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天気図の世界

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天気図に関する話題を取り上げ、Pythonを利用した天気図の作成方法についても紹介します。気象にある程度知識があり、事例解析などに興味がある方や、天気図を作成したい方々を対象とし…
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「天気図の世界」について

「天気図の世界」について

マガジン「天気図の世界」のコンテンツは、様々な種類の天気図の紹介やMetPyを利用した天気図作成コードの解説、豪雨などの事例解析などからなっています。コードにのみ関心がある方、事例解析にのみ関心がある方などもいらっしゃると思います。そこで、コンテンツの分類と各コンテンツの簡単な紹介をします。気になったコンテンツを読んでいただければ幸いです。今後も、コンテンツを増やしていきます。

紹介しているコー

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日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (1/3)

日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (1/3)


2023年5月23日夜、近畿地方では当初予想されていない雷雨となりました。これをもたらした組織化した対流雲は、スケールが100km程度で孤立しており、数値予報モデルでも予想が難しい現象でした。今回はECMWFのOpen Dataからヨロッパの全球モデル(GRIB2ファイル)をダウンロードし、MetPyを利用して、この対流雲が日本海で発生・発達した頃の総観場・環境場を調べます。

コードについては

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短時間の大雪事例と寒気質量について(2)

短時間の大雪事例と寒気質量について(2)

前回の記事「短時間の大雪事例と寒気質量について(1)」の続きです。寒気質量と短時間強雪の対応関係を中心に事例解析を示します。

2010年12月31日の岩手県の大雪事例前回の記事で示した通り、2010年の大晦日は鳥取県西部の大山や米子で6時間降雪量がこれまでの一番の記録を更新しました。この同じ日に、鳥取県から遠く離れた岩手県でも6時間降雪量がアメダス奥中山で48cm、区界で46cmを観測し、これら

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短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

強い冬型の気圧配置により、日本海側の地方を中心に局地的に短時間で大雪となる場合があります。その要因は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)や、筋状の雲域の停滞、Tモードの雲域、小さな低気圧、地形性の降水であったり様々です。また、海水温や大気の安定度、下層収束などの影響も小さくありません。

ここでは、Iwasaki et al. (2014) により定義された寒気質量DPなどをJRA55から算出して、

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湿球温度による推定雪水比を利用した2022年1月6日関東大雪のGSM降雪量予想

湿球温度による推定雪水比を利用した2022年1月6日関東大雪のGSM降雪量予想

前々回の投稿「2022年1月6日関東地方南部の大雪時の湿球温度とアメダス気象観測データプロット図」では、雨雪判別で利用する物理量は温度より湿球温度が適していることがわかりました。今回は、降雪量予想に利用する雪水比の推定に湿球温度を利用することを検討し、ロジスティック関数でやや強引に近似して、2022年1月6日関東南部の大雪事例におけるGSMの降雪量予想分布図を作成しました。

雪水比を推定する際に

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2022年1月6日関東地方南部の大雪時の湿球温度とアメダス気象観測データプロット図

2022年1月6日関東地方南部の大雪時の湿球温度とアメダス気象観測データプロット図

2022年1月6日日中に、関東地方南部は大雪となりました。この時の湿球温度の変化とその分布による大雪に関する考察と、この時系列図や分布図を作成するコードを紹介します。

気象庁ホームページから取得できるJSON形式のアメダスデータから分布図を作成しています。紹介するコードはpythonで記述し、matplotlibやMetPyを利用しています。サンプルコードも掲載しています。興味のある方は使ってみ

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アメダス気象観測データの時系列図

アメダス気象観測データの時系列図

今回は、アメダス気象観測データの時系列図について、この図の有用性とコードの紹介になります。データは気象庁HPから取得しCSV形式のファイルを利用します。コードはpythonで記述し、matplotlibを利用しています。最後に、サンプルコードを掲載しています。ご利用ください。

気象観測データ時系列図の有用性大気の構造を把握する上、地上の観測点がまばらである地域では面的に大気の状態を捉えるのは困難

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速報:アメリカの竜巻事例におけるGSM初期値の天気図

速報:アメリカの竜巻事例におけるGSM初期値の天気図

竜巻が、2021年12月10日夜から11日にかけてアメリカ南部や中西部の6つの州で発生して、広範囲で竜巻の被害が相次ぎました。歴史上最大規模の竜巻被害の一つとなり、ケンタッキー州メイフィールドで最も大きな被害があったと報道されています。現象としては、スーパーセルによって複数の竜巻が次々に生み出されたとの見解が示されています。

フックエコーのレーダー画像も報道されるなど、スーパーセルに関するメソス

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

850hPa面のQベクトルの収束・発散総観規模擾乱による上昇気流の励起を確認するために、850hPa面のQベクトルの収束の天気図を作成しました(下図)。赤のシェードがQベクトルの収束域で上昇流が励起されるエリアと推定できます。

図の実線は等高度線を示しています。850hPa面の低気圧(地上の低気圧Aと対応)が北緯43度付近の大陸から日本海北部を東進し、北日本を通過しています。17日9時から18日

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

前回は、昭和39年7月山陰北陸豪雨の大雨の状況を確認し、地上前線解析から大雨の要因を考察しました。今回は、大気の静的安定度や南北断面図、ジェット気流に関連する上層発散に着目して大雨要因について検討します。

大気の静的安定度前回の地上前線解析から大雨時に金沢は前線の暖域内、松江では前線の近傍の暖域側でした。不安定性降水による大雨の可能性が考えられるため、大気の状態が不安定であったかを確認します。J

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

JRA-55を活用した、豪雨の事例解析です。3回に分けて掲載する予定です。

JRA-55を利用する上では、次のことを注意して解析することにしています。利用している格子点データの空間間隔は緯度・経度1.25度毎、時間間隔は6時間毎です。このためにメソスケールの現象を考察することは難しいため、総観場の気象状況中心の事例解析となります。メソスケール現象について考察する場合は、総観規模擾乱により生じる環

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