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時給2000円越え?初バイトにパン屋さんをおすすめする理由

春から新生活を迎え、アルバイトを始めてみようという学生さんが多い時期。今日は僕の人生初のアルバイトについて書いてみます。


▷片足社会人

高校3年生、ある冬の日

「4月からは定期代くらいしか出さないからね」

母が突然言いました。そんなこと言われたって、音大に進学する僕は練習も勉強も音楽活動もしなきゃならないし、バイトなんてする暇ないのにと嘆いた記憶があります。

とは言え、高い学費にかなりの定期代。大人には大人の事情があるから仕方がありません。お世辞にも社交的とは言えないのんびりな当時の僕には、コンビニやファミレスに立つなんて考えもしませんでした。

学校帰りにいつも通り最寄駅に到着し、ぼやっと視界に入ったのが駅に併設されている小さなベーカリーカフェの求人でした。 たしかこんな感じ。

【アルバイト募集】
時給:898円(夕方加給・深夜手当あり)
大学生可!未経験者大歓迎!

まずあなたが注目したのはきっと時給。これは当時の埼玉県の最低賃金でした。しかし安かろうとそんなことは何も気にならなかったし、そもそも基準がわからなかったのです。だって初めてだからね。

スマホで写真を撮って、翌日すぐに電話をしました。「4月から大学入学見込みであること」「初めてのアルバイトであること」をしっかりと伝え、特に難しい質問もなく人生初のバイト面接が終了。結果は・・・

「採用」

▷ゆで卵はお任せください

まだ薄暗い冬の朝、初出勤を迎えました。
パン屋さんらしい格好に着替えて手を洗ったら、挨拶をして開店の準備です。

まだひんやりした店内で、初めてコーヒーをおとしたり、ダスターを準備したり。
カフェオレとカフェラテの違いも知らなかった僕には、何もかもが不安でしかありませんでした。

早くも開店間近、初めてひとりで任された仕事は、モーニングセット用のゆで卵の水滴を拭き取ることでした。それだけで緊張ガクガクだったこと、今でも覚えています。

そして迎えたくなかった開店時間がやってきてしまいました。朝7時だったかな。
間も無くサラリーマン風の男性が入店し、「いらっしゃいませ」と声が響く。いらっしゃいませって言うのが恥ずかしくてしばらく言えなかったのは、もう時効です。
そのお客さんが注文したのは、アメリカンコーヒーでした。
コーヒーにお湯をいれる!?薄めるだなんてもったいない。そんなことを思いながら確実に手順をメモしていきます。

▷怒らないでね

初めて入れた、薄くてもったいないコーヒー・・・じゃなくて熱々のアメリカンコーヒーをトレーに乗せ、サラリーマンの元へ。

「お待たせしました。」とテーブルに差し出した次の瞬間。緊張のあまりに、溢してしまったのです。幸い被害はトレーの上でおさまり、怒られる前に無言で撤収。

逃げ足だけは速く、ドッチボールや鬼ごっこは終盤まで残るタイプです。

余裕を持ち合わせていなかった僕は、失敗したことよりも即座に謝罪しないことのほうがまずいことなんてわかるわけもなかったのでした。その後無事提供し直し、再びゆで卵係に。

そんな初バイトの日でした。

▷時給898円から2000円超えに

ゆで卵拭きを極めていたら、昇給したのです。と言いたいのですが、時給は変わらず最低賃金のまま。ではどういうことかというと、答えはこれ。

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すごいでしょ。しばらくして慣れてきた頃、売れ残ったパンを持ち帰れることを知りました。調子に乗って食べてみたいものを片っ端から取っていった結果こんなにどっさり持って帰る羽目になりました。この生活を続けていたおかげで、

・朝ごはん・・・サンドイッチ
・お昼ごはん・・・惣菜パン
・おやつ・・・菓子パン

こんな生活になりました。出勤ごとに数千円分のパンを持ち帰るものだから、食費は浮くし、種類豊富で飽きないしで時給換算したら実質2000円相当です。

実家暮らしなら家族に喜ばれるし、一人暮らしならもう無敵。あまり入れなくても冷凍保存ができること・種類が豊富なことを考えれば、まかない付きの飲食店なんかよりはるかにお得です。まだ途中ですが、これがパン屋さんをおすすめする最大の理由。

パン屋さんでのバイトを考え出したあなたにお伝えしておきたいのは、おすすめできるのは地元の小さいパン屋さんに限ると言うこと。

たいていどこも朝早くからやっているパン屋さんですが、駅構内や都心の百貨店に入っているような店舗は、急いでいるサラリーマンや若いお客さんばかり。しかもそういった店舗はチェーン店で、売れ残りの持ち帰りが禁止されています。

なんで知ってるかって?実際にそういった店舗での勤務経験もあるからです。なぜなら突然の解雇にあったから。

▷突然のクビ

7月のある日、少し遅刻してしまいました。
ずっと無遅刻無欠勤だった僕は、ビクビクしながら厨房を通り、事務所へ。すると、明らかに偉い人と思われる、スーツを着た男性が店長と話していました。2人は遅刻した僕を見るなり

「着替えたら話があるから。」

上の偉い人が来ている時に限って遅刻。これはクビだ。

そう悟った僕は、謝罪の言葉を考えながら早々と着替えを済ませ、2人のところへ。すると

「申し訳ないんだけど、9月で辞めてもらうことになります。」

やっぱりクビだ。本社の偉い人が来ているときに限って遅刻だなんて、運が悪かった。
人生初のアルバイトで初めての遅刻をした僕は、そう思うしかないのでした。しかし、返事をする間も無く

「でも急な話だし、時給を100円上げます。」

クビだけど昇給?当時の僕も、読んでいるあなたもここで大混乱です。

「ごめん、店長から聞いてなかったか!駅の耐震工事で閉店しなきゃいけないことになって。申し訳ないんだけど辞めてもらわなきゃならないから、気持ちということで時給を上げさせてください。どう?」

偉い人、それを先に言ってくださいな。
おかげで遅刻したことには気づかれず、やむを得ない急な解雇についての大事なお話を聞いていつも通り勤務したのでした。

そんなわけで、僕の人生初アルバイトはあっけなくたった半年間で幕を閉じました。
すっかりパン屋大好きになっていた僕は、次の新しいバイトもパン屋さんで探したものの、大手チェーン店は全く合わずすぐに辞めてしまいました。

▷常連さんたち、元気かな

地元の小さなベーカリーカフェだったので、たくさんの常連さんがいました。怖いメロンパンおばさん、1日10回コーヒー飲みにくるおじさん、みんな個性豊かでした。人生初のアルバイトだった僕にはその全てが新鮮で、今思えば友達感覚になっていたような。

止む無く辞めてしばらく経った今でもふと思い出したり、見かけると懐かしくなってしまったりします。

この記事ではザックリと「初バイト」と「おすすめの理由」について書きましたが、今度は詳しい仕事内容(得たこと・失敗談)と常連さんたちのお話についても書きたいと思います。

読んだらパン屋さんやカフェの見方が変わるかもしれません。


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