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コンバージョンが取れる動画広告を制作する上で欠かせない9つのポイント

最近あちらこちらで「動画広告」について叫ばれるようになってきたので、自戒も込めつつ、コンバージョンが獲得できる動画広告はどのようにして作っていくべきかという点について、9つのポイントに分けて解説していきたいと思います。

(1) 企画書作り

まずは企画書を立てます。動画広告は1本作ったら終わり、と言うものではありません。例えば白戸家のように、受け入れられて何年も同じ構成で作られ続けている CM もあります。同じように、最初にプロットを組み、例えば現在の課題・目的を明確化した上で、それに対する(広告)効果を目的に制作、配信を行います。

「動画広告は短命」などと言いつつKBF を複数考え動画を量産し、バルク的に動画を量産に大量に入稿する手法などもありますが、それで上手くいくなら日本の TVCM 広告市場は70年代80年代の時点からその手法でもっと拡大していたはずです。

つまり単純量産ではダメなのです。機会損失がないようにあらゆるユーザーに刺さる広告を提供しようとしても、雲散霧消してしまうばかりです。(一頭を追うものは何とやら...)

本当にエンドユーザーを正しく理解していれば、例え「1」であったとしても広告効果は十分得られます。ただし「究極の1」でなければ意味がありません。そしてその「究極の1」を作るためにまずは企画書が必要なのです。

(2)伝えたいことは1動画広告につき1メッセージまで

商材のスペック・価格・訴求したい強みなどを全て動画に入れていくと、非常に重たい広告が出来上がります。情報量が多く、とてもユーザーがそれらを正しく情報処理できないため、消化不良を起こします。

ユーザーは、何も考えずに娯楽の一環としてYouTube を見たり、家に帰ってきて疲れている状態で SNS に触っているケースが大半を占めています。そういった状況を考慮すると、構成としてはシンプルで、訴求としては1点、1メッセージに絞った方がわかりやすくて、理解が捗る確率は高いように考えられます。例えば丸亀製麺の CM は「丸川製麺が美味しい理由(丸亀食感)」を伝えるために「全ての店で粉から作る」ことのみをメッセージとし動画を構成しています。

ちなみに「全ての店で粉から作る」ことをプッシュすることを外部の方(株式会社刀)が推したのがキッカケだとか。

(3)絵コンテをしっかり描く

絵コンテを書かずに動画を作る人もいますが、それである程度のクオリティのものを生み出せるのは一部の天才だけです。世の名の馳せた映画監督もまずはシナリオを考え、そのあと絵コンテを作りを行い、撮影に挑みます。あの黒澤明ですら、シナリオ作成、絵コンテ無しに映画は作れていません。絵コンテも無しにいきなり撮影に入るというのはゲームセンターのレーシングゲーム筐体でMT車に乗ったことがあるから大丈夫と、無免許で首都高をフェラーリで乗り回すようなものです。 

ちなみにスタジオジブリの場合、絵コンテを宮崎駿が書き、一定のところまで書き終えたところからそれが印刷され、手の早いスタッフに回され映画における作画作業が本格的に始まります。

つまり「シナリオ制作」が制作ステップの中に無いのです。

シナリオは常に宮崎駿の頭の中で変化しながら存在しており、それが絵コンテとして出力されているのです(なので途中で話が変わってしまう事もあります)

ただしこんな手法が通じるのは世界中でもスタジオジブリだけです。「シナリオを飛ばす」ということは、そのぐらいあり得ないことです。シナリオがないと作品にまとまりがなくなります。最後のまとめ方が無理やりになります。なのでジブリ作品のラストは毎回(以下略)

そのためまずは「シナリオ(企画書)」を作り、「絵コンテ」を書く必要性があります。

また絵コンテを書き終えた後は見返してください。本当に最初に伝えたいと思えた事が崩れていないか、論理崩壊していないかを確認してください。

(4)動画であるべき必然性を備えている

絵コンテを書き始めると気づく人も多いかもしれませんが、そもそも「動画である必然性」が抜け落ちているケースは珍しくありません。「動画広告を配信する」「動画広告を制作する」が先行し「なぜ動画(広告)であるべきなのか」という点が思慮されていないのです。

この点については、正直な話をすると考えずとも「動画にするだけで効果が出るから」と思っている人も多いかもしれません。例えば Web サイトを動画に圧縮しているような動画の作りを採用しているケースも多いように思います。しかしそれでは動画そのものが深みに欠けてしまい、遊び心のない、ただただ消耗されるだけの動画広告が出来上がってしまいます。

先日漫画「ブルーピリオド」の一コマを引用して下記のようなツイートをしました。

ブルーピリオド 7巻』より引用

例えばまだ未熟なメンバーに絵コンテ案を書いてもらうと、残念ながら絵コンテの内容だけ見ても話がよくわからない...なんてことはよくあります。そうするとそのメンバーがコンテの「解説」を試みるケースもありますが、良い動画広告とは、絵コンテの時点で優れた漫画作品のように読み込めてしまうものなのです。

もし言葉による解説がないと絵コンテが理解できない場合、その絵コンテに最適な広告媒体は動画ではなくラジオなどの音声広告です。

なぜ企画書を書いてまでわざわざ「動画」である必要性があるのか、なぜわざわざ動く必要性があるのか、なぜ動きを通じてメッセージを提供しようと試みる必要性があるのか、これらについて考える必要性があります。

動画で伝えられるから動画で伝えるのではなく、動画でなければ伝えられないから動画で伝える、という選択を常にすべきです。

広告媒体・広告形式には特性や、そうある意味合いがあります。例えば純広告の例になりますが、渋谷のスクランブルスクエアの特異な動画広告枠は有名です。

通常の動画広告枠(正方形、長方形)ではなく、この形に合わせて最適化させることで広告枠を最大限活用しています。

以下は動画広告ではありませんが、実際に広告効果のあった IWC の「ビッグパイロット」を訴求するバスの中吊り広告、3 m のバス停に設置された強化ガラスの強度を訴求するための広告事例です。

このように「その媒体」で「その形式」で「その形」で広告を出す意味を考えると、広告そのものの重みが増し、より広告効果を引き上げてくれることもあります。そのため考える必要性があります。

海外広告はヒントになるので目を通しましょう。自分で探す時間がなければ@inspi_com さんの過去ツイートや note を見てください。

(5)無駄を省く

ユーザーにとっての無駄を省きましょう。「制作者」が無駄と判断するものよりも「ユーザー」が無駄と思うことを優先し省いてください

(6)構成をしっかり考える

絵コンテの構成が変わるだけで、動画の内容も変わって伝わることがあります。また色々な組みわせを試みるうちに良いパターンの構成が見つかることもあります。特に最初の2秒と最後の数秒には力を入れることをオススメします。

以下はアウディの事例です。特に最初の2秒でユーザーはスクロールする指を動かす・スキップボタンをタップするかを選びます。そこに最適なコンテンツを流します。

33秒からの映像ですが最初の2秒で流れてきた際に気になって再生し続けてしまう構造が動画の中で成立しています。

究極の1で勝負をするなら「イナバ物置」のCMも参考になります。CMの最後に彼らは必ず屋根の上に100人乗ります。これは1987年から今日に至るまで変わっていません。

これは特に雪国では積雪による倉庫の破損が多く「耐久性」を広告で伝えることがもっとも効果があると言う判断に基づくものですが、彼らは TVCM の7秒を使って必ずあの有名なシーン、フレーズで訴求を行ないます。

TVCM における7秒は非常に大きな時間です。それでも最後に必ず7秒を用いて訴求するのは、最後にそれをどうしても伝える構成上の必然性があるからです。

(7)音がないケースも想定して字幕を用意する

移動しながら聞いている、音がない可能性での視聴の可能性もあります。そのため音はなくてもわかるように字幕をつける、または字幕をつけずとも動画そのものの構造を単純化しひと目見て理解できるような物を作り上げる、いずれかの取り組みが必要となります。

大きめの字幕をつけてわかりやすい絵にするなどといった工夫も必要です。

(8)Webサイトへ遷移を促す動画広告メニューを使用する

遷移が可能な動画広告メニューを使用しましょう。動画をタップしたら即Webサイトへ遷移することが可能な広告メニューがもっとも望ましいでしょう。どの動画メニューであれば遷移できるのかと言う点については別記事でも言及しているので、そちらもよろしければご参照ください。

(9)動画内にCTAを必ず設置する

動画内に CTA( Call To Action :行動喚起)を設置することを忘れている動画も多いのですが、動画を見終わったユーザーに「何をしてほしいか」伝えることは非常に重要です。ユーザーはテレビの前でCMを見ているときに比べて、スマホや PC で動画を見ているわけですから、その後検索をしたり、動画をタップし Web サイトに遷移させることを促すこと自体のハードルは、効果は以前よりも下がっています。

またユーザーの大半は前述した通り、ユーザーは、何も考えずに娯楽の一環としてYouTubeを見たり、家に帰ってきて疲れている状態でSNSに触っているケースが大半を占めています。そのため「誘導してあげる」と言うのはそれだけで大きな価値を生むのです。

ベストな形は「伝えずとも伝わる」です。例えば上記「丸亀製麺」は CM を変更し、来店者数を大きく伸ばすことに成功しています。しかし CM 内で別に来店を促すような締めの1文を入れたりしているわけではありません。しかしながらそれでも来店数が増えています。それは単純に制作のクオリティの高さ故です。

しかし動画を初めて作り始めた人の技術でそのレベルのものを作り出すことは難しいケースが殆どです。そのためサジェストを入れることにより動画広告効果を高めるなどの手を打つことが現実的には必要となります。 CTA は必ず入れるべきです。

最後に

面白い動画広告を見たらキャプチャをとったり、調べてみることをお勧めします。世界は誰かの仕事でできているので、誰かの仕事をケースモデルに色々と学ぶのがもっとも効率的な動画広告の学習スタイルではないかと思います。また「動画広告」を1から学ぶのであれば、まずは大全の購入をオススメします。

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