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お前の居場所はおにぎりの中じゃない

刑事コロンボは「うちのカミさんがね」と言うが、僕には「カミさん」がいない。したがって、「うちのカアさんがね」とさせていただき、今日も母親のトンデモエピソードを供養したいと思う。



高校2年の頃だったか。うちのカアさんがね、昼食の弁当を作ってきてくれたんだよ。
おにぎりのほかに、玉子焼きやウインナーなどのおかずin弁当箱。ごくごく普通の高校男児のお弁当だった。見た目は。

4時限目の授業が終わり、腹ペコモンスターは弁当箱を広げる。そして、アルミホイルに包まれたおにぎりを手に取る。すると、妙な違和感が。

なんかめっちゃベトベトするんだけど。

よーく見てみると、アルミホイルの表面にうっすら白いクリーム状のものが付着しているではないか。なんだこれ。ハンドクリームにしては不快なベトベト感だし、そもそもおにぎり作ってるときにハンドクリーム塗るなよって話なのだが。
ハンドクリームではない。なんとなくラードのような、そういう類の油っぽさがあった。

まぁいいやとアルミホイルを開く。おにぎり本体にも、うっすらと白いコーティングが施されていた。えええ、なんなの。食べていいやつなのか、これ。うちのカアさんのことだから、僕が苦手な食材は入れないと思うけども。さすがに不安が募る。

おそるおそる、ひとかじりしてみる。

がぶ。



ビャーン(ビブラスラップの音)

ハンバーーーーーグ!!!!!




当時まだ「あまーい!」しか言葉を知らなかったはずの井戸田潤が、脳内で叫んだ。

え? えええええ? ハンバーグ? おにぎりの具にハンバーグ?
いやハンバーグ好きだけど。好きだけども。

あのベトベトはハンバーグからにじみ出た油だったのか。我が家のハンバーグは基本豚肉だから、ラードみたいというのはあながち間違っていなかった。「おにぎりにハンバーグを入れてアルミホイルで包むと、アルミホイルの表面までベトベトになる」という新たなトリビアが誕生した瞬間だった。へぇー。

いや、そんなことはどうでもいい。問題は、なぜおにぎりの具がハンバーグなのか、だ。ハンバーグをおにぎりの中にインするなんて、どういう思考回路でたどり着いたのだ。なんなら具なしの塩むすびで全然構わないのだが。
それにけっこう大変よ、ハンバーグ入れるの。「やけにでけぇおにぎりだな」と思ったら、そりゃそうだよ、ハンバーグが入っているんだもの。ソフトボールかと思ったよ。

ハンバーグよ、お前の居場所はここおにぎりの中じゃない。弁当箱の中だ。帰ったらうちのカアさんによく言って聞かせるのだよ。わかったね?

カアさんの珍プレーにひとしきり辟易した後、僕はベトベトのハンバーグおにぎりを食べた。
味は……そりゃ美味いよね、ハンバーグだもの。




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