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星語掌編集《ホシガタショウヘンシュウ》

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地球町《あおやねちょう》の道端で拾った、ちょっと不思議な掌篇を収録。短編や読み切りばかり載ります。
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#キャラデザ付き

掌編「庭師は地平に林檎の苗を」

掌編「庭師は地平に林檎の苗を」

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星語《ホシガタ》掌編集*9葉目

(2728字/読み切り/キャラデザ付)

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線原《せんのはら》地区は、その名の通り、延々と地平線が続く区域で、神の一筆。という通り名がついているぐらい、だだっ広く、単調だった。

わたしは小包を抱え、隣丘の大ペリカンのところまで、”お使い”にでているところだった。歩くたびローブの襟から三つ編みがぴょこぴょこと生き物みたいに反り、西日が弾けた

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掌編「何かがはじまるのは分かる」

掌編「何かがはじまるのは分かる」

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星語《ホシガタ》掌編集*2葉目

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「へーくしょん!」

ここは地球町《あおやねちょう》。木枯らしが吹き始める頃。

——俺は会社帰りぽつり一人。路地裏の屋根どもの隙間からチラとのぞく紅藤の雲、コートに肩すくめ目だけ遠い空を仰いでいた。暮れなずむ帰路。

「家、喰うもんあったかなぁ…」へーくしょん!

室外機から、寒々しく吐きだされる風に左右同時にぶおりと煽られ、先が濡れた

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