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FC東京vs湘南ベルマーレ~それやられるとちょっと無理~[Jリーグ第32節]

アダイウトンの子どもめっちゃくちゃアダイウトン、ということで湘南ベルマーレ戦です。

代表ウィーク明け2試合目。横浜Fマリノス戦以来、約1か月ぶりの味スタでの試合。

FC東京の前節は鹿島アントラーズ戦。前半は焦らず落ち着いてボールを動かしながら試合を支配。後半は鹿島の修正によって五分五分の展開となるも、最後は安部のゴラッソで競り勝ち2連勝を飾った。

湘南ベルマーレの前節はセレッソ大阪戦。後半アディショナルタイムにPKで先制を許すも、その後追いつき1-1。これで3試合連続の引き分け。また、直近5試合の内、川崎、清水、C大阪戦で後半アディショナルタイムに勝ち越し・同点ゴールを挙げるなど、残留に向けて脅威の粘り強さを見せている。

前回対戦は17節。前半戦最後の試合。コンディションに問題があったのか、持ち味の強度を見せられずに0-2で敗戦。個人的にはこれが今季ワーストの試合。因みに今季はルヴァン杯でも対戦があり、湘南が2勝1敗で勝ち越している。

詳しい試合内容はこちらから ↓

試合概要

メンバー

・FC東京
森重が出場停止から復帰。前節決勝ゴールを決めた安部が3試合ぶりのスタメン。ベンチも含めて、かなりメンバーは固まってきた感じ。

・湘南ベルマーレ
前節からの変更は3点。舘が2試合ぶりのスタメン。2トップはウェリントンとタリクのコンビ。ウェリントンのスタメンは今季5試合目。また、タリクのCFでのスタメンは第2節以来と超久しぶり。

(1)そのレベルはまだ厳しい

前半は湘南ペース。FC東京のビルドアップに対する前線からのハイプレスによって、守備から試合の主導権を握る。

湘南の守備の狙いはFC東京のビルドアップ隊から時間を奪い取ること。そのために5バックからガンガン前にスライドしてプレスをかけに来る。

FC東京のCBとアンカーに対しては2CFのウェリントンとタリクで対応。アンカーの東のマークを受け渡しながら、CBの木本と森重に対して内切りでプレス。ボールを持つ時間、考える時間、探す時間を奪い取る。この内切りプレスでSBへと誘導。

誘導先のSBにはIHかSBが素早く出て来て時間を奪い取る。この時、東にはボールサイドとは逆のCFがマーク。IHがSBに出たことで空くFC東京のIHやサポートに降りてくるWGには、アンカーの茨田やWB、左右のCBが後方からしっかりスライドして選択肢を消してくる。

6分10秒の場面

時間を奪う内切り外誘導プレスと素早いスライドによって、ビルドアップをサイドに追い込んで閉じ込める湘南の守備。これによってFC東京は敵陣まで侵入することさえできない展開が続く。

FC東京はCB間の距離を広げて2CFのプレスを外すことで保持を安定を狙う。CBの距離を広げることで、ウェリントンとタリクの2枚ではアンカーを受け渡しながらCBにプレスをかけることができなくなる。マークの受け渡しが間に合わなければ東を前向きにできる。CBへのプレスが間に合わなければ木本か森重がドリブルで運べますよ!っていうFC東京の狙い。

しかし、このビルドアップにも湘南は対策済み。FC東京がCB間を広げてきた時でも、2CFはアンカーの監視を優先。そしてプレスが間に合わなくなったCBに対してはIHが3枚目のプレス隊として出て来る。

26分30秒の場面

FC東京としては出てきたIHの背後を使いたいところ。しかし、ここにも湘南は後方からの縦スライドによって潰しに来たり、CFが降りて監視して対応。WGのレアンドロや渡邊は何度もサポートに降りて来るが、毎回湘南のDFがしっかりついてくるので縦パスを引き出せなかった。下は渡邊の試合後インタビュー。

Q、相手の背後を狙うという打開策が見つかっていたように感じました。
A、それも凄い苦し紛れという印象がありました。センターバックからのビルドアップの時に、どこに立ち位置をとれば良いのかが90分の間に見つけることができなかったことは個人的な反省点でした。またこれから今日の試合を映像で見て、反省をして次の試合に活かさなければいけないです。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/308

CB間を広げたビルドアップでもボール保持が安定しないFC東京。次は東をCB間に降ろして3バックを作ることで保持の安定を試みる。しかし、これにも湘南はIHを3枚目のプレス隊として対応。まあこれは上の形を見ればそうだよねって感じ。

ただ、3バックでのビルドアップは全く上手くいっていないわけではなかった。東がCB間に降りてIHがアンカーポジションを取ることで、湘南のIHに2択を突き付けることができた場面では前進の兆しが見えた。

17分50秒。東がCB間に降りて、安部がアンカーポジションを取る。上で書いたようにFC東京の3バックを形成した時には、IHが3枚目のプレス隊としてCBまで出ていく。しかし、この場面ではIHの平岡は木本に出ていくのか安部を監視するのかという2択を迫られている。結果的に安部の前向きを作り前進することができた。

17分50秒の場面

しかし、この形はチームとして意図的に作りだしたというよりも偶然できた感じ。

例えば41分30秒。東がCB間に降りて3バックを形成。アンカーポジションを取った安部には平岡がマークについている。木本と安部の2択で平岡は安部のマークを選択した形。そのため、木本はフリーになっており、右サイドから前進できたはずだが、バックパスを受けたスウォビィクは森重の方を選択。詰まって前進できなかった。

41分30秒の場面

これなんかはチームとしてIHに2択を突き付ける形を共有できていれば、右から前進できたかもしれない場面。あとスウォビィクが2手先を読めないことが露呈した。バックパスの角度的に森重にはダイレクトで出せるが、木本にはワントラップしないと出せない場面だった。しかし、その先を考えれば、ワントラップしてからでも木本に渡して、空いている右サイドから前進したいところだった。

(2)被保持もペースを握られ

次にFC東京の被保持。9月あたりからプレスの開始位置をより高くしたFC東京。その後ずっと4バックの相手が続いていたので、対3バックはこの試合が初となった。

4バックが相手の時と同様、対3バックでもディエゴはアンカーを監視する役割を担う。そしてWGのレアンドロと渡邊で左右のCBの舘と杉岡にプレスをかけていく。CBの山本には3トップが分担して、自分の守備担当の選手を背中で消しながらプレスに行く感じ。

この試合、というよりここ数試合はWGのプレスが外切りではないことが多い。内と外のどっちを切るのかが特に決まりはなく、WGの判断で決めている感じもする。WGが内切りでプレスをかけてサイドで閉じ込めることができている試合もあるが、この試合ではそのままサイドから前進されることが多かった。

ここから湘南のボール保持の話。湘南は保持で無理に地上から繋ぐことはなく、より直線的にゴールへ向かっていく形。狙いとなるのがウェリントンの高さと長友の背後の2つ。

まずウェリントンの方。FC東京のプレスが嵌ってきたり、前進が詰まった時には、最前線のウェリントンへのロングボールで起点を作ることを狙う。このロングボールに対してタリクと平岡、池田の両IHが近くでプレーをしてセカンドボールを拾っていく形。

もう1つの長友の背後。渡邊のプレスが明確に外切りではなかったため、SBの長友はWBの中野まで出て来ることが多かった。その背後をIHの平岡が斜めに走り込んで狙う形。

28分00秒の場面

どちらの形でも一気に深さを取ることでFC東京を押し戻すことができる。そのため、FC東京に回収されても、湘南は高い位置からまたプレスを開始することができた。

こんな感じで前半は保持・被保持共に湘南ペース。FC東京から見て問題となっていたのは、自陣でセットした展開での守備。

自陣でセットして守る時、アンカーの茨田を誰が抑えるかが明確ではなかった。基本的には3トップの誰かが下がって監視していたが、結局フリーになっていることが多い。

茨田がフリーになっているとこで、湘南はアンカー経由でサイドを変えることができる。そのため、FC東京は湘南をサイドまで追い込んでも閉じ込めることはできず、簡単に脱出されてしまった。

前半45分10秒の場面

サイドを変えながら横幅を広く使われて深い位置まで運ばれたFC東京。このアンカーのところはどう抑えるか明確にした方が良かったと思う。例えばディエゴに監視役を任せればこれほど簡単にフリーになることはないし。

(3)質で押し込む

後半。両チームとも選手交代はなし。

湘南のプレス強度が前半よりも落ちたことで、後半は主導権を握り始めたFC東京。ミドルサードまでは簡単に前進できるようになる。

48分30秒にはディエゴがかなり低い位置までビルドアップのサポートに降りてくる。ディエゴのキープ力を起点に狭いエリアを脱出して、一気に深い位置まで運ぶことができた。

45分30秒の場面

ディエゴがここまで低い位置まで下がることは前半にはなかった。これはハーフタイムで1つ変えてきたところ。

このように後半のFC東京は左サイドから湘南を押し込んでいく。前進の起点となるのがディエゴとレアンドロ。この2人はFC東京の中で最も狭いエリアや後ろ向きの状態でもボールを収めるキープ力がある。ハーフスペースに現れるディエゴとレアンドロの質の高さを活かして、壁として使いながら佳史扶や塚川、逆サイドの安部も絡み、前向きを作りながら徐々に湘南を押し込んでいく形。

55分40秒の場面

このFC東京の前進の振る舞いはけっこう好き。

(4)失わざるを得ない流れ

このようにディエゴとレアンドロを中心に湘南を押し込んだことで後半はFC東京ペースで進んでいく。しかし、67分にディエゴが足を痛めて負傷し、フェリッピと交代する。更に73分にはレアンドロとアダイウトンを交代。これで前進の起点をどちらも失うことになる。

試合後に”アルベルさんの交代が遅いんじゃないか?”とか”フェリッピを入れた時にアダイウトンも入れた方が良かったんじゃないか?”って意見をけっこう見た。ただ、後半に主導権を握り返したのはディエゴとレアンドロの力が大きかった。

フェリッピは降りてきて起点になるよりボックス内で勝負したいタイプ。アダイウトンもサイドで張って前向きで勝負したいタイプ。後ろ向きで相手を背負いながら起点を作ってくれる選手ではない。なのでレアンドロを73分まで引っ張ったのは理にかなっていると思うし、自分はアルベルさんの采配を支持したい。

73分にレアンドロをベンチに下げる。これ以降、レアンドロの代わりに渡邊がサイド移動でハーフスペースに現れて起点となる。しかし、結果的にそこから失点することになる。

渡邊がサイド移動で起点を作りに行ったところでボールロスト。そして相変わらずアンカーを抑えられていない。そのままアンカー経由で渡邊のいない左サイドまで展開されて、阿部のスーパーミドルが突き刺さった。

その4分後にはカウンターで町野が独走して追加点。これで万事休す。湘南にシーズンダブルを喫した。

おわりに

はい完敗。湘南の時間を奪い取るプレスと勢いに力負け。

今のFC東京はどこまでなら対応可能。逆に何をされるとやられるかがはっきりしている。この試合の湘南や横浜FMのようにプレスで時間を奪い取られると回避できずにやられてしまう。しかし、ある程度時間を与えてもらえれば、しっかり回避して自分たちのペースで試合を進めることができる。柏や京都、鹿島がそんな感じのプレスをかけてきたが、全部良い内容の試合だった。ここから時間を奪おうとする相手にも対応できるようになるはずだ。

あとは後半にディエゴとレアンドロを下げて流れを失った訳だが、これはしょうがないと思う。そもそもベンチに攻撃のカードがフェリッピとアダイウトンしかいないし。松木のWG起用とかいうウルトラCも見てみたい気もするけど。

この試合に関していえば、ハーフスペースで降りてきて起点となってくれる選手が欲しかった。なので展開を考えるとアダイウトンよりも三田の方が必要な選手だった。だが、三田はベンチに入っていない。

結局何が言いたいってJリーグはベンチ枠増やしてくれ!!!その方が監督の采配の幅も広がって試合がおもしろくなる。しかもベンチに若手選手を入れやすくなって、若手の成長にも繋がる。FC東京だったら梶浦とかもっと見たいでしょ。

だからJリーグはベンチ枠増やしてくれ!!!大事なことなので2回言った。来季頼みます。

試合結果
2022.10.8
Jリーグ第32節
FC東京 0-2 湘南ベルマーレ
味の素スタジアム

【得点者】
湘南ベルマーレ
 78' 阿部浩之
 82' 町野修斗


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