Ruby on Railsコミッター松田明氏×RIZAPテクノロジーズ社長対談〈2/3〉
Ruby on Railsは
スモールスタートアップに特化している
――続いて、Ruby on Rails(※オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク。Rubyを使う。以下、Rails)の魅力であったり、今Rubyエンジニアになるとどんなメリットがあるのかについて、松田さんからお話しいただけますでしょうか。
松田:難しいなあ。でもいちプログラマーとして言うと、一番楽しい言語だし使っていて気持ちいいんで。あと流行しているから、みんなやっていけばいいんじゃないのって思うんですけど(笑)。
でも「なんで流行しているの?」というところを聞かれているのですよね。
自分なりに考えていることを話しますと、Railsは20年ほど前にアメリカで登場して、37signalsという企業がBasecampという商用アプリケーションを開発したときに使われたプロダクトなんですけど、数人で事業を始め、一瞬でモノを作る「スモールスタートアップ」に特化した仕組みなんですよね。
このBasecampが火付け役になって、シリコンバレーとかサンフランシスコあたりのスタートアップ企業もみんなRailsを使う時代になりました。
これはなんでかというと、とにかく素早くモノが作れるから。
スタートアップ事業は、最初から作るものが決まっていないじゃないですか。
マーケットの本当のニーズがどこにあるかも分からないし、自分たちが何を作りたいかもぼんやりしている。だけどとりあえずプロダクトを作って世に出して、お客さんのフィードバックを受けながら、また変えていく。
システムを作って終わりではなくて、むしろ素早く作ってどんどん変化させていく。速さと柔軟性がどちらも必要で、それを兼ね備えているのがRailsの強さかなと思います。
従来通りの、何百人がかりで作って、納品したらおしまい、みたいな巨大システムとは作り方も考え方も違っていて、ムービングターゲットみたいなところに合わせていきながら変化していけるんです。
構想からわずか数カ月で出店!
chocoZAPは異例の速さで動いている
鈴木:でもそれめちゃくちゃ大事ですよね。
chocoZAPも本当にスタートアップそのもので、そもそも店舗を出すときも、chocoZAPの構想が立ち上がってから2〜3カ月後に出店しているんですよね。
そこから1年ちょっとで300店ぐらい出して……という。デジタルではないけれど、やっている動きはスタートアップそのもので、そこにアプリやシステムが追随しています。
普通はデジタルのほうが速くやれそうなものですが、店舗の動きやマーケティングも含めて事業全体が異常なスピードで動いています。
それについていかなくては、となると、アプリのフロントのUIや、裏側の仕組みも随時作り変える必要が出てくるんですよね。
ちょうど昨年の10月ぐらいにアプリを出したのですが、実際に、当時と今ではトップも丸ごと違います。それぐらいのスピード感で変えていかないと、この事業成長のスピードや、お客さまの期待に応えきれない状態なので、やっていることはスタートアップそのものなんです。
そういう意味では、Railsは非常にマッチしていると思いました。
松田:本当ですね。
コミュニティの層の厚さが
Ruby言語の魅力でもある
鈴木:あとはやっぱり、こういうスピードで動いていく上で、やっぱり仲間が多いほうがいいという観点でも、Rubyは使っている人がそもそも多いということも大きいです。
さらに今回、松田さんに入っていただけたこと、さらに日本語でコミュニケーションができて、サポートをいただけるというのも非常にありがたいです。
RubyKaigi(※)のようなコミュニティ的な取り組みがあることもすごくいいな、と。
われわれ自身も開発のレベルを上げていくフェーズですので、社内の人材やノウハウだけでできることは限られています。Rubyには、そこを補完、あるいは拡張するコミュニティがあることは非常にいいなと思っています。
私自身はエンジニアやプログラマーではないのであまり詳細を分かっているわけではありませんが、事業視点や経営的な視点で見ても、弊社には合っているのかなと思った次第です。
松田:Rubyという言語が日本で作られたものということもあって、日本のRubyコミュニティは層が厚いですね。
僕自身、趣味というか、ライフワークとしてこのコミュニティを支える活動は続けたいと思っています。
その一環として、東京でAsakusa.rbというローカルユーザーグループを毎週やっていたり、毎年日本のどこかで、RubyKaigiというイベントを開催したりしています。
そこでRubyが好きな人同士がつながって大きなコミュニティができ、それがリアルなものづくりに生きていくという良いサイクルできていると感じていて、 これはほかの言語コミュニティとかには、なかなかないものかもしれない。
鈴木:われわれも社内外でさまざまなベストプラクティスを吸収していったり、詳しい方に実際に話を聞いたりサポートをいただいて、いろいろな領域を急速に立ち上げるということをやっています。だからこそ、そういうことができるかどうかはかなり大事だと思っています。
今の世の中において、社内で閉じていても、できることはかなり限定的なので、コミュニティがあることは非常に重要だと思います。
松田:Rubyコミュニティはオープンソース技術ベースのコミュニティなので、もう全員が開けっ広げなんですよ。
もちろん、chocoZAPのビジネスモデルは共有できないんですけれど、そうしたビジネスのコア以外のものはどんどんさらけ出して、お互いにノウハウやテクノロジーを融通しあって、みんなで世の中を良くしていこうという雰囲気が醸成されています。
RIZAPさんもこれからぜひコミュニティに加わっていただいて、世の中を一緒に盛り上げてくれたらなあと思っています。
――若手のプログラマーにとって、Rubyは比較的習得しやすい言語ということですが、これはいかがでしょうか。
松田:今お話ししたあたりのことなんですけど、お互いに交流して知見を交換して、お互いに……成長とか勉強とかってあんまり言いたくないんですけど(笑)、高めあっていこうという意識がRubyist全体にあると思うので。
今の時代、プログラミングって全然孤独じゃないんですよね。
パソコンに向かってただキーボードをたたいているだけだと思われがちなのですが、実はその奥に、コミュニティと人のつながりっていうのが存在していて、以前よりそれが濃くなっている。そこが、今、プログラミングの1番の面白さかもしれません。
なので、むしろビギナーやジュニアの方こそ1人で問題に立ち向かうのではなくて、最初からコミュニティに入って、みんなで助け合いながら問題を解決していくやり方でいったほうが、楽しく続くんじゃないかなと思います。
Rubyコミュニティはもちろん初心者を大歓迎していますし、実際に若い方もどんどん流入していますので、そういう意味でもおすすめしたいと思います。
鈴木:そうですね。うちは中途だけではなく新卒の採用もしているので、人材育成をどうしていくかも、非常に重要なテーマになっています。
「書いていて楽しい」
Rubyの不思議な魔力とは
松田:うんうん。あとはもうちょっと技術的な側面でRubyについてお話しすると、日本人が作ったプログラミング言語なんですね。
かつ、僕は、人が話している自然言語に一番近いプログラミング言語だと思っています。
なんかちょっとマニアックな話をすると、プログラミング言語というのは、そもそも人間とコンピューターがお話しするための言葉なんですよね。
言葉というのは文法があって語彙(ごい)があって、その組み合わせで何かしらのコミュニケーションをする道具なんです。
従来のプログラミング言語は、機械が最適に効率よく動けるように、人間が機械の気持ちにすごく寄せて、機械みたいに考えて、機械の言葉を習得して頑張って喋(しゃべ)るというものだったんです。
いっぽうRubyを作ったまつもとさん(※Rubyの開発者・まつもとひろゆき氏。通称Matz)という人は、開発者が自然に喋(しゃべ)ればコンピューターが空気を読んで勝手に動くというような言語を作れば、プログラマーがもっと楽しくなるんじゃないかと考えたのです。
こうしたことにフォーカスしたプログラミング言語として、Rubyは世界初だったんです。
それで「Rubyだったら楽しくていくらでも書ける」という不思議な魔力みたいなものが生まれて、そこが評価されて人気につながっているのかなと思います。
なので、初心者の方にとってはやっぱり敷居が低いです。難しいことは分からないけれど、なんか気軽に話しかけたらいい感じで動いている、という言語になっています。
鈴木:われわれのメンバーにも、もともとエンジニアではなくて、働き始めてからキャリアを形成していくメンバーもたくさんいますので、敷居が高く感じたり、面白さを感じられなかったりすると結構孤独な作業になってしまうかもしれませんね。
今まさに松田さんがおっしゃってくださったような「面白さ」がインプットできるとすごくいいなと思います。
これからはぜひ、若手メンバーの育成をサポートいただけるとありがたいです。
松田:お任せください(笑)。
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PART3では、これからますます成長していくchocoZAP事業に携わることのメリットについて、鈴木社長と松田さん、それぞれの立場からコメントをいただきました。
>>>PART3はこちら
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