャーの例で言えば、最初から「自分の理想の社会を目指す」と言ってもらった方が気分はいい。「公」の皮をかぶった私物化ではなく、最初から「私」でいく。もちろんPIが研究所の長になることから権力がでかくなりすぎて他の研究者とのパワーバランスが崩れたり、PI側は俺マネジメントもやらないといけないの、という不満も出てきそうだけど。でも、またこれも今は、という限定つきだけど、今の俺にはこの方がさっぱりしていていいな。
大規模グラント採択→独立研究所設立ってどのくらい現実的なのかしら?研究機関ではなく、個人に依存するグラントがあるのは知ってるのだけれど、多分研究機関に所属しないといけない規定はありそうですよね。それを自分で設立した機関に紐づけられるのかな。
どなたかご存知の方いらっしゃいますか?できればヨーロッパの文脈で何か情報共有いただけると嬉しいです。
愚痴っぽいことをつらつら書いてみようと思って始めたのだけど、思いの外目指すべきところが見つかったような気もする。
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