見出し画像

FC東京vs京都サンガF.C.〜落とした勝ち点は無駄じゃねぇ〜[Jリーグ30節]

黒ユニってだけでなんか強そうに見える、ということで京都サンガF.C.戦です。

関西3連戦の3戦目。国立競技場にて京都サンガF.C.を迎えるFC東京。前節はヴィッセル神戸戦。アウェイ2連戦の移動疲れからか明らかにコンディションが悪い中、GKの飯倉に破壊されて前半で2失点。終了間際に1点を返すも敗戦。4試合ぶりの黒星。

一方の京都サンガF.C.の前節は横浜F・マリノス戦。首位チーム相手にシュート19本を浴びせるも、結果は1-2の敗戦。直近9試合でわずか1勝と残留に向けて厳しいチーム状況が続く。

前回対戦は第5節。ディエゴの今季初ゴールで1-0の勝利。シーズン立ち上がりでは最もボール保持が上手くいった試合。

詳しい試合内容はこちらから ↓

試合概要

メンバー

・FC東京
前節ゴールを挙げたレアンドロが22節の磐田戦以来2ヶ月ぶりのスタメンで渡邊と両WG。ここのところWGは片方がサイドに張るタイプにしていたので少し変えてきたところ。また、安部と紺野がメンバー外となり三田が久しぶりのベンチ入り。広島戦、清水戦と良い働きをしたのにもかかわらず、渡邊が復帰して以降はメンバーにすら入らなかった三田のベンチ入りは素直に嬉しいね。

・京都サンガF.C.
前節からの変更は2枚。山崎に代えてピーターウタカ。福岡に代わり武田が出場停止から復帰。それ以外の9人は3連戦全てスタメン。

(1)恐れず前へ

まずは神戸戦で苦戦した守備から。

G大阪戦、神戸戦に続いてこの試合でも高い位置からプレスに出ていこうとするFC東京。京都のゴールキック時には、ディエゴとレアンドロが2トップ気味になりCBにマーク。アンカーの川崎にはIHの松木か塚川のどちらかが出て、マークを噛み合わせにいった。

流れの中でも、3トップに加えてIHもCBまでプレスをかけに出ていく。あとはGKへの対応。前節はGKの飯倉を自由にした結果、守備を破壊されることになったが、この試合では前半からGKまで積極的にプレスに出ていった。

これによって、京都は繋がずにGKから最前線のウタカへのロングボールを入れる場面が多かったが、ここは森重と木本を中心に対応。ここ数試合はロングボール処理で苦戦することが多かったが、この試合ではしっかりと跳ね返して、起点を作らせなかった。

積極的にプレスをかけたことで京都に最終ラインからの繋ぎを許さなかったFC東京。しかし、少ない繋がれた場面ではプレスが思うように嵌まっているとは言えなかったのも事実。

FC東京はいつも通りWGがCBに対して外切りのプレス。ただ、外を切って中央に誘導したところを潰そう!という意識はあまり高くなかったように感じた。それよりも、SBまで繋がれたらIHとWGで一気に挟み込んで閉じ込める!という方が強かったように思える。場面自体が少なかったので、何とも言えない部分もあるけど。

ただ、サイドで思うように閉じ込めることはできなかった。SBまで渡った時には、塚川がマークについていた武田を背中で消しながら出ていく。しかし、武田の上手くパスコースに現れる動きによって、出口を作られてしまった。

10分の場面

武田さん良い選手やな。エージェント塚川頼みます。

また、武田は京都のSB裏に降りるなど低めの位置でビルドアップにも絡む動きを見せる。この武田や川崎に塚川と松木が引き出されてアンカー脇へ縦パスを通される場面もちらほら。

アンカー脇を使われたのは自陣でセットした展開でも同様だった。24分30秒の場面。低い位置の武田に塚川が引き出されることでアンカーの東の脇にスペースができる。ここに豊川が逆サイドから顔を出す。これにより、木本を引き出して、松田とのワンツーで豊川が抜け出す!という形。

24分30秒の場面

このように武田の動き、ポジショニングに上手く惑わされた。それでも、FC東京は前から守備に行く姿勢は崩さず。アンカー脇は東を中心に森重、木本の3枚でしっかり潰して対応していた。森重は前節神戸戦の試合後にこんなことを話していた。

Q、守備の点で気をつけていたことは何でしょうか。
A、アンカーの横を使われたくなかったので最初は少し後ろを気にしながら、と試合前は話していたのですが、それだと勢いが守備にでないので、そこは気にしないで何回か使われても良いから前に奪いに行くということを、中盤の選手と話して臨みました。
Q、なかなか前からいけなかったように見えます。
A、清水戦もそうでしたが、中盤2枚の後ろを気にしすぎると前線からの守備という自分たちの良さもなくなってしまうので、そこは改めて今日実感しました。それを踏まえたうえで残りの試合でどう戦うかを考えてやっていきたいです。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/298

神戸戦では守備が嵌らずに後ろに下がってしまった。そこの反省点がこの試合の前から行く姿勢を貫くことに繋がったと思う。

(2)ラグを作り出せ

FC東京と同様に京都も前半立ち上がりから積極的にプレスに出てくる。この京都の守備は誰が誰のプレス・マークを担当するかは明確には決まっていない様相。CBに対してはCFのウタカに加えてWGが出てくることもあれば、IHが出てくることもある。アンカーのマークをウタカが担当することもあれば、アンカーの川崎が出てくることもある。といった感じ。

決まり事として見えてきたのは主に2つ。1つはCBへのプレスは内切りの外誘導。もう1つはディフェンスラインの4枚は基本的には後ろに残り、プレスには参加しない。この2つ。

これを前提として京都の守備を詳しく。守備のスイッチとなるのが、FC東京のCBへのプレス。中央へのパスコースを切りながら、FC東京のビルドアップをサイドに誘導。SBのところでプレスを嵌めようという形。そして、CBに誰がプレスをかけるかによって、後ろ守備が決まってくる。パターンは3つ。

①ウタカがプレスにいく
1つ目はCFのウタカがプレスにいくパターン。この時、もう1枚のCBはボールサイドとは逆のWGがCBと SBの中間ポジション、パスが出たら取りにいける立ち位置を取る。これでSBへと誘導。その先でWGがプレスをかけて嵌める。中盤は3vs3のマンツーマン。アンカーの川崎が東まで出てくる。

②IHが出ていく
2つ目はIHが一列上げてプレスに出ていくパターン。この時のWGの役割は①と同じ。ボールと逆のWGが中間ポジション、同サイドのWGがSBのところでプレスを嵌める。また、東はウタカが監視、IHはそのままIHの武田と武富で抑える。

③WGがプレスにいく
ラストの3つ目がWGがプレスにいくパターン。この時も逆のWGは中間ポジションに立ち、ウタカが東を監視。そしてWGがCBまで出ているため、SBにはIHがプレスをかける。IHには川崎と逆のIHが対応。中盤を横にスライドさせて守る形。

この3つ。そしてFC東京としてはプレスを回避するために、③のパターンを京都に使わせることが重要となる。

①、②はSBに対してWGが対応するのに対して、③はIHが出ていって対応する形となる。最初からサイドにいるWGと違い、IHはSBまでプレスをかけるのに少しのラグが生まれる。①、②に比べて③はSBに少し余裕がある状態で、プレスが嵌りにくい。

また③でアンカーマークを担当するのはウタカ。38歳という年齢もあり、守備の強度が他の選手と比べて高いとは言えない。マークが外れやすい。そのため、GKとCBで京都を横に揺さぶりながら、WGをCBまで引き出す。これでSBのところで少しのラグを作り出す。そこからウタカのマークを外した東で前向き。これがFC東京の作りたい形。

11分50秒。CBとGKでボールを動かしてWGの松田を木本まで引き出す。松田は内切りプレスで長友へ誘導。ここにIHの武田が出てくるが、長友は少し余裕がある状態。プレスにラグがある。長友から多分塚川に出したパスが上手いこと抜けて東が前向き。ウタカがマークを外している。これでプレスをひっくり返して速攻。5vs5を作り出してレアンドロが角度のないところからシュートを打ちポスト!という場面まで持って行った。

11分50秒の場面

こんな感じで上手くプレスをかわしていたFC東京が徐々に主導権を握っていく。そして28分に先制点。この場面もG大阪戦でブロック攻略に足りなかった形からのものだった。

下の図はG大阪戦のレビューに載せたやつ。四角のエリアに人がいないため、サイドに張る中村まで繋がってもその先が詰まってしまった。また左SBの黒川は中村に対応すればOKという状態。

ガンバ大阪戦のやつ

で、こっちがこの試合の先制点の場面。G大阪戦では取れていなかったライン間(四角のエリア)をレアンドロが取る。そして佳史扶が武富の背後に潜り込むことで、白井は2枚を見なければいけない状況。2択を迫られている。

先制点の場面。

ここから白井に対して、佳史扶とレアンドロで2vs1を作り出す。そしてレアンドロのスーペルゴラッソ!!枠に当たって決まるミドルシュートってマジで気持ち良いよね。これは2回当たってるから2倍気持ち良い。

動画でも。図より分かりやすいはず。

(3)両監督の修正

後半。京都はウタカに代えて木村を投入。1点ビハインドでエースを下げた。そして両チームとも守備を修正。

まずはFC東京の方から。修正点はサイドで閉じ込めきれていなかったところ。渡邊と塚川で挟み込んでいたところを、長友がSBまで出ていくようになった。長友が出ていったことで空くWGには木本がスライドする。

52分20秒の場面

長友がSBまで出ていくことで、塚川はスライドせずにそのまま武田を捕まえることができるようになる。これで逃がさずに、SBのところで潰してしまおうという設計。

一方の京都。前半は3パターンのプレスを使っていたが、後半は③の形に固定する選択をする。「③ってFC東京が作りたかった形じゃん!それで上手くいくんか!」って言われそうだけど。

すでに書いたように③の形にしたことでSBのプレスにラグができる。しかし、ハーフタイムでウタカを木村に代えている。そのため、SBのところで余裕を持たせてもその先の選択肢は全て消しますよ、という修正。

46分10秒の場面

この修正によって後半立ち上がりは京都がFC東京を押し込む展開が増える。特に左サイドでのボール保持が多かった。武田と交代で入った福岡の両IHがどちらも左サイドでプレー。狭いエリアで人数をかけて保持を安定させる。

しかし、狭いエリアを崩すまでには至らない。また、両IHに加えて右WGの豊川も中央に入ってくるため、右サイドにはSBの白井しかいない状態。左でのボール保持でFC東京を引き付けても、そこから逆の広いスペースで勝負!という形を作ることができなかった。

そんなこんなで京都の攻撃が停滞している内に、カウンターからアダイウトンが追加点。またレアアダの2得点。国立男コンビ。最後は台風の大雨に見舞われながらも逃げ切り試合終了。関西3連戦を白星で締めくくった。

おわりに

2-0で4試合ぶりの勝利。G大阪戦、神戸戦で出来なかった部分、相手に上回られた部分をしっかりと修正しての勝利となった。

今季、もっと言えば来季もFC東京にとっては成長のシーズン。上手くいかない試合、相手にいいようにやられる試合は何度もある。その結果負けることも。

FC東京にとって最も大切なのは無駄な試合を作らないことだと自分は思う。苦しめられて負ける試合があっても、そこから出た課題を次の試合に繋げる。ただ、試合をして勝った負けたで終わらせないこと。

そういう意味ではこの京都戦はまさに苦しんだ2試合の課題をしっかりと修正しての勝利だった。G大阪戦で守備を崩すのに足りなかったポイントを修正したところから先制点を奪った。神戸戦ではGKに破壊されたので、前半からGKまでプレスに出ていった。アンカー脇を使われることを恐れずに前から圧をかけ続けた。あとはスウォビィクも神戸戦では無理に繋ごうとしてのロストが目立ったが、この試合では危ない時はしっかりと蹴っ飛ばすことができていた。課題をしっかり修正して国立で、50000人の観客の前で勝ち切って見せた。

反省点を次に繋げることのできるチームは強くなる。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?