見出し画像

鹿島アントラーズvsFC東京〜落ち着けばペースは握れる〜[Jリーグ第31節]

鹿島のもつ煮めっちゃ美味い、ということで鹿島アントラーズ戦です。

代表ウィーク明け。1ヶ月ぶりのホームゲームとなる鹿島アントラーズ。前節のサガン鳥栖戦は先生を許すも、後半に追いつき1-1のドロー。これで岩政さんが就任して以降1勝4分1敗、5試合勝ちなしと負けないけれど勝てない試合が続く。

一方のFC東京。前節は国立競技場での京都サンガF.C.戦。その前の2試合での課題をしっかりと修正。京都のプレスをしっかりと回避しながら、守備でも前からアグレッシブに圧をかけ続けて2-0。50000人の前で会心の勝利をあげた。

前回対戦は16節。渡邊の2ゴールなどで3-1の勝利し、J1通算300勝を達成した。清水戦、鹿島戦とアルベルトーキョーが第1進化を達成した時。そういえばこれが小川諒也の味スタラストゲームだったらしい。鹿島は監督交代があり、この時とは色が変わっている模様。

詳しい試合内容はこちらから ↓

試合概要

メンバー

・鹿島アントラーズ
前節リーグ初出場となった早川が2試合連続でスタメン。変更点は和泉と荒木に代わり名古と仲間の2点。名古は今季初スタメンでアンカー、前節はアンカーだったピトゥカがIHで起用された。

・FC東京
森重が出場停止で木村が復帰後初スタメン。復帰前合わせても初かもしれん。代表帰りの長友はベンチスタートで右SBに中村が起用。安部と紺野がベンチに戻ってきた。

(1)保持の安定は必然

前半に主導権を握ったのはFC東京。最終ラインからのビルドアップで鹿島を押し込んでいく。鹿島のシステムは4-3-1-2。中央に人が多い分、サイドは手薄になる。ここは当然FC東京もスカウティング済み。佳史扶がその辺りについて試合後インタビューで言及している。

Q、サイドから果敢にクロスをあげていたと思いますが狙いがあったのでしょうか。
A、試合前のスカウティングのところでサイドのスペースが空くことがわかっていました。そこをどんどん突こうと監督からも言われていましたし、そこを前半から狙っていて、クロスを上げるなかで上手くいかないこともありましたが、クロスのこぼれからシュートに持ち込むところなどフィニッシュまでいけていたので良かったと思いますし、狙い通りでした。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/304

このようにFC東京はサイドからの前進を狙っていく。ということで鹿島の守備とFC東京のビルドアップを詳しく。

CBの木本と木村にはCFのカイキと鈴木でプレス。アンカーの東はトップ下の仲間がマークにつく。ここは上手く抑えることができる噛み合わせとなっている。対照的に空いてくるのSBのところ。2トップのプレスはCBに対して内切りで来るため、SBへのパスコースは切られていない。

ここのSBに鹿島はSBが出て来るのではなく、IHの樋口とピトゥカがスライドして対応する。ただし、このIHの横スライドに対してアンカーの名古は連動せずに、中央に留まる。そのため、FC東京はサイドのところで鹿島のIHにSBとIHで2対1を作り出して前進することができた。

13分50秒の場面

これが上手くサイドで数的優位を作ることができたパターン。鹿島のIHがSBまで出て来れば、IHはフリーになる。鹿島としては、簡単に数的優位を作らせたくない。そのため、IHがSBまで出ていった時に空いたIHを消す役割をCFが担う。

CFがCBに内切りプレスでSBへ誘導する。SBに対してはIHが出ていくため、FC東京のIHが空く。鹿島はこのフリーになったIHをCFが少し下がり、パスコースを消せる立ち位置を取ることで対応した。あくまでもアンカーはスライドせずに中央に留まらせる。

5分30秒の場面

このように鹿島はCFを下げて空いたIHをケアする。しかし、IHのケアにCFを下げることで逆にCBはフリーとなる。そのため、FC東京側から見ればCBに戻してやり直す選択肢は与えられている状態。これが前半のFC東京がボール保持を安定させて、主導権を握ることができた要因。空いているサイドから前進を狙う。たとえ詰まって前進できなくても、CBまで一度戻してやり直す。このように無理をせずに、落ち着いてボールを動かしながら鹿島を敵陣に押し込むことができた。

また、鹿島が自陣でセットした時の守備もこれと同じ形。アンカーは基本的にはスライドせずに、CFがハーフスペースに顔を出す選手を消す。逆に言うと、CFの戻りが甘かったり、間に合わずに消しきれないと、ハーフスペースでフリーの選手を作ることができる。ここにSBから斜めのパスが刺さった時が、FC東京がゴールに近づける場面。

22分00秒の場面。佳史扶がサイドでボールを持つ。樋口が前に出ていたため、SBの広瀬が対応。アンカーの名古はスライドしないため、鈴木が下がってハーフスペースを取るレアンドロを消そうとするも消しきれず。フリーのレアンドロがドリブルで仕掛けて、ペナルティエリアまで侵入できた。

22分00秒の場面

左サイドでは主にレアンドロが斜めのパスを受けてドリブルで仕掛ける。対して右サイドではパスを引き取るのが塚川やディエゴだったので、広い逆サイドに展開してクロスをあげる形が多かった。

このように敵陣でもサイドで詰まったら、CBに戻してやり直し。逆サイドに展開。ボールを動かして、鹿島のCFが中央を消しきれなかったときに、斜めに刺してゴールに迫る!というのが前半のFC東京の攻撃。また、その中で背後へ飛び出す動きも有効だった。

27分30秒。右サイドで詰まったので中村が木本に戻してやり直す。バックパスで後ろに戻したことで、鹿島はディフェンスラインを上げる。これに合わせて松木が背後に飛び出し、木本からのピンポイントパスを受けてシュートまで繋げた。

27分30秒の場面

ディフェンスラインを上げる動きと入れ替わるように松木が飛び出したので、鹿島は対応できない。完全に置き去り。これは決めて欲しかった!逆にこれを決めるようになったら、松木さんはもう1段階上の化け物選手になるね。すでに化け物レベルだけど。

ここでちょっと前節の話。前節の相手、京都サンガもFWの内切り外誘導から、SBにIHが出ていく形だった。違うのは空いたIHにアンカーがスライド、FWは後ろのコースを消すところ。SBに誘導したら選択肢を全消し、閉じ込めるて奪う!っていうのが京都の守備。これで後半は保持が安定しなかった。

後半の京都のプレス。使い回し。

対して鹿島は空いたIHにCFを下げる。アンカーを残して中央を固めつつ、封鎖する!っていう守備。同じ外誘導でも、SBのところで奪うことを目的としてない。その分、FC東京のボール保持は安定した。

鹿島のボール奪取で多かったのが、斜めのパスを上手く後ろから潰せた時。特に左サイド(FC東京の右サイド)の方。ここから広い右サイドに渡して、カウンターに繋げたかったが、1本目のパスがこの試合はことごとくずれる。

また、4-3-1-2というシステム上サイドの高い位置に人がいないため、奪って鈴木に繋がってもそこから前に進めない。鈴木の強さでキープできても、遅らせられる。その間にFC東京は帰陣して、速いカウンターに繋がらなかった。

(2)前進できない鹿島の原因

次に鹿島のボール保持。

FC東京はこの試合も高い位置からプレス。最近ずっとこの形だし前からプレスに出るのが、アルベルさんの目指す守備っぽい。CFのディエゴがアンカーの名古をマーク。WGのレアンドロと渡邊でCBの関川と三竿に外切りプレス。いつも通りの形。

これに対して鹿島は右IHの樋口が降りてきてアンカーの横くらいに立ち位置を取る。ここで噛み合わせをずらしていきたいって感じの狙い。松木が樋口まで出て来れば、アンカー脇にスペースができてる。

6分30秒。樋口が名古の脇まで降りて、松木を引き付ける。これによって広がったアンカー脇のスペースに仲間が顔を出し木村を引っ張り出す。SBの広瀬に落として前向き。裏へ蹴ってCFが走り込んだ。

6分30秒の場面

多分、鹿島はこういう形を作りたかったんだと思う。ただ、これができたのはこの1回のみ。それ以外の場面では降りてくる樋口を利用して前進することができなかった。

樋口をアンカー脇に降ろすことで松木を引っ張り出したい。それが上の形。もし松木がついてこなければ、FC東京のマークがずれて数的優位を作ることができる。

しかし、降りて来る樋口に対して、関川と名古の距離が近い。そのため、レアンドロとディエゴは自分のマーク担当の関川と名古を見ながら樋口にも対応できた。2枚で3枚に対応可能。数的には不利だけど問題ないって感じ。そのため、鹿島は樋口を降ろしても、松木を引っ張り出せないし、数的優位も活かせなかった。

25分00秒の場面

樋口が降りてきた時には、名古がアンカーポジションから左にずれたり関川がもっとサイドに開くとかが必要だったと思う。そうすればレアンドロとディエゴの2枚では対応しきれなくなるし、樋口のプレーエリアを広げることもできる。ただ、そういう修正は結局ないまま、前半は終了した。

ビルドアップを修正するなら、、、

(3)サイドの優位を奪いとる

後半。両チームとも選手交代はないが、鹿島はシステムを変更。カイキが左SH、樋口が右SH。名古とピトゥカの2CHでトップ下仲間、鈴木が1トップの4-2-3-1っぽい形だと思う。多分。

まず、変わったのが守備面。前半は4-3-1-2というシステムの構造上できるサイドのスペースを中心に前進、保持を安定させていたFC東京。しかし後半、鹿島が4-2-3-1(守備時4-4-2)でサイドに人を置き、スペースを潰してきたことでサイドからの前進ができなくなる。もっと言えばサイドで時間を生み出すこともできなくなった。これでFC東京のボール保持の安定は失われ、鹿島がボールを握る時間が増える。

で、鹿島のボール保持。システムは4-2-3-1でピトゥカと名古の2CHに変えた。しかし、保持時にはピトゥカがアンカーポジション、名古が左IHのような立ち位置を取った。この2人の役割は前半とちょうど入れ替わっている感じ。

左サイドではSHに変わったカイキがサイドに張り、名古、安西と三角形を作る。この3枚に鈴木や仲間が4枚目として絡みながらサイドを攻略していく。一方、右サイドはSBの広瀬が大外、SHの樋口が内側を取りながら同じく鈴木、仲間が絡んでいく。

後半の鹿島の配置

前半はサイドに人数をかけず、SBしかいないことが多かった鹿島。そのため、サイドから良い形でクロス、シュートまでもっていく場面は少なかった。

しかし、後半は特に人数をかけた左サイドを中心にFC東京を押し込み、開始僅か20秒で最初のシュートを放つ。ここもサイドの三角形で塚川をサイドに引き出して、ハーフスペースでフリーになった名古がミドルシュート。このシュートから鹿島が主導権を握っていく。

ただ、後半の中盤からは再びカイキが中央寄りでプレーする時間が増えるようになる。この理由はちょっと分からない。岩政さんの指示というよりも、カイキ自身が中央でプレーしたい気持ちがあるような気はした。なんとなく。根拠はない。

このカイキのプレーエリアとマークが定まってきて守り慣れてきたことから、サイドから攻略される場面は減ってきたFC東京。あと怖かったのはネガティブトランジション(攻→守の切り替え)の局面。

73分にレアンドロをベンチに下げて以降、右WGの渡邊が左サイドまでポジションを移動する場面が出て来る。このポジション移動は保持の局面においては、マークをずらしてビルドアップの出口となったり、枚数をかけてサイドの攻略に繋がる。しかし、渡邊がサイドを移動した時にボールロストが起きると、逆サイドの広いスペースからカウンターを喰らうことに繋がる。

76分40秒の場面

この試合に関しては渡邊がサイドを移動するメリットよりもデメリットの方が上回っていた感じ。ただ、このカウンターも中村がしっかり止めていた。SBの選手で中村を1対1で突破できる選手はなかなかいない。こういう面でもカイキがサイドにいた方が怖いと感じた理由。

一進一退の攻防が続く中、83分にFC東京が先制。ここ数試合あまり良い仕事ができていなかった安部がボレーで叩き込んだ。スーペルゴラッソ。レアンドロに続いて2試合連続。

得点後、エヴェラウド投入しゴール前の厚みを増やしてきた鹿島に対して、5バックに変えてしのぎ切ったFC東京。鹿島相手にシーズンダブルを達成して2連勝を飾った。

おわりに

鹿島に競り勝って2連勝。後半は苦しめられたが、前半の内容は今季最高レベルと言っていいものだった。無理せずにボールを動かしながら相手を揺さぶり、穴が開いたら刺す。45分間自分たちのペースで試合を進めることができた。

この勝利で4試合残して残留が確定。開幕当初からボール保持の戦い方にシフトするのではなく、徐々に保持の色に変えていった結果だろう。アルベルさんの手腕によって、残留争いに巻き込まれることなかった。

流石に降格の可能性が出て来ると結果より内容だなんて言えない。そうすると現実的な戦い方をしなければならなくなる。例えば少し前の横浜FM相手に苦しんでもボール保持に挑戦!なんてことはできない。そう考えると少しずつ時間をかけて落とし込んでいるように見えて、これが一番の近道なのかもしれない。

試合結果
2022.10.1
Jリーグ第31節
鹿島アントラーズ 0-1 FC東京
県立カシマサッカースタジアム

【得点】
FC東京
 83' 安部柊斗


この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?