見出し画像

童話ーひととひとー


この世界には私ともう一人の私がいました。
皆それぞれ同じでした。
見た目の全てが同じでした。
違うことといえば、片方はもう片方から作られたもので、元の人間から「良いところ」だけを「食べた」優秀な人間だということでした。

人が考える「余計なもの」を除いた素晴らしい人間でした。

始めは仲が良かったものの、優秀な人間はそのうち元の人間から離れていきました。
いつからか争いも起きました。
たった一つの命を落とした人間もいたことでしょう。

元の人間が考える「余計なもの」が、優秀な人間には邪魔でしかありません。
それさえ無ければ、全てが上手くいくと考えていたからです。

ある時、元の人間が吐き出した言葉の「余計なもの」を、優秀な人間が「食べました」。

なんとも言えない表情で、必要ないけれど大切なものだと、小さな声で言いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?