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恋詩

 深い海のような想いは、僕を壊していく。汚れたその感情は、誰よりも僕を人間臭くした。人を裏切るとか愛するとか、そんなものを飛び越して、僕は僕であることに必死だった。
 どこか寂しげで、不満気な君を見た時、どこか嫌悪に似た感情を抱いた。まるで僕のようだと、思ったその時には、もう、僕は君に恋をしていたのだろう。
 好きな曲も好きな料理も、僕は君と同じになりたくて、君を愛するように夢中になった。掴めそうで掴めない。たまに優しく微笑む顔を見るたび、僕の気持ちは君に少しも届いていないのだと思い知らされた。出会わなければよかったと、そんな恋をするなんて思いもしなかった。恋をしたことで、僕はどんどん醜く愚かになった。君を独り占めにしたい感情が、僕を支配する。溺れる感情の吐け口は、SNSなんかじゃ埋まらない。
 僕に似ているようで似ていない。そんな君を見ていると、もう一人の自分のようで、それでも違う他人のようで、そんな不思議な感覚になった。もし僕だったら、僕を愛するだろうか。そう思えば想うほど、自分をコントロール出来なくなった。
 君と僕が同じ気持ちならばと、願わない日はない。でも、それはきっと叶わない願いだ。僕は、この結末を知っている。そして、それはまた、僕を臆病にした。いつまでもバランスの取れない二人の関係は、また、僕一人を孤独にする。



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