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FC東京×名古屋グランパス〜再出発 新たな船長を迎えて〜[Jリーグ第18節]

2023年のJリーグは早くも後半戦。

前半戦終了のタイミングでアルベル監督を解任したFC東京。新監督にはピーター・クラモフスキーが就任。新たな船長と共に旅は再出発である。そしてひかるのレビューも再出発です。では早速。

スタメン

・FC東京
ピータートーキョー初陣は4-2-3-1を採用。ルヴァン杯の京都戦からの変更は1枚のみ。右SBには小泉が入り、塚川に代えて俵積田が左SH。俵積田は7節の湘南戦以来2ヶ月半ぶりのスタメン。きたきた。

・名古屋グランパス
4連勝中の名古屋。前節からの変更は丸山に代えて野上の1枚のみ。それ以外の10人は5試合連続で同じメンツ。

(1)狙いを上回ったエンリケ

保持時には後方から繋いでいく両チーム。まずは名古屋の保持、FC東京の被保持から。

名古屋の保持に対して高い位置からプレスに出ていくFC東京。ディエゴと渡邊で中央を隠しながら、左右のCBの藤井と野上にはWGの仲川と俵積田が縦切りでプレス。名古屋の前進を外回りに誘導していく。誘導先のWBにはSBが出ていく感じ。

名古屋のビルドアップを外回りにすることには成功したFC東京。しかし、CHの稲垣と米本がWBに対してワンタッチで貰える位置でサポートに入ったことで上手く中央に逃げられ、サイドで嵌めきることはできなかった。

そもそも、名古屋はこの外回りの前進をもともとデザインしていたような振る舞い。CBからWBへと繋ぎ、CHが引き受けて前線へ送る形を繰り返していた。この前進のメリットとしてあげられるのは相手を引き付けることにより、FWにスペースを提供できること。WBやCHのところにFC東京のSBやCHを引き出させることで、SB裏や中央にスペースができる。そのスペースをマテウス、永井、ユンカーの強力3トップが使っていく。

名古屋の前進

FC東京としてはWBのところでSBが強く当たって潰すことができれば良かったが、小泉と長友としては当然自分たちが出ていった背後のスペースは気になるわけで。しかもWBには後ろ向きの状態でワンタッチで逃げられるとなると、潰しきれなかったのも致し方ないと言った感じ。

3トップにボールを送られるところまでは持って行かれたFC東京。しかし、送った先をしっかりと抑えることはできた。その要因としてあげられるのは2つ。

1つはCHの稲垣、米本に時間を与えなかったこと。CHまで届けることは許したが、松木と安部が素早く寄せたことで時間を与えず。結果、米本と稲垣に精度の高いボールを送らせなかった。

そして2つ目は何といってもCB陣、特にエンリケの貢献。前への潰し、背後への競争。ユンカーやマテウスが相手でも完璧に封じ切った。

そして、先制点はエンリケの潰しから。名古屋は野上から和泉を経由して稲垣へ送る。上で書いた通りの動かし方。稲垣には松木が素早く寄せたことで時間を与えず、マテウスへ送られた雑なボールをエンリケが跳ね返す。セカンドを松木と安部で拾って渡邊がCH脇で引き取る。渡邊はディエゴへ送り、反転からのシュートでネットを揺らした。

良い守備、トランジションから先制。エースがピータートーキョー初ゴールを奪ったFC東京。次は保持の局面。

(2)右で掻い潜り左へ開放

FC東京の保持に対して名古屋は永井とユンカーがCBへと向かっていく。マテウスはトップ下の位置で相手を監視するというよりかは、中盤のラインに入り、5-3-2の形になる感じ。2トップとCHで中央を封鎖して、SBへと誘導したらWBが出てきて嵌めにいく設定。

対してFC東京。最終ラインからのビルドアップにおいて右サイドから前進を試みる。この右からのビルドアップにおいて違いを見せたのが、今季初めてスタートから右SB に入った小泉。

名古屋はFWが森重に中からプレスをかけてサイドへと誘導。誘導先の小泉には森下が出てきて嵌めにかかる。これまでのFC東京はこのSBのところで簡単に嵌ってボールを失うことが多かった。

しかし、小泉は相手と正体してサイドの仲川を使ったり、松木との関係でプレスをかいくぐったり、時には1人で剥がして運んだり。森重から嵌めパスが飛んできても、上手く回避して見せた。

小泉のプレーで右サイドから名古屋の網を掻い潜ったFC東京は広い左サイドへの展開を狙う。この時、中央で引き取り役となるのが安部と長友の2人。2人で引き取り役を担うことで、中央のエリアをカバーするマテウスは抑えきることができない。全体が(名古屋の)左サイドにスライドし圧縮している中で右CBの野上は縦にスライドすることはできず、またWBの和泉も俵積田にピン止めされている。そのため、名古屋は最終ラインからマテウスの迎撃援護役を用意できなかった。

FC東京の前進

右サイドから中央で引き取った安部と長友は左サイドに張る俵積田へと展開。広いエリアで俵積田が仕掛ける舞台を演出できるボールの動かし方が見られたのは良かった点。ただ、小泉の働きありきな感じなので、彼がいない時、中盤で起用されている時はどうします?というクエスチョンは残る。

左サイドまで展開したFC東京。そこからは俵積田が縦に仕掛けたり、斜めに切り込んだり。またそれ以外では、渡邊や仲川が名古屋のCH脇を取る場面も見られた。マテウスが中盤のラインに入るといっても、守備者として完全に計算できる存在ではない感じ。そのため、稲垣と米本の2人で横幅を守っている感が強く、中央にスペースができることが多かった。

名古屋はこのCH脇を取られた時の対応が定まらなかった印象。バックラインから援護に出て来ることもできず。バイタルエリアで前を向かれてシュートを打たれたり、横に動かされたりとFC東京に自由を与えてしまった。得点シーンで渡邊が受けた場面のように。

(3)止めて背後へ

1-0でFC東京がリードして前半終了。名古屋はハーフタイムで米本に代えて山田を投入して後半スタート。

後半も試合の情勢は大きく変わらず。変化で言えばFC東京はCBが永井とユンカーを捕まえる意識を徹底した印象。前半に一度永井を離したことでマテウスの決定機を許した森重だったが、後半はしっかりと潰しきった。エンリケは言うまでもなく。スーパー。

対して名古屋。CBがFWを離さず、前に潰しに出て来るならその背後を取りましょうという振る舞い。永井、マテウス、ユンカーの前線3人でCBを中央に止めて、代わりにCHの稲垣、山田がSB裏に飛び出して行く。

止めて背後へ

前への潰しと背後のカバーを両立するのはこの日のスーパーエンリケでも厳しいタスク。しかし、ここをカバーしきったのが松木と安部のCHコンビ。強度、カバー範囲、セカンドボールの回収などエンリケと共に圧倒的。

そして追加点はこの2人から。松木と安部の2人で左サイドを突破。安部の丁寧なクロスに合わせたディエゴが再びネットを揺らした。

名古屋としては松木に2人が引っ張られ、安部を簡単にフリーにしてしまった。しかも2人で向かって行った松木はほとんどプレッシャーを感じていなかった。山田と貴田としては悔いが残る部分だろう。

2点リードとなった後も集中力を切らさなかったFC東京。カウンターを狙いつつもしっかりと試合を締めてゲームセット。

ピータートーキョーの初陣で勝利。そして、健太さん相手に初勝利。新たな船出を飾った。

おわりに

監督交代という大きな方法転換を迎えたが、それでも旅は続いていく。もう引き返すことはできない。

ということで。みなさんまたこれからどうぞよしなに🙇🏻

試合結果
2023.6.24
FC東京 2-0 名古屋グランパス
味の素スタジアム

【得点者】
 18' ディエゴオリヴェイラ
 80' ディエゴオリヴェイラ

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