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一過性甲状腺中毒症になった#001

一過性甲状腺中毒症とは?


病院で渡された説明。治療法はない。

甲状腺はのどぼとけの下にある蝶(チョウ)が羽を広げた形をした臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。このホルモンは、血液の流れに乗って全身の臓器に運ばれて、代謝を活発化したり、成長を促進したり大切な働きをしています。(中略)「甲状腺中毒症」とは血中の甲状腺ホルモンの働きが過剰になる状態を言います。

一般社団法人日本内分泌科学会

起きられないのはだらしないから……?

 最初の兆候は、起きられないことだった。 

 目は覚めているのに、文字通り身体が動かない。例えるなら、ディズニーランドで一日中遊んだ疲労感、夏フェスで歩き回って身体が鉛のように重い朝。満身創痕な身体で起き上がろうとすると、今度は目の前の景色が縦に揺れる。めまいだ。

 ただの疲れだと思い、やり過ごしていると、どんどん起きられなくなる。部分麻酔で手術をした時のように、妙に意識は覚醒しているのに、脳からの指令を無視して身体は動かない。力を振り絞って起き上がろうとすると、ぐるぐるバットのように頭がふらつく。そんな私の姿を見て夫はこういう。

「だらしないだけ」

 傷口がある訳ではない不調は、周りに理解を得られにくい。朝に起きられないのは、だらしがないという烙印を押されても仕方がない。

 最初の異変はiPhoneのヘルスケアだった。心肺機能が平均以下に低下していた。

最大酸素摂取量が38.8から24.6に

2020年6月は「38.3」


2023年3月は「24.6」まで低下。ついに「平均より下」に。


2022年10月からの推移。緩やかに低下している。


 たまたまかと思ったら、数値はどんどん低下する一方。同時に、駅まで10分の道のりすら歩くだけでとてつもない疲労感が襲う。百メートルを疾走した後のように、息が上がるのだ。

娘が描いてくれた絵。階段の登り降りも一苦労。


 友人が出演しているライブを観るために、ライブハウスに行った。病気という自覚がなかったので、なぜ自分の身体が重りを引きずっているかのように動かないのかわからなかった。駅からほんの数分の距離にあるライブハウスに行くだけで、すぐにゼエゼエしてしまう。

体感30分、実際には10分ほど掛かっていたのではないだろうか。忘れもしない。駅前の喫煙所の横を歩いているときに、すれ違う人がスローモーションに見えた。それほどまでに、足取りは重い。

 肝心のライブも、怠くて立っているのがつらい。テーブルにずっと半身の重心を預けてステージを観ていた。日頃の累積疲労だと思っていたため、なんとか3時間立ち続けたが。肝心のトリが出演する時には、私がかつて急性腸炎や大腸ポリープで入院したときのように、「本人の気力は元気だが、身体は倒れそう」な状態に近づいていた。

泣く泣くライブの終盤で退出し、帰宅した。駅まで歩くのがつらくて、タクシーで帰ろうかと頭によぎった。でも、「なぜ体調不良なのか」が不明のためただの疲れだと考えていた。

 そんな折、橋本病の定期検診で異常が見つかった。私の症状は、一過性甲状腺中毒症だった。

ありがとうございます。著書を出版できるよう、資料購入などに使わせて頂きます。