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星語掌編集《ホシガタショウヘンシュウ》

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地球町《あおやねちょう》の道端で拾った、ちょっと不思議な掌篇を収録。短編や読み切りばかり載ります。
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2017年2月の記事一覧

掌編「何かがはじまるのは分かる」

掌編「何かがはじまるのは分かる」

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星語《ホシガタ》掌編集*2葉目

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「へーくしょん!」

ここは地球町《あおやねちょう》。木枯らしが吹き始める頃。

——俺は会社帰りぽつり一人。路地裏の屋根どもの隙間からチラとのぞく紅藤の雲、コートに肩すくめ目だけ遠い空を仰いでいた。暮れなずむ帰路。

「家、喰うもんあったかなぁ…」へーくしょん!

室外機から、寒々しく吐きだされる風に左右同時にぶおりと煽られ、先が濡れた

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掌編「畜生。月が綺麗だな!」

掌編「畜生。月が綺麗だな!」

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星語《ホシガタ》掌編集*1葉目

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”言の葉国《ことのようこく》”

南南西の方角の雲の中にある人口9人の小さな国。

——いかにも耳触りのいい国の名前に騙されてやってきた、俺は詩人。

藤月《ふじつき》程前からこの"国家"に配属された、職業詩人だ。

俺は”募集”を見つけた時、てっきり笛を吹いて大地とともにゆうらりと暮らせるものだと思って志願した。詩人たるもの働いたら負け

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