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FC東京vs浦和レッズ~いざ出発の時~[Jリーグ第1節]

W杯を挟んだ長いオフシーズンが明け、2023年のJリーグが遂に開幕。アルベルトーキョーの旅2ndシーズン。いよいよ出発の年です。

開幕戦はホームに浦和レッズを迎える。その浦和はポーランドのマチェイスコルジャを新監督に迎えた。選手では興梠が復帰し、ノルウェーのFKボデ/グリムトからホイブラーテンを獲得。一方でユンカーや松尾が期限付きで退団。そして俺の推し江坂さんが韓国へ行ってしまった。残念。

昨季の対戦は1分1敗。ホームでは0-0で引き分けたが、アウェイでは0-3と完成度の差を見せつけられた。

試合概要

メンバー

・FC東京
キャプテン森重が怪我で欠場となり、エンリケがスタメン。昨季の10節以来、約10ヶ月ぶりの復帰。おかえり。新加入組では小泉と仲川が早速スタメン。俵積田がいきなりベンチ入り。

・浦和レッズ
監督は変わったがシステムは引き続き4-2-3-1。メンバーも大きく変わっていない。ホイブラーテンが早速スタメンでショルツと北欧コンビ。

さあ開幕。今年もお付き合いください。

(1)形は違えど同じ追い込み

開幕戦ということもあってか、なかなか落ち着かない入りとなったこの試合。それでも10分辺りからは両チームともにボールを保持しようとする狙いを見せる。まずFC東京の被保持から。

浦和の保持に対して、FC東京は前からプレスに行く。CHの伊藤と岩尾には松木と小泉がマーク。また、ディエゴも背中でぼかしながらCBまで向かっていく。この3人で囲んで中央を消す形。

そしてWGの守備は左右で異なる振る舞い。まず、右WGの仲川は縦のコースを切りながらCBまでプレスに出ていく。外のコースを開けることで浦和の保持をサイドへ誘導。その先のSBには中村が勢いよく飛び出してくる。人数をかけずに時間を奪い取ることでプレスを嵌めにいった。WGが外切りでプレスをかけていた昨季とは変えてきた部分だ。

14分20秒

対して左WGのアダイウトンはCBとSBの中間ポジションに立つ。外切りというわけではなく。あくまでも中間に立つ感じ。CBまではプレスに行かない。

浦和は酒井を出口としてこちら側から前進を図ることが多かった。ここでショルツから酒井へとパスが通ったらアダイウトンはしっかりプレスバック。サポートに寄る選手にも佳史扶、東、松木、更に小泉なんかも参加して圧縮。人数をかけながらじわじわと浦和をサイドに閉じ込めていく。

浦和としては中央に絞ってくる逆のSHの大久保まで届けたかったところ。ここまでボールを送ることができれば密集を脱出して、広いスペースで一気に速攻へと繋がったが、FC東京の網を掻い潜ることができなかった。

左右でやり方は違えど、サイドに追い込もうという狙いは同じ。昨季よりも前線からのプレスの狙いははっきりとした印象だ。

(2)表れた成果

次にFC東京の保持。

FC東京は昨季と変わらずCB+アンカーでビルドアップをしていく。対して浦和の被保持は4-4-2の形。2トップのリンセンと小泉がアンカーを背中で消しながらCBまでプレスに出てくる。

アンカーを消す内切りのプレスでFC東京のビルドアップはサイドへと誘導。誘導先のSBへはSHの大久保とモーベルグが出てくる。また、SBのサポートに近づくアンカーには小泉かリンセンがしっかりマークにつく。

この守備によって、FC東京の保持はCBからSBまで繋いだところ、もしくはその先のアンカーまで繋いだところで嵌ってしまう。上手く浦和にサイドに閉じ込められた。

15分20秒

このサイドで閉じ込められる嵌りかたは昨季も何度も見た場面。この低い位置からのビルドアップは今季も引き続き課題となりそうだ。

ビルドアップは昨季とあまり変わってなくね?という印象を受けた。対して進化しているなと感じたのが敵陣での崩しの局面。どうサイドで崩して相手のポケットを取るか。キャンプで中心的に取り組んできた成果が見えた。

特に良い形を見せていたのが右サイド。仲川とディエゴの関係で上手く相手を動かしながら時間を作り出す。そしてその間にSBの中村が駆け上がり、3人目としてポケットを取る。初お披露目となったディエゴ-仲川のコンビは非常にフィーリングが合っているように見えた。

そして攻撃に更に厚みを加えていたのが、松木と小泉のIH。このIHが2人とも同じサイドに集まることでサイドの枚数を3人、4人と増やす。数的優位の状況をサイドで作り出して密集を打開。サイドを攻略していこうという狙いが見えた。また、同じサイドに集まらなくても、1人がサイドに絡み、もう1人がペナルティエリア内に入り込む場面も。昨季よりもIHが攻撃的になった印象だ。

そして、このIHの攻撃参加を後押ししていたのがSBの立ち位置。IHが2人とも同サイドに集まるなどして攻撃に加わった時には、逆のSBが中央で東の横辺りにポジションを取る。ここに立つことでSBが東と共に中盤のフィルター役となり、カウンターのリスクを軽減。これによってIHはより攻撃的に振る舞うことができた。

この試合では浦和を押し込んだ状況からカウンターを喰らう場面はなかった。ただ、これは浦和が自陣で守る際に小泉やリンセンも低い位置まで下げていたので陣地回復の手段を持ち合わせていなかったことが大きい。

ここで1つの場面をピックアップ。40分30秒。FC東京のロングカウンターの局面。

左サイドにこぼれたボールをアダイウトンが拾って松木へ繋ぐ。この時、浦和のフィルター役は岩尾の1枚のみ。そのため、最終ライン3枚の前、特に中央には大きなスペースができていた。ここのスペースで小泉が松木からパスを貰ってカウンターへ。仲川まで繋いだところで止められてしまったが、チャンスにはなりかけた場面。

40分30秒

このようなカウンターを防ごう!というのがSBフィルターの役割。例えばこの場面では逆のSBの明本がCBの前に立っていれば、小泉がドリブルで運ぶのを止める、遅らせることができる。

SBフィルターの利点

このような効果がSBフィルターにはある。今節はあまりロングカウンターを喰らう場面はなかったが、SBフィルターがどれだけ効果を発揮するかは次節以降の注目ポイントだ。

ということでもう一度話を戻して。押し込んでからのロングカウンターの心配はなかったFC東京。しかし、縦に速い攻撃に出た時のネガティブトランジション、攻撃→守備の切り替えの場面では脆さを露呈した。

速い攻撃に出た時にはSBは中盤の位置を取っていない。つまりアンカー東の周辺には大きなスペースがある。ここを小泉や大久保に使われてカウンターを受ける場面が目立った。被カウンターで東が責任を取るエリア、人が大きすぎた前半。その結果、危うく退場しかけることとなった。ここは修正ポイントだ。

ここからはもう一度敵陣での保持の話。このIHの攻撃参加とSBフィルターの形は今後の可能性を秘めた一方で、欠点も見て取れた。その欠点はやり直しからの逆サイドへ展開ができないこと。

サイドでの攻撃が詰まった時には、一度CBまで戻してやり直す選択をする。その時に、SBが中盤の立ち位置を取っているため、CBからサイドに張る逆のWGまでの距離が遠くパスコースが開通していない。ここは場面を切り取って見てみる。

25分00秒の場面。左サイドで詰まったため、アダイウトンはエンリケまで戻してやり直し。エンリケから木本へ、逆の広いサイドへ展開を狙うが木本→サイドに張る仲川への距離が遠すぎる。そのため、広い右サイドへ展開ができずに、また狭い左へと戻ってしまった。

25分00秒

サイドに人数をかけて密集を作る狙いの1つは数的優位で狭いサイドを崩すこと。もう1つは相手を集めて、逆サイドに大きなスペースで勝負できる環境を作ること。戦術用語でオーバーロードとアイソレーションというやつ。

今の形だとオーバーロードはできる(まだ精度は高くないが)がアイソレーションを作ることができない。1つしか活用できていないことになる。そのため、サイドに展開する時にはWGがCBからパスを貰える位置まで引くか、SBが少し落ちて中継地点となるか。どちらかが必要になると思う。個人的には後者。せっかく1対1に強いWGを持っているのだから、仕掛けられる環境を作ればより破壊力が増すはずだ。

(3)勝ちへの采配

0-0で前半終了。ハーフタイムにmiwaさんの歌声を聴き後半。FC東京は東に代えて安部。トップ下に安部を置く4-2-3-1へとシステムを変更した。

後半はFC東京が主導権を握る。右サイドから良い崩しを見せていた前半とは違い、後半は左サイドが中心。前半の左サイドはアダイウトンがサイドに張りながら、佳史扶とともにゴリゴリ攻めていく感じ。右よりも昨季の香りが強く残る攻撃だった。

対して後半はアダイウトンは内側でのプレーが増えて、佳史扶がサイドに張る感じ。ここに松木やトップ下に入った安部が絡みサイドを崩していく。

この修正よるメリットは主に2つ。1つはディエゴがペナルティエリア内で待てること。前半の右サイド中心の攻撃ではディエゴがサイドに絡むため、ゴール前のターゲットが1枚減ってしまう。左サイドの攻撃ではディエゴが中央に留まることができるため、ゴール前でクロスのターゲットとなることができた。

もう1つはアダイウトンを解放すること。アダイウトンを狭いエリアに閉じ込めても良さはでない。そこで、アダイウトンを解放して自由を増やすことで、サイドに絡みながらゴール前にも入っていく。これでディエゴと共にゴール前にさらに厚みをもたらす。流動性が増したことで浦和はサイドの佳史扶、安部、松木を捕まえづらくなる。当然アダイウトンも捕まりづらい。

そして、その左サイドからFC東京が先制。小泉-佳史扶-安部の3人の関係で安部がポケットへ侵入。遅れて戻った松崎を切り返しで外し中央へ。これが浦和の小泉に当たりオウンゴール。キャンプで取り組んだポケット攻略の形から2023シーズン最初のゴールをゲットした。

試合が動いたあとすぐに両チームとも2枚替え。浦和は小泉とリンセンに代えて関根と興梠。FC東京は佳史扶と仲川に代えて長友と渡邊。交代後のFC東京のWGは右にアダイウトン、左に渡邊。昨季とは逆の組み合わせとなった。

アダイウトンよりも流動的な動きや狭いエリアでの崩し、一言で言うと器用な渡邊を左WGへ。右WGに入ったアダイウトンはディエゴと共にゴール前で待ち構える。後半の攻撃の人員をより適材適所にする交代だ。

そして交代後すぐに追加点。右サイドからのスローインをアダイウトン→ディエゴとキープして逆サイドの渡邊へ。シュートが酒井に当たりゴールに吸い込まれた。

2点を追いかける浦和はCHを1人降ろして後方3-1でビルドアップ。守備時2トップに変えたFC東京に合わせて保持の形を変えてきた。2トップに対してCBとCHの4人で保持を安定。さらにショルツの運ぶドリブルでの前進も可能に。前半の4-2での保持では前にCHがいることが多かったのでショルツはドリブルで運ぶことができなかった。相手目線だとこっちの方が嫌だけど。

後方3-1にしたことで浦和はSBを高い位置へ押し上げる。対してFC東京はアダイウトンと塚川を交代。両SHが攻撃参加するSBに付き添って深い位置まで戻り、試合を締めにかかる。

SHが戻ることで時には5バック、6バックのように見える場面も。バイタルエリア付近は松木と小泉の2CHが高い強度、広いカバーエリアを見せつけて掃除。穴が空いたところは安部やバックラインの選手が見逃さずにしっかりと潰し切る。苦し紛れに上げてくるアーリークロスはスウォビィクが危なげなく処理。

完璧なゲームクローズを見えたFC東京が逃げ切り試合終了。難敵浦和レッズを相手に開幕戦を白星で飾った。

おわりに

浦和を退けて旅は出発。良い船出となった。

まずこの試合で素晴らしかったと感じたのが監督の采配。交代選手が活躍した〜や4-2-3-1にしてアンカー脇を埋めた〜という分かりやすい部分。それに加えてアダイウトンの解放と左サイドの流動性、選手がより活きる役割に変える2枚替え、SHも押し下げた試合の締め方。

昨季を見た感じ、アルベルさんは勝たせる監督というより、育てる監督という印象が強かった。しかし、この試合の采配はまさにチームを勝たせる采配だった。

また、ハーフタイムから投入されて勝利の立役者となったのが安部柊斗。シーズンプレビューの記事でIHはアンカー脇など低い位置でビルドアップに絡む必要が出てくる。IH4人の中で低い位置での組み立てで安部は劣るため、ほかの面で強みを発揮してほしい、と書いた。それをトップ下安部柊斗という形で、開幕戦でいきなり見せてくれた。前線からのプレス、サイドの崩しへの絡み、オウンゴールを誘発した切り返しは見事だった。そんなんできたの?!って感じ。

最後に昨季のシーズンレビューとシーズンプレビューで書いた今季の3つの課題をこの試合から見ていく。その課題はこの3つ。

  1. 低い位置でのビルドアップ。特に内切り外誘導プレスをどう外すか?

  2. 前線からのプレスの質向上

  3. 引かれた相手をどう崩すか?

まず1のビルドアップ。この試合からは正直昨季から大きな改善は見られなかった。浦和のアンカーを消すプレスにサイドの低い位置で嵌る場面が多かった。この感じだと今季も難しい展開を強いられそうだ。鳥栖や湘南など昨季やられた相手からは特に。

次に2のプレス。昨季はWGの外切りプレスを1年通してやってきが、シーズン終盤はこの質が落ちていた印象。どこで嵌めるのかがあまりはっきり見えてこなかった。それがこの試合ではサイドに閉じ込めて嵌めようという狙いは見て取れた。ただ、より質を上げていく必要はある。浦和は両SBがずっとサイドに張っていたので、割と簡単に誘導して閉じ込めることができた。しかし、それでも中盤を使って逃げられる場面もちらほらあったので、より保持の完成度が高いチームと当たった時に簡単に回避される可能性は高い。それでも昨季からの改善、変化は見られた。あと自分はサイドで嵌める守備が好みなので今季の形の方が好きです。

最後に崩しの局面。キャンプで重点的に取り組んだこともあり、この部分は大きく成長が見られた。ディエゴ-仲川の新コンビ。更にSBフィルターでリスク管理をしながら、IHの攻撃参加で破壊力UP。トップ下安部というオプション。まだ狭いエリアでの打開の質は粗い部分があるが、今後に向けて楽しみになるプレーだった。

この試合でアルベルトーキョーの旅2ndシーズンがスタート。厳しい試合、高い壁の連続となるだろうが、また1つ1つ乗り越えていきましょう。そしてその記録をできるだけ多く残していきたいと思います。

ということで今シーズンもどうぞよしなに。

試合結果
2023.2.18
Jリーグ第1節
FC東京 2-0 浦和レッズ
味の素スタジアム

【得点】
FC東京
 66' オウンゴール
 74' 渡邊凌磨

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