見出し画像

『南天の枝』について独り言

短編小説『南天の枝』をお読みいただいた皆様、ありがとうございます。また、これからお読みになるという方にもお礼を申し上げると同時に、折角ですので同作品が生まれた経緯についてちょっと語ってみようと思います。



『南天の枝』は、私自身が撮影した写真に言葉をつけていく、という『Story from a Picture』の第2弾として生まれたものです。この「写真に文章を加える」という試み、なかなか難しいもので四苦八苦していたのですが、静岡県熱海の来宮神社に詣でたときに撮影した写真『包容力』と、当時読んでいた志賀直哉の『暗夜行路』の雰囲気がうまく溶け合い、作品が生まれる要素となってくれました。


あと、そのときはまっていたゲイリー・ムーアの『Parisienne Walkways(パリの散歩道)』も、哀愁的な考え方の触媒になったかもしれません。



写真と、志賀直哉と、ゲイリー・ムーアがつながったとき、それがあまりにも衝撃的だったため、脳内で一体何が起こっていたのか、私自身はほとんど覚えていません。一つだけ言えるのは、「小説のインスピレーションは化学反応かもしれない」です。


作品の解釈については、「ジンクスのとらえ方」が元々のテーマである一方で、実はもう一つ存在します。が、これは謎として伏せておこうと思います。好きなように解釈していただけるのも、書いた私にとっての一つの喜びなのです。


ただ、あくまで「ジンクス」が主題なので、ストーリー展開の決め手となる妻の死は極端にドラマチックにせず、淡々となるようにしました。「夫婦共に妻の死が近いのを悟っていた」という記述を物語の冒頭にわざわざ持ってきているのはそのためです。基本的に、恋愛と死は物語の主軸に据えやすい存在ですが、ちょっと違うことをやってみたかったので、意図的にずらしました。


あとは、一度はやってみたかった、大正時代を舞台にした物語を書けたのが嬉しかったです。本当に、「一回やってみたかったんだよね♪」くらいのノリでしたので。実を言うと、大正が背景の短編小説の着想がもう1件あるので、その練習台としてもちょうど良いものでした。


最期に、ゲイリー・ムーアの『パリの散歩道』、これは大変な名曲なので、もしご存じない方は是非聞いてみてくださいね!


『南天の枝』の着想となった写真、『包容力』

画像1









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?