川崎フロンターレvsFC東京~根付いていないスタイル~[Jリーグ第5節]
代表ウィーク明けの3連戦。多摩川クラシコでスタートです。
メンバー
・川崎フロンターレ
3連敗中の川崎。鹿島戦からスタメン5人変更し、今季初の4-2-3-1でスタート。瀬川と遠野が初のスタメン。マルシーニョは出場停止だが、エリソンが3試合ぶりの復帰。
・FC東京
前節福岡戦と同じセットで代表組に休みなし。小柏とディエゴが復帰して火力もりもりのベンチに。エンリケはどこへ。
拘りすぎた狙い撃ち
FC東京の保持から。
川崎はトップ下の脇坂を押し出して4-4-2で被保持。2トップがCHを背中で消しながらCBへと向かう。
対してFC東京は福岡戦と同じくCBとCHでビルドアップ。近い距離でボールと人を動かしながら2トップを外して前進を図る。ということで初っ端の切り抜き解説です。
切り抜き解説(6分40秒~)
6分40秒の場面。木本と高で保持。
高は脇坂を引き付けてから木本へ預け、木本に時間を与える。預けたあと高はポジションを取り直して瀬古の前に登場して影響を与え、小泉をマークから解放。時間を貰った木本から仲川へ縦パス、レイオフで解放された小泉が受けて広い逆サイドへ。佳史扶が運んで一気に敵陣まで前進した。
ボールに絡んだプレーは僅かだが、この前進を成立させたのは間違いなく高宇洋。マジでヤン。
この場面でもそうだが、最終的には左サイドからの前進が中心となったFC東京。瀬川vs遠藤のところから崩していきたい狙いが見えた。マッチアップではここの1on1が最も質的優位を取れているのは事実。だが、この狙いに拘りすぎた感があった。
17分10秒の場面では木本から波多野を経由して森重へ展開。あ、ここの波多野のワンタッチはめちゃよかった。前が開けた森重はドリブルで運んで前進し、ライン間の仲川へ。仲川は左サイドからの攻撃を選択したが川崎にブロックを整えられた。
この場面、仲川が受けたときに高が中央で瀬古の背中を取っている。こっちを選べていれば高が中央で持ち松木と遠藤が左右から背後を狙うなどより良い攻撃に移れた。優位のマッチアップを狙い撃つのは良いが、その狙いに拘りすぎてゴールに迫る機会を失っていた感じである。
川崎が常に強くプレスに向かってきたわけではなかったため、ボールを動かしながらミドルサードまで進むことはできたFC東京。しかし、コンパクトな4-4のブロックで構える川崎にライン間の荒木は包囲網を張られてボールを受けることができず。
図
遠藤が左サイドからクロスまで何度か繋げていたが、跳ね返され続けた。そもそもFC東京にはペナルティエリア内でターゲットになる選手がいないため、単純なクロスは策としては不十分。荒木の魔法が使えないときにどうゴールまで迫るかが見えなかった。
背中で消しきれずに
一方で川崎の保持。
FC東京も川崎と同じく4-4-2で被保持。松木と荒木の2トップでCHを消しつつCBに向かいサイドに誘導。SBのところではめにいく形を狙う。また、CHの高と小泉は縦関係。高が片方のCHに出て、小泉が後方でライン間をケアしつつトップ下の脇坂を捕まえる。
図
2トップがCHをしっかり背中で消すことができているときはサイドに誘導してはめることができていたFC東京。特に遠野のところで長友が出て潰しカウンターへ移行することが多かった。37歳、代表帰りでも関係なし。
しかし、2トップがCHを消しきれていないことが割と多い。脇坂がライン間をうろうろするため小泉は前に出てくることが難しく、高1人では瀬古と橘田を捕まえ切ることができない。遠藤が絞って加勢してくれていたが、自分のマークを見ながらの対応になるためバッチリ捕まえることはできずに、CHを使われてプレスを回避される場面も少なくない。
図
また、CHが降りてCBともに後方3枚にすることで高井が2トップの脇から運んでいく形も見られ、FC東京のプレスがはまっていたとは言い難い。
ミドルサードまで運んだ川崎は左サイドを中心にボールを保持。右WGの家長が頻繁に出張してきて人数をかけ、人を集めたところで右サイドで張る瀬川まで展開。佳史扶との1on1からクロスまで繋げてくる。
図
自陣で構える展開では特に問題なく守ることができていたFC東京ではあったが、34分に失点。左サイドを突破した三浦がクロス。ニアで木本が懸命に足を伸ばして触るがクリアし切れず。波多野の逆を取りポストに当たったこぼれ球を脇坂が押し込んだ。
ほぼオウンゴールとなってしまった木本だが、これは仕方なし。それよりもあげるなら仲川の方で高井にフラフラ向かう必要があったのか?って部分。この守備では高井にはプレッシャーになっていないし、出ていったことで大外の長友は完全に三浦と1対1になる状況。仲川の矢印が1人だけずれている感じがある。
先制したあとの川崎は2トップが中盤を消すことを優先し、CBにはある程度持たせるようになる。こうなったときに浮き彫りになるのが森重と木本がドリブルで運ぶことができない問題。
プレスにこないならドリブルで運んで2トップを引き付けてみたり。また後方3枚にして2トップ脇から運んでWGを引き付けたりなどができればよいが、森重と木本は自分がフリーの状態でもSBに渡してしまう。受け取るSBはWGに狙われておりCBよりも厳しい状況。自らはまりにいってしまうような保持となりチャンスを作れないまま前半を終える。
前半とは異なる課題
川崎が1点リードで後半。
後半は再び2トップのプレス強度を上げてきた川崎。2トップが間に合わないときには左WGの遠野も木本へと向かう振る舞いを見せる。
時間を奪われたCBは明らかに高と小泉を使うことができなくなり、ロングボールを蹴らされたり、SBではまる外回りのビルドアップに。そして相変わらずリリースが早い。
50分30秒の場面では遠野が木本へとプレス。このとき、もっと遠野を引き付けることができれば長友はフリーで受けることができた。しかし、木本のリリースが早いため遠野のプレスバックが間に合ってしまう。
図
この辺りは前後半異なる形でCBのビルドアップの問題が浮き彫りとなった。ただ、その中でも違いを見せてきたのが遠藤渓太。縦に急いだ結果、相手を背負った厳しい状況で受けてもキープしてからテンポを落ち着かせることでFC東京全体を押し上げる時間を作り出し、敵陣で保持できる環境を作り出していた。
しかし、押し込んだ展開からシュートまで辿り着けないFC東京。荒木は前半に引き続き包囲網に張られて魔法を使えない。
両SBと小泉も参加して攻撃に人数をかけたことで後方はCBと高の3人のみになり、SB裏の広いスペースから川崎のカウンターを喰らうようになる。
対照的にFC東京のカウンターは不発。高井と橘田、瀬古のCHが中央で起点を潰し続けたことで自陣から脱出することさえ困難な展開となった。
流れを変えたいFC東京は64分に3枚替えでディエゴ、小柏、ジャジャシルバを投入。この試合ではパフォーマンスのよくなかった仲川ではなく、遠藤とジャジャを代えたあたりからも左サイドから崩したい意図が見える。まあ、同じタイミングで瀬川も交代してるんですけど。
この交代でアバウトに前線に送ったボールでもパワーやスピードでなんとかできる環境を作り出したFC東京。ここから反撃に出たいところだったが、直後の72分に遠野のパスから抜け出したエリソンを波多野が倒して一発退場。早くも今季2度目のDOGSOで1人少ない状況となる。DOGSOは川崎のもののはずでは、、
退場後は4-4-1か4-3-2で守るFC東京。なんとか耐えて交代で入った3人の一発に賭けるが、83分に川﨑が追加点。高井のボールに抜け出した山内が一気にゴール前へ。切り返しで木本を交わし、最後は山田が押し込んだ。
逆に交代で入った2人に一発をもらったFC東京。ずっと足を痛めていた木本にとって、最後の1対1は無理ゲーである。
これで終戦。アディショナルタイムには橘田にも一撃喰らって3-0。完敗です。
おわりに
完敗です。
退場者が出たことを考えると3-0という点差は致し方なし。それより厳しいのは内容である。
前半は悪くはなかった。シュートまでは辿り着けなかったが保持のスタイルは継続して見えた。そもそも得点の面に関しては前節がうまくいきすぎた。
問題は後半。高の試合後インタビューによると追いかける展開となり縦に急いでしまったような感じもあるのかもしれないが、1点差で45分あるのに急ぐ必要があるのか?
じっくり攻めていけば少ないチャンスで1点2点と取る力がFC東京にはある。それにもかかわらず縦に急いでしまうというのは、まだスタイルが根付いていないといくことである。
点差よりも、挑戦せずに逃げてしまったことの方が残念だったよ。俺は。
試合結果
2024.3.30
川崎フロンターレ 3-0 FC東京
Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎フロンターレ
34' 脇坂泰人
83' 山田新
90+2' 橘田健人