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川崎フロンターレvsFC東京~旅の始まり~[J1リーグ第1節]

さあFC東京新時代の幕開けです!

メンバー

川崎はスーパーカップの後半と同じメンバー。
FC東京はコロナの影響で森重、中村、東、高萩、山下、アダイウトンが欠場。CBは木本とエンリケの新加入コンビ。右SBには中盤からコンバートされた渡邊。そして松木が高卒で開幕戦スタメンデビューとなった。

(1)支配された20分

・FC東京のビルドアップ
FC東京は立ち上がりから川崎のプレスを回避できず、危ないボールロストを繰り返した。

川崎はWGの家長とマルシーニョがCBにSBのコースを切りながらプレス。IHにはIHを当ててくる形だった。アンカーの青木にはLダミアン、もしくはLダミアンがエンリケの方に出た時はチャナティップがついた。この場合、FC東京の選手で浮いているのは両SB。なのでFC東京はSB、WG裏のエリアをビルドアップの出口としたい。

川崎のプレス
WGは外切りのプレス、中盤はマンツーマン気味

ここに届ける形の1つとしてIHに当ててワンタッチでWG裏のSBへというものがあるがこの形は見られなかった。松木は高めの位置にいることが多く、安部は低めの位置にいるため脇坂にピッタリマークにつかれていた。8分に安部が少し高めの位置から下がってきて、脇坂のマークを外してワンタッチで青木へはたく場面があったが、パスがズレてボールを失っている。なのでこの形は技術的に出来なかったという見方もできる。

プレス回避の形としては小川を中央へ絞らせる形もあってもよかった。安部を高い位置まで上げて脇坂を押し下げ、それによってできたアンカー脇のスペースに小川が絞ってパスを引き出すことができる。ここのコースを家長が切ってきたらサイドへのコースができるので、そこに永井が下がったり安部が開いたりといったプレス回避もある。

SBがアンカー脇に絞るプレス回避

また、小川に脇坂が出て来たら、その裏にスペースで数的優位ができる。そこにロングボールを送って、セカンドボールの広いあいに持ち込むこともできる。ディエゴや安部の強度を考えれば数的にも質的にも有利な勝負になる。

脇坂が出て来たら前線で有利な勝負に持ち込める

小川が内側に絞ることはあったが、そこを有効に使う場面はなかった。この辺りは今季1年間で取り組んでいくのだろう。

どちらにしてもIH経由でWG裏のエリアへという形はやらなかった(出来なかった)FC東京は、GKから中距離のパスでWG裏のエリアを狙う形を取った。しかし、こちらも上手く機能しなかった。単純にスウォビィクのキックの精度が低く、パスがつながらなかった。ここだけ見ると何で足元上手いGKじゃなくてスウォビィク取ったんだって言いたくなるけど、それ以上に止めてくれるから目を瞑ろう。

GKからのパスをカットされてから何度もピンチを招いたが、エンリケやスウォビィクの守備能力の高さで無失点でしのぎ切った。

・川崎の狙い
川崎が狙ってきたのが右SBの裏のスペース。SBとCB間、渡邊と木本の間のゲートを5分00秒、5分30秒、10分40秒と立て続けに通された。ここを通された原因が渡辺の僅かなポジショニング。特に5分30秒の場面がわかりやすいけど、マルシーニョの足元に入れられるのを警戒してか少しサイドに寄ってしまった。それによって渡邊と木本の距離が少し開き間を通されやすくなった。

ここはSB-CB間のゲートを閉じる方を優先すべきだった。WGの足元に通される分にはパスが出てからでいいし、たとえ交わされたとしても少し遅らせることができればCBのカバーも間に合う。それよりもパスでゲートを通される方が直接的にチャンスにつながりやすい。この辺りの守備は本職じゃない部分が出たって感じだった。

(2)FC東京の狙い

20分頃からFC東京は攻撃の形を変えてきた。GKへのバックパスをなるべく避けるようにし、ビルドアップが詰まった時には代わりにディエゴのところへシンプルにボールを届ける場面が増えた。

また、川崎のプレスが弱まったこともあり、低い位置でのボールロストは減った。ボールロストが減ったことによってビルドアップの出口としていたWG裏のエリアを取ることができるようになった。ただ、ここを取った場面はショートカウンター気味で川崎のバランスが崩れている時が多かったため、セットしている相手を崩すの形はまだ落とし込めていないといった感じ。ともかくWG裏のエリアを取れるようになったことで、狙い通りの攻撃ができるようになった。

WG裏を取られると川崎はIHが横にスライドして対応してくる。このIHをサイドに引っ張り出すのがFC東京の狙いだった。IHをサイドに引っ張り出せば川崎のアンカーの周辺にはスペースができる。サイドの密集を抜け出して、このアンカー周辺からミドルシュートなどといった形を狙っていたと思う。レアンドロと松木を右サイドで起用した理由はこの狙いにつながってくる。左サイドでWG裏のエリアを取り前進して密集を抜け出す。そこから中央や右サイドにいる得点力の高いレアンドロや松木へ展開してシュートを打つという考えがあったスタメンだったと感じた。

この狙い通りの形がでたのが35分のレアンドロのミドルシュートの場面。
川崎のクロスボールを木本がクリア気味のパスでサイドの永井へ。カウンターは遅らせられるも小川、安部とつないで戻ってきた脇坂をサイドに引っ張り出す。これによってできたスペースで青木がパスを受けてドリブルで持ち運び家長、脇坂、山根の3人を引き付ける。この間に安部が山根の背後を取り密集を脱出する。

35分レアンドロのミドルシュートの場面①

密集を脱出した安部から中央のレアンドロへ。この時、バイタルエリアには大島しかいない、つまりアンカー周辺には大きなスペースができていた。さらにディエゴが裏を狙って走ることでCB2人を押し下げたことでよりスペースが広がる。パスを受けたレアンドロはフリーで余裕がありすぎる状況。ミドルシュートを放つが惜しくも枠を外れた。

35分レアンドロのミドルシュートの場面②

これ以外にも42分のディエゴのミドルシュートや57分10秒のレアンドロがファールを貰った場面(永井のヘディングが決まったやつ)などもこれに近い形だった。この部分は攻撃面で最も狙い通りに行っていたと思う。

(3)可変を使った守備

最後にFC東京の守備を振り返っていこう。

FC東京は守備時には4-3-3からディエゴとレアンドロを2トップとした4-4-2に可変した。

右SBの山根には永井がつき、CBにはディエゴとレアンドロが積極的にプレスをかけた。ちなみにこのプレスは内側からのプレスになることが多かった。左SBの登里の担当は松木だった。しかし、最初からサイドにいるのではなく、最初は中央寄りに立ちサイドにパスが出そうなタイミングで出ていくという守備だった。これは川崎はCHが3枚なのに対してFC東京は可変により2枚になっているため、松木が最初からサイドに行ってしまうと中盤が完全に数的不利になるからだと考えられる。高卒ルーキーで開幕戦スタメン出場し、1人で2人を見るというタスクを任される松木。普通にヤバいね。

FC東京の可変守備

ただこの守備には問題点もあった。松木が中央からサイドの登里へ出ていこうとする時に一瞬だけチャナッティップが空くことがある。また先ほども書いたがレアンドロは内側からの守備になっているため車屋の利き足を切れていない。そのためこの一瞬のタイミングでも逃さずに正確な縦パスを通すことができた。

しかし、川崎はこの僅かな問題点を最大限に活かすことができなかった。と言うのもCFのLダミアンは中央に居座り左WGのマルシーニョはサイドに張っていた。そのためチャナッティップが前を向いてもハーフスペースのところにパスを受ける選手がいなかった。FC東京にとっては少し助かった形となった。

おわりに

「内容は勝ってたけどなぁ」FC東京サポーターが口を揃えてこの言葉を言う日が来るとは、、、

王者川崎フロンターレ相手に守るのではなく正面からぶつかりに行った。多くのチャンスを作り、互角以上の戦いを演じた。しかし、最後はセットプレー一発で失点し負けた。この試合を勝ち切るのがJリーグ2連覇中の真の強いチーム。負けはしたが目指す方向性は見えた。

FC東京の旅は始まったばかりだ。

試合結果

2022.2.18
J1リーグ第1節
川崎フロンターレ 1-0 FC東京
等々力陸上競技場

【得点】
川崎
 81' L.ダミアン(1-0)
FC東京
 なし

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