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ルールを軽んじる大人たち

役場職員時代、保育園の運動会の手伝いによく駆り出された。主に物品の移動がメインだったが、保護者参加型のリレーの数合わせで参加したこともあった。僕、独身なんですが。

保護者参加型リレーは、趣向を凝らしたものにするため、毎年内容が変わる。
その年は、直径50cmくらいのボールをバトン代わりにして走る、というものだった。さらに、そのボールをバウンドさせながら走る、つまりバスケットボールのドリブルの要領で走るというルールになっていた。

競技が始まった。位置について、よーい、パァン。

中年たちがヒイコラ言いながら走る走る。普段はクールに働いている役場のあの人も、ドタドタとボールをドリブルさせながら必死で走っている。一生懸命なおじさん。かわいい。

僕は当時ナウいヤングだったので、助っ人キャラ的存在だった。大玉転がし競走で大玉の下敷きになったトラウマなどなかったかのように、僕は颯爽とドリブルで走り抜けた。その姿はきっと、宮城リョータさながらだったに違いない。

しかし、僕のすんばらしい疾走の後、実に不愉快な出来事があった。

ほかのチームだったと思うが、ボールをバウンドさせず、抱えたまま走る輩がいたのだ。

おいおい、保育園のリレーだぞ。本気で走るのはかまわんが(むしろそれに関しては賛同)、ルール違反はよくない。
仮にも、自分の子どもが見ているだろうに。ええんかそれで。それに、お前の子どもは「ルール違反オヤジの子」というレッテルを貼られるのだぞ。ええんか。

結果的に、ルール違反オヤジのチーム(仮にBチームとする)が優勝した。ええんかそれで。
これだけでも僕にストレスを与えるには十分だったのだが、追い討ちをかけるようなことが起きた。

リレー終了後、審判長である福祉課長(当時の僕の上司)が、結果を発表した。


「なんかルール違反がありましたが、Bチームが優勝です!」


許しちゃうのかよ。


おいおいオイオイoioi待てよ。ちょ待てよ。これを見たお子らはどう思う? 「ルール破ってもいいんだ」と思うんじゃないの? それってええんか。ほんとにええんかそれで。

確かにルール違反の処分はめんどくさいし、そもそも違反しやすいルール設定に問題がある気もする。

でもさ、ルールを守って一生懸命やっている人たちに失礼では?
社会を学ぼうとしている子どもたちに失礼では?

「子どもが言うことを聞かない」と嘆く大人はたくさんいるのだろうけど、そんな人には「では、あなたは言うことを聞くに値する大人ですか?」と問いたくなる。

口だけの大人の言葉なんて、絶対に響かない。かつて僕らがそうだったように。




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